茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第７１６回「東京文化会館の、パルジファルに行こう」

茂木健一郎 @kenichiromogi

しゅりんくっ！　ぷれいりーどっぐくん、おはよう！

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連続ツイート第７１６回をお送りします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、今週末、おすすめのあるものについて！

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とぱ（１）芸術の秋。この土日、そして祝日と続く連休に、ぜひおすすめしたいものがある。東京文化会館で上演される、二期会のオペラ『パルジファル』。ワグナー最後のこの作品は、私たちが今見るにふさわしいものだと思う。二期会の今回の上演は、現時点で望みうる、最高のものになっているのだ。

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とぱ（２）今日から三日間、東京文化会館で上演される二期会のパルジファル。http://t.co/kR2rmjVc　私は、パンフレットに解説文を書いたご縁もあって、先日の初日（１３日）の公演にお招きいただいた。皇太子さまがいらしていて、最後までごらんになっていた。

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とぱ（３）パルジファルは、心的外傷を受け、苦しむ人たちの物語である。傷を癒やすためには、自分を傷つけたその原因に立ち返るしかない。癒やしをもたらすのは、既成の組織や概念にとらわれない、愚かな若者。キリスト教の「聖杯」信仰をベースにしつつ、現代に通じるテーマを描く。

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とぱ（４）最近のオペラの上演は、進化している。今回の二期会「パルジファル」の演出は、ヨーロッパで上演されたものに基づいており、二階建ての建物の回転をうまく活かして、まるで映画を見ているかのような強烈な印象。また、プロジェクタを用いた映像表現が、効果的である。

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とぱ（５）パルジファルは癒やしをテーマにしたオペラだが、見ている者も、また癒やされる。２００９年にバイロイトでパルジファルを観た時には、ドイツの国家としてのトラウマがテーマになっていた。ゲーテやシラーを生み出した文化の国が、ナチスを生み出した悪夢。正面から向き合い、昇華していた。

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とぱ（６）二期会のパルジファルの上演を観ながら、私は、私たちが経験した心的外傷のことを思い出していた。失われた二十年。地震が起こり、津波が押し寄せ、原発事故が起こった。広大な土地に、人が入ることができない。故郷を失った人たちがいる。そんな時代に、私たちは生きている。

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とぱ（７）なぜ、芸術は人の心を癒やすことができるのか。それは、傷から目をそらすのではなく、むしろ傷そのものに向き合うことを促すから。それが難しいのに、芸術のかたちをとると、なぜか可能になる。日常から離れ、舞台に接して、カタルシスを感じる。評論や批判をいくら重ねても達せない場所。

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とぱ（８）二期会によるパルジファル上演の元になっているバルセロナ公演の一場面 http://t.co/MrzeSmCj。アムフォルタスが、自分の受けた傷の苦しさを訴えているが、周囲の人は理解を示さない。そして、バイロイトのパルジファル。http://t.co/ypTf7HLU

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とぱ（９）今の日本に必要なものは文化であり、芸術のカタルシスを通した「癒やし」。それは、注意深く向き合わないと気づかない間接的なかたちでやってくる。村上春樹さんの『ねじまき鳥クロニクル』は、日本の近代史における体験に対する、一つのいやし。ぜひ、東京文化会館に出かけて欲しい。

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以上、連続ツイート第７１６回「東京文化会館の、パルジファルに行こう」でした。

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涙が句読点になるならば（二期会『パルジファル』の公演パンフレトに寄せた解説文）　茂木健一郎　http://t.co/bEpR2PbR