- TMG_duke_h
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「そう…残念だね…。さて今日の予定はどうなっているんだい?私は何時に行けばよいのかな」鈴木様の訃報を、大変に残念そうなご様子で聞き入ってらっしゃった旦那様が、すくっ、と椅子から立ち上がられて本日のご予定の確認をなさいます。御通夜の時間を申し上げましたらば小さく溜息を吐かれました。
2010-07-05 04:36:25「…鈴木…。うん。ああ、少し早めに車を用意しておいてくれないか?よりたい処があるんだ」「かしこまりました」返事をして頭を一度下げ、私はそのまま書斎を後に致しました。旦那様が窓の外を眺めてらっしゃったのは、中庭の風景を楽しんでらっしゃる訳では無いことは、頭の悪い私でも分かりました。
2010-07-05 04:41:41運転手に早めの仕度をお願いすると、私は喪服とお悔やみの用意を致しました。他でもない鈴木様がお亡くなりになられたことに、どれ程旦那様が心を痛めていらっしゃるのかと思うと、私も自然と目頭が熱くなりポケットから真新しいハンケチを取り出し涙を拭き、お陰で喪服に涙を落とさずにすみました。
2010-07-05 04:47:44旦那様が鈴木様を愛してらっしゃったのは周知の事実で御座いました。昨今、殿方同士の恋沙汰など何も珍しい事では御座いません。かく言う私も旦那様をお慕い申し上げておりますし、旦那様の小姓としてこのお屋敷に住まわせて頂いております次第で御座います。鈴木様は、本当に残念で御座いました。
2010-07-05 04:54:08旦那様が悲しむご様子は見ている私も辛くて辛くて仕方が御座いません。昨日までお元気でらしたのに、この様に人があっさり死してしまうとは思ってもおりませんでした。私はハンケチをポッケに仕舞うと、この衣装室に置いてある大きな鏡の前に立ちました。そこには爽やかに微笑んだ私が映っています。
2010-07-05 05:01:34鈴木様の首を締め上げる時の両手の感触や、まさか!と叫びながら真っ赤になりゆく顔、私を抱く為に用意してくださった部屋の乾燥した空気や、流れていたラジオの音など鮮明に思い出されて、声に出して笑ってしまいそうになります。私は旦那様だけをお慕い申し上げているのです。あのお方は邪魔でした。
2010-07-05 05:05:26