…彼はもしかして、『火』で何かを作っていたのだろうか。花壇は綺麗に『花壇だけが焼けていた』らしいから。誰だっけ、なんの補助も使わず、自分の感覚のみで真円を描けたという画家は。それに似ている気がした。 #空想の街 #似顔絵描き
2012-07-15 02:02:58モノを創る連中には、変人が多い。自分だけの価値観や、ルール、世界観を持っているやつらばかりだ。…個人差はあれども。 #空想の街 #似顔絵描き
2012-07-15 02:05:14犯人サイド7
女と別れて地下の酒場に向かふ途中、胸元の通信機が震へて着信を告げる。俺はイヤホンとマイクを繋いだ。イヤホンからノイズだらけのナダの声が聞こえる。「依頼だ」少し気になるタイミングだ。囮かもしれない。 #空想の街 #狂火
2012-07-15 00:11:49「ダミーと例の酒場で、俺は近くから確認する」「了解」俺はイヤホンとマイクをポケットをつけたまま、脇道の階段から地下街へ降りる。ジャンク屋の前を通り、左へ曲がる。もし捜査員の囮なら、どんな花火にしてやろうか。 #空想の街 #狂火
2012-07-15 00:12:04「もう着いた」イヤホンからナダの声が聞こえる。「わかつた。俺も着く」右に曲がり、カビ臭い酒場に入る。俺の顔を知つてると思はれる視線が6つ、間違ひないな。俺はマイクを手の平に隠して囁く。「例の場所から落とせ」 #空想の街 #狂火
2012-07-15 00:17:02俺は無関係なフリでカウンター席に座る。背中を睨まれてゐるのがわかる。イヤホンからナダの声が届く。「いま囮を連れ出した。こつちに来た捜査員は2名」「囮を落としたら撒け。俺は後から行く」俺はナイン・ピックを頼んだ。 #空想の街 #狂火
2012-07-15 00:17:15グラスを2杯空け、客を探してる女の腰を抱く。「あら、お兄さん。買つてくれるの?」「ああ、礼は弾む」「さう? なら張り切つてサービスするから」俺は女と口付け交わして立ち上がる。捜査員を撒く必要はない。どうせ部屋から出ないんだ。 #空想の街 #狂火
2012-07-15 00:20:23カーテンの隙間から外を覗く。捜査員が二人、シッカリと俺の部屋を監視してゐる。良いぞ、そのまま見張つてろ。俺はベッドの方を振り向く。女が枕を抱くやうに眠つてゐる。俺は本棚を横に押して隠し通路の扉を開ける。 #空想の街 #狂火
2012-07-15 08:03:27階段を降りて、実験室に入つた。実験台の上には、囮役の捜査員が麻酔で眠つてゐる。ナダが準備してゐる横で、俺はガラス棚を見つめる。いかに美しく、いかにドラマチックに演出するか。この捜査員を最高の作品に仕上げなくてはならない。 #空想の街 #狂火
2012-07-15 08:05:13捜査サイド7
病院にひとりの捜査員が運び込まれた。囮役として“狂火のゼイ”と接触を図り、行方不明になつてゐた男だ。「おい! 大丈夫か! 意識はあるか!」他の捜査員の声の中、手術室へ向かふ。担架が病院の廊下の角を曲がる。 #空想の街 #狂火
2012-07-15 10:00:44犯人サイド8
「ヤメテッ! イイ、アッ、ダメッ! イイッ!」俺が背面座位で貫いてゐる女をナダが嘗め回す。俺はその女を支へながら、手で指で舌で愛撫し、小刻みに腰を揺すつて突き上げる。「アッダメッアアッアッアンッイヤッイイッ!」 #空想の街 #狂火
2012-07-15 10:20:01「ンンウゥッ!」痙攣にして収縮する女の中に、俺はグイグイと押し付けて注ぎ込む。その間にも、女の身体は脈打つやうに痙攣して締め付けてくる。「ンンッンッンンッ」と震へる女を押さへ込むやうに抱きしめる。ああ、気分が良い。 #空想の街 #狂火
2012-07-15 10:21:00息絶え絶えになつた女を横にどかしながら、ゆつくりと引き抜く。するとすぐにナダが俺にキスをしてくる。そして舌を絡ませたまま俺の上に跨り、腰を降ろしてきた。 #空想の街 #狂火
2012-07-15 10:21:27捜査サイド8
ひつそりとした捜査会議室に若い捜査員が入つてくる。そして、噛み締めるやうに声を絞り出す。「“狂火のゼイ”に依頼したグループを全員確保しました。今、動機を尋問してゐます」初老の捜査本部長がその捜査員に視線を向ける。 #空想の街 #狂火
2012-07-15 15:15:50「少年グループの共通点はわかつてゐるのかね?」「はい、全員、死刑になつたり射殺されたりして死んだ犯罪者を親に持つてゐます。恐らく、その辺りが犯行動機かと」「社会への逆恨み、か。そんなことで……」 #空想の街 #狂火
2012-07-15 15:17:50「社会への恨みだけではなく、その死んだ犯罪者の親への恨みもあつて、この時期を選んだのでせう。どちらにせよ、実にバカバカしいですね」それから、額の広いデップリした中年は、大きくゆつくりと首を振つた。「残る問題は“狂火のゼイ”ですか」 #空想の街 #狂火
2012-07-15 15:20:15「さうだな。誰か、例の男の監視を解くやうに連絡してくれ。犯行時刻には監視下にあつたんだ」捜査本部長の指示に、中年太りの男が立ち上がつた。「私の提案の空振りですから、私が呼んできますよ」そのまま中年は捜査会議室を出た。 #空想の街 #狂火
2012-07-15 15:22:33禿げかかつた中年太りの男は、石造りの小さな部屋を監視してゐる二人の捜査員の肩を叩いた。「どうやら私の思ひすごしだつたやうです。これで、ここの監視は終はりです」「さうですか、わかりました。ゴダさんはどうします?」 #空想の街 #狂火
2012-07-15 18:41:27