- planettwin
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「いや検査に入られる前に開けてもらえてほんと助かったよ」と『ちり02』がカラカラと笑うと、『ちり12』は深い溜息を漏らして「これだから変異組は」とぼやいた。
「研究所が近くだったからよかったものの、燃料補給してもっと遠いところに運ばれてたら間に合わなかったぞ」
「『知ってる』だろ。ちゃんとヘリポートの近くで観察して当たりをつけてたって」
「言っておくけど無理矢理だからな。並列化。」
「いいなあ、私たちは外の事まだ何も知らないからその記憶並列化してもらいたい。」
「やめときなよ17番、ただでさえ私たちは死にやすく出来てるんだから。自殺するよ」
「どんなにしても死なないのなんて『オリジナル』くらいでしょ」
「私はその実感ないんだけど…全然。」
あああ、と地の底を這うようなうめき声を垂れ流しながら、『ちり』は先ほどからずっと頭を抱えていた。
「目を覚ましたら自分のクローンが7人いるなんて頭おかしくなりそうよ…」
医者から余命を宣告され、契約書を書かされた後の記憶が無いオリジナルには、今日の朝はまさに衝撃の目覚めだった。
いきなりの衝撃に叩き起こされ何かの液体と共に排出されタ後、床に転がりながら肺まで入ったその液体に死ぬ程咳き込んだ。
そして顔を上げて眼に入ったのが自分と同じ顔7つである。
「いやマジでショック死するかと思った…」
「多分実験中にオリジナルがされてた事見たら、さすがのオリジナルもショック死するかもね」
「しないだろ」
「だから私は何されてたの!?」
「いやまあ…」
「まあそれは…」
さっと気まずげに顔をそらす02番と12番を見ながらオリジナルは肩を落とし、それから諦めたように顔を上げた。
「で、結局これからどうするの?」
その言葉に7人はぴたりと足を止める。
ちり02番、12番、14番、15番、17番、18番、20番そしてオリジナル。
彼女達が助けられた『自分』たちは8人だけ、あとは死亡していた。
機能を一時的に止められた研究所を破壊し、今は自由と言っていいだろう身だ。だが、どこから追っ手がかかるかわからない。破壊した研究所も社の一部に過ぎないだろう。
だが、
「当然、帰るでしょ、あの街に」
02番がこともなげに答える。12番はそれに同意を示して頷いた。
「結局、あそこが一番安全といえば安全なんだよな」
15番は憂いを帯びた様子で「ゾンビがいっぱいいるけどね…」と呟くが、ぽかりと18番に拳骨をくらい嗜められる。「弱気だと死ぬよ?」
20番は「それに新薬だけはたんまり持ってきたしね」とにやにや錠剤を眺め、17番は「それやなんだけど…」と口を尖らせた。
「それに私たちにとっても、友達がいっぱいいるあの街が『帰る場所』だよ」最後に14番が引継げば、オリジナルは確かに、と苦笑した。
「他に帰る所も無いしね」
「館にもしかしたら残ってる『私たち』もいるかも」
「あーあの女研究者に借り返さないと!爆薬まで借りてきちゃったんだよ!」
明るい笑い声が無人の町中に響く。遠くには、既にあの街のシルエットが見えてきていた。
02番は懐かしいような気持ちでそれを見上げてから、『自分たち』を振り返った。
「ねえ、とりあえず街についたらさあ、皆で新しい名前つけない?」
クローン個体は死に至りやすい、らしい。
だが明日への希望があれば、きっとその限りではない。
きっとそれが自分自身の生きる理由となれるから。
「行こうか、みんな」
Zombie Survival.48日目のちり2体目→TRUE END!!