橋本健二『「格差」の戦後史』まとめ

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H.Takano @midwhite

農地改革は第一に「半封建的」とも呼ばれる前近代的な支配関係にあった小作農という下層階級を、ほぼ根こそぎ独立した農民層へと移動させた。第二に農家世帯の生活水準を向上させ、耐久消費財の普及やマスメディアの浸透、学校教育の普及などの変化へ対応を可能にした。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-04 14:02:38
H.Takano @midwhite

国民生活に関する世論調査の階層帰属意識に関する設問について、一般に上、中の上、中の中、中の下、下のうち中に属する選択肢を選んだ人々の比率は、73年には90.2%に達したが、同時期の諸外国での調査においても軒並み90%前後が記録されている。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 14:16:26
H.Takano @midwhite

「中流意識」と呼ばれる回答者の比率は米国93.8%、韓国89.4%、94.3%、フィリピン92.6%、イタリア86.1%、インド91.2%。よってこの数字は日本社会の特定の状態を示すとは言えないが、当時は殆どの人が「一億総中流」を真に受けた。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 14:22:26
H.Takano @midwhite

富永健一によれば、大部分の人々が中間階層になったように見えるのは、所得は高いが威信の低い人、学歴は高いが所得の低い人など、地位尺度の各面で高低に差のある人々が増えたこと、つまり「地位の非一貫性」が増大し、「多様な中間」が生まれたためである。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 15:05:43
H.Takano @midwhite

70年代の日本では、マルクス主義者から保守主義者までが「一億総中流」論に染め上げられていた。そのため、当時の政治学は「格差、不平等、貧困という問題に十分取り組んでこなかった」と指摘され、その傾向は80年代以降も続いて人々を格差に対して鈍感にした。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 16:06:22
H.Takano @midwhite

80年代の終わり頃、企業が社会において余りに大きな位置を占め、個人や家庭、地域社会を従属的な存在に押しやる「企業社会」、そしてこれを資本主義と社会主義の要素を結合した社会体制として捉えた「会社主義」という用語を、一部の社会学者や経済学者が使い始めた。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 17:13:43
H.Takano @midwhite

企業には高賃金の正社員が引き受けるには余りに単純な労働が広範に存在し、さらに正社員の雇用と賃金は硬直的なので、労働者の数や総人件費を抑制しにくい。また長時間に渡って多大なエネルギーを仕事に注ぐ必要があるため、家事、育児、介護などに力を割けない。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 17:21:18
H.Takano @midwhite

熊沢誠によれば、これらの問題を解決すべく利用されたのが女性労働者である。彼女らは昇進の可能性が低く、単純労働に従事し、結婚や出産とともに退職する。そして子育ての後は非正規労働者としてやはり単純労働に従事する。雇用調整も容易で、家事の担い手にもなれる。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 17:25:37
H.Takano @midwhite

馬場宏二によれば、会社主義とは資本主義的な競争と共同体的・社会主義的な関係との精妙な結合である。この特徴として、第一に会社は株主ではなく従業員の集団と捉えられ、第二に従業員間の格差が少なく、第三に社内の終身雇用と社外の安定的な取引関係が安心を生んだ。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 17:34:41
H.Takano @midwhite

馬場宏二はもちろん、非正社員への差別、忠実な社員の過労死、地域社会の空洞化、過剰富裕化による環境破壊といった問題点を指摘しているが、全体としては現代日本が平等かつ豊かであり、格差を解消して資本主義を乗り越えつつあると強調した。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 17:53:54
H.Takano @midwhite

90年代末から男性非正規労働者が激増を始め、世帯収入の格差が拡大する。その前兆は80年代後半から多くあった。86年に労働者派遣法が施行され、99年に派遣の範囲が原則自由化した。そして03年の製造業への派遣解禁は、派遣労働者の激増と賃金の低下を生んだ。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 18:37:15
H.Takano @midwhite

87年にはリクルート社が「近頃、社会を自由型で泳ぐ奴らがいる」「バイトも完全就職も超えたいま一番新しい究極の仕事人」などと、フリーターに対する華やかで楽観的なイメージを振りまいた。89年には消費税が導入され、同時に所得税が減税された。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 18:40:52
H.Takano @midwhite

92年には大規模小売店法の改定によって出店規制が緩和され、後に廃止された。95年には日経連が「新時代の『日本的経営』」と題する報告書の中で、終身雇用を一部の管理職、総合職、基幹職に限定して、多くの男性正社員の多くをパートや派遣に切り替えると発表した。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 18:45:25
H.Takano @midwhite

現代の資本家階級の平均年収は645万円、新中間階級は535万円、旧中間階級は343万円、非正規労働者は151万円、就業者全体で358万円である。日本は平均を大きく上回る資本家階級、平均的な中間階級、平均を大きく下回る非正規労働者の三層に分けられる。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 19:14:39
H.Takano @midwhite

現代の階級理論においては、生産手段だけでなく専門的な技能や資格、組織内の地位も搾取の基盤となりうる。旧中間階級の収入が平均的であるのなら、資本家階級や新中間階級の高い収入を可能にしているのは、主に非正規労働者に対する搾取であると考える他にない。(橋本健二『格差の戦後史』)

2012-09-08 19:18:30
H.Takano @midwhite

【読了】『「格差」の戦後史--階級社会 日本の履歴書 (河出ブックス)』橋本 健二 http://t.co/hQoT1D1A #booklog

2012-09-08 19:47:01