真珠

記念日の前の二人
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@hh_Hero390

「先輩、怒ってるんですか?」「べーつーにー」さっきから真弘先輩は拗ねてしまって話を聞いてくれない。今回ばかりは全面的に私が悪いから、仕方ないとは思うんだけど、口すら利いてくれないとなるとどうしようもない。いい訳をするつもりもないけど話を聞いてくれないとなると謝ることすら出来ない。

2012-07-27 23:24:40
@hh_Hero390

付き合って丁度2年の記念日に、真弘先輩へプレゼントを渡したくて始めたバイトだったのに、店長の頼みを断れきれなくてあろう事か記念日当日にバイトのシフトに入ってしまったのだ。全くなんて本末転倒なんだろう。「ごめんなさい、真弘先輩」それでも反応を示してくれない真弘先輩に段々悲しくなる。

2012-07-27 23:24:49
@hh_Hero390

今日は大学もバイトも休みで久々に二人でゆっくり出来る休日のはずだったのに。「真弘先輩…あの、」「だから別に怒ってねーって言ってんだろ!」私の声を遮って真弘先輩が声を荒げる。最初から私がバイトをする事に真弘先輩は否定的だったけど、理由はきっとこうなるのが分かってたからかもしれない。

2012-07-27 23:24:58
@hh_Hero390

「…分かりました、今からでも断ってきます」このままじゃ先輩と話しすら出来ない。だったらバイトなんて辞めてしまっても構わないと、私は携帯を取り出した。すると、先輩は驚いたように目を見開いて、次の瞬間携帯のアドレス帳からバイト先を選択しようとしていた私の手を掴んで、やめろ、と制した。

2012-07-27 23:25:05
@hh_Hero390

「なんで止めるんですか」「だから!別に怒ってねぇんだって」しばらく無言のまま視線で訴えてみると、ややあって観念したように先輩が深いため息をついた。「本当に怒ってたわけじゃねーんだよ。ちょっと自分が情けなく思っただけで」「…どういう事、ですか?」真弘先輩が情けない事なんてないのに。

2012-07-27 23:25:19
@hh_Hero390

よく分からなくて聞き返してみると真弘先輩はバツが悪そうな顔をしながら答えてくれた。「お前は優しいから、断りきれなかったことくらい分かるんだよ。それにお前だってあんだけ楽しみにしてたんだから、残念がってるのも分かる。そんなお前に頑張って来いよって言えない自分が情けなかっただけで…」

2012-07-27 23:25:29
@hh_Hero390

あー、とかうー、とかうなりながらガシガシと頭を掻く先輩。自分を器が小さいだなんて言うけどそんな事全くない。これだけ私を思ってくれてるのに。「…やっぱり私、断りますね」「はぁ?お前…」「先輩に言われたからじゃないです。だって私が真弘先輩と一緒にいたいから…私の我が侭です」「珠紀…」

2012-07-27 23:25:38
@hh_Hero390

困惑した様子の真弘先輩だけど、もう止めはしなかった。きっと私が何を言われても聞かないと思ったんだと思う。それに困った顔なのにどこか嬉しそうに見えてしまう真弘先輩。やっぱり真弘先輩が嬉しいと私も嬉しいから。そんな真弘先輩の表情に背中を押されて、私はバイト先へと電話をかける事にした。

2012-07-27 23:25:48