BSE201209

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Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)実際、マスコミ報道や消費者世論としても「米国産にも全頭検査を!」と求める声は非常に強かった(そりゃそうだよね)。日本政府としてもこの国内世論を無視できない。しかし米国としてはそんなことは認められない。 米国にとっては全頭検査こそ「過剰な輸入規制」の象徴となった。

2012-09-06 10:53:49
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)ただしここでまた留意すべきは、米国から見て「過剰な輸入規制(不当な非関税障壁)」となったのはあくまで「米国産牛肉の全頭検査」であって、日本国内の牛肉に対する全頭検査は別の話だということ。論理的には国内基準は緩和しつつ輸入基準は全頭検査を要求することもありえた。

2012-09-06 10:59:53
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)けれども国内では国内基準緩和は輸入基準緩和の準備のように見えてしまい、米国牛輸入再開阻止のために国内全頭検査を断固死守すべしなった。政府的には、国内と輸入で検査基準が違うと流通・消費上の混乱もあるとか考えて「輸入のための国内基準変更」という意思が働いた可能性もある。

2012-09-06 11:07:05
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)まぁ、実際、政府がどういう方向で考えていたか(基本的には複数あっただろうし)は分らんが、自分的には、当時の小泉政権は米国相手にけっこう筋を通したんではないかと、割とプラスに評価している。「さっさと再開せい」という米国に「科学的にリスク評価することが大事ですから」といなしたり。

2012-09-06 11:09:36
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)それは置いておくとして、とにかく全頭検査問題は米国産牛肉問題をめぐって国内と輸入措置の話が政治的に渾然一体にリンクし、焦点化してしまった。そして、この抜き差しならない状況をある意味打開したのが2004年10月の第4回BSEに関する日米局長級協議での「合意」。

2012-09-06 11:13:48
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)「合意」とは特定危険部位(SRM)は全月齢の牛から除去しつつも、20か月齢以下と証明される牛由来の牛肉に限って検査なしで輸入するという牛肉輸出証明(BEV)プログラムのこと。http://t.co/OCosSHsu

2012-09-06 11:19:24
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)ちなみにさっき書き忘れたけど、国内措置で検査基準引き上げるのは、若い牛ではBSEの原因となる異常プリオン蛋白質が少なすぎて、検査の検出限界以下(ND)となってしまい、検査する意味がないから。(代わりにSRM除去と飼料規制でリスク低減する。)BEVの「20か月」も同じ理屈。

2012-09-06 11:22:01
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)で、このBEVプログラムが出てきたことで、検査問題は日米政府間では焦点から外れることとなった(代わりに「月齢確認をどうやるか、その信頼性は?」が問題となったのだが)。しかし国内世論的にはそうではなかった。

2012-09-06 11:25:54
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)つまり国内の消費者世論的には、全頭検査は安全の要であり、それは国内は勿論米国産牛肉にも適用すべしが主流。「若い牛は検査してもNDになるだけ」という理屈は通じないほど、状況は政治的にヒートアップしていたし、全頭検査は政治的アイコンとなっていた。

2012-09-06 11:28:22
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)全頭検査死守の背景にはいろんな要素があると思われる。一つは「若い牛はND」という事実・理屈を知らなかった・理解してなかったという人々の存在。二つめは、「若い牛はND」といいつつも国内では21か月と23か月の若齢感染牛の例があり、「もっと若くても見つかるかも」と思わせたこと。

2012-09-06 11:32:14
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)実際英国では20ヶ月齢で「発症」した例もあり、もし検査してれば16か月とか18か月で見つかってただろうといわれてる。ただし、それは全部で百万頭が感染したと推測される英国で最もBSEが見つかっていたころに1件(感染確認された牛は18万頭だったかな?)という低確率のこと。

2012-09-06 11:34:21
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)従って、BSE問題揉めた当時でも三~四百万頭中で20~30頭しか感染牛が見つかっていなかった日本では、20ヶ月齢よりずっと若い牛で見つかる可能性は無視して差し支えないレベルだった。ただ、まぁ、政治的にヒートアップしていた状況ではこういう話は共有され難い。

2012-09-06 11:37:20
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)また、検査それ自体の有効性を離れて全頭検査は、米国には事実上実施不可能な高いハードルとして、輸入再開をとにかく食い止めたいという意思を体現する政治的武器として動員されたという面もある。全体的にはこれが一番強い全頭検査維持の動機だったろう。

2012-09-06 11:42:01
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)実際、米国でBSEが見つかった直後からメディアでは、米国の安全管理体制のずさんさが(米国政府機関の報告書なんかも含めて)多数報道されていたから、消費者が、その辺の問題が全部クリアになるまで輸入再開は断固阻止、そのためにはどんなものでも使うという気になっても不思議じゃなかった。

2012-09-06 11:43:40
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)そもそも当時は米国はあのブッシュ政権だったし。

2012-09-06 11:43:56
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)それでとにかく全頭検査問題は日米合意後も国内的には焦点化したままとなり、2005年8月に検査基準が21ヶ月齢以上に変更となった際も、「混乱を避けるための経過措置」として、全頭検査を継続する自治体に対して3年間は国庫から全額補助することになった。

2012-09-06 11:47:06
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)そして、この経過措置が2008年7月末で終了した後も、全自治体が全頭検査を独自予算で継続している。本当はこれを止めて、20か月以下は検査しないようにしたいという自治体もあるのだが、それだと地元産の若い牛の肉だけ売れなくなる怖れがあるので、どこも横にらみのまま今に至っている。

2012-09-06 11:49:32
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)そして現在、冒頭で指摘した「2013年゛清浄国化」を前に行われたのが、今回の食品安全委員会のリスク評価http://t.co/34dLXyAb 。ただし当然ながら清浄国化の話はあくまで日本国内の措置の話であり、報道されている輸入牛肉の話とは安先生に関する論理としては全く別。

2012-09-06 11:52:29
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)実際、評価書のたたき台 (資料1http://t.co/34dLXyAb )見てもわかる通り、リスク評価は国内と海外別々に行われている。しかし、両者を一緒にわざわざ諮問した厚生労働省の判断はどうかと思う。これではまたまた「輸入のための国内措置緩和」という文脈で読まれかねない。

2012-09-06 11:55:13
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)そもそも輸入措置緩和の話は清浄国化とは全く関係なく、あくまでWTO-SPS協定上の話。米国等でもBSEはずっと発生してないから、「20か月以下の牛だけ輸入」「全月齢でSRM除去」は過剰規制ではないか、そうでないなら科学的に証明せよという、自由貿易上の要求によるもの。

2012-09-06 11:58:33
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)ちなみに米国とカナダのBSEステータスは2007年5月のOIE総会で「管理されたリスクの国」(無視できるリスクの国=清浄国の次のランク)と認められ、これに従って同年6月に利用国は相次いで日本に輸入条件見直し協議の要請をしており、これに日本は応えてリスク評価する必要があった。

2012-09-06 12:00:44
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)そういう意味で厚労省が国内措置と輸入措置を同時に諮問したのも仕方ないところはあるとはいえるんだけども、間が悪いと言えば超悪い。そもそも厚労省(あと農水省)は、2005年5月に米加国産牛のリスク評価で、あるトリッキーな諮問をやった「前科」もあるし。

2012-09-06 12:05:25
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)で、実際、農水省が実施した米国内での条件順守状況の調査は、輸入再開決定後に行われたり、国会提出(だったかな?)の資料が黒塗りだったりとかで、国民の不信感を招くツッコミどころ満載のものだったりした。また米国からも条件違反のものが輸入されてきたりする。

2012-09-06 12:09:55
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)それはなにかというと、諮問する際に、「前出の輸入再開条件(牛肉輸出証明(BEV)プログラム)が十分に米国内で守られていることを前提にリスク評価してください」としたこと。当然、条件が満たされてなければリスク評価の結果は変わる。条件が満たされてるかの検証の有効性も要注意となる。

2012-09-06 12:11:12
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)そうした米国やカナダでのリスク管理体制の実態はいまどうなっているのか、それをどうやって検証しているのか、検証法の有効性・信頼性はどうか。そして今回のリスク評価で米国・カナダ産牛はどのような前提や方法で評価されているのか。そのあたり要注意で評価書や関連資料を読まねばならない。

2012-09-06 12:13:12