【9/14】テーマ:残暑【#同題ssTB】
- yoruhatemisumi
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「空が高くなってきたなぁ…」伸びをするあなたを見詰め、そうですね。と柔らかく返しながらふと思う。以前の僕なら、科学的根拠でバッサリ切り捨てていただろうな、と。あなたと共にうつろう季節は、こんなにも愛おしい <残暑> #同題ssTB
2012-09-14 09:53:55朝、暑くてお互い蹴り飛ばすみたいに離れる時間がだんだん遅くなってきた。「…喉乾いた…バニちゃん水とって来て…」「虎徹さん時計見てください。二度寝する時間なんてありませんよ」<残暑> #同題ssTB
2012-09-14 09:58:01虎徹さんは机の上にだらしなく上半身を投げ出して暑い暑いと騒いでいる。全くおじさんは自分で体温調節も出来ないのか。そう思った僕の前で。「あー髪ウザ」彼が首に張り付く髪をかき上げ、項に一筋流れる汗が露になった。口の中が、乾く。ああ、確かに今日はやけに、暑い。/残暑 #同題ssTB
2012-09-14 10:07:20夏は嫌いだと冷房を強くすれば、手足が冷えるのと弱々しく抵抗する。もう朝夕は涼しいでしょう、どうして寒くするの。ねえあなた、ユーリはいつまでもしようがないわねえ。彼女の時は、あの盛夏で止まったままだ。/残暑 #同題ssTB
2012-09-14 10:17:30「なんでこの暑いのに鍋なんて…」「粋ざんしょ」「…」「…」「…あぁ、えぇと…すみません。虎徹さんがせっかく身を挺してこの暑さに抵抗しようとさせてくれたのに、その気持ちを汲めなくて…」「そうやって俺にトドメを刺すのは止めて下さい」/残暑 #同題ssTB
2012-09-14 10:36:06サマードレスから伸びる白い足。音の鳴るサンダルで娘がピョコピョコ歩くのを縁側で横になって眺めた思い出の夏。あれは遠い日の9月。シーズンの終わりの休暇で田舎に帰省したんだっけ。ハレーションと共に蘇る記憶。夏の名残がいつまでも消えない。/残暑 #同題ssTB
2012-09-14 11:16:40「バニーちゃん、まだまだ残暑厳しい日が続きますってお天気お姉さん言ってたよね。何で本革着て来ちゃったの」「暑苦しいから黙ってて下さい。だって九月ですよ。それにこのスタイルには僕なりのこだわりがあるんです」「ピンズはTシャツにでも付けときゃいいじゃん」「……」/残暑 #同題ssTB
2012-09-14 11:25:09月に一度差出人のない絵葉書が届く。綺麗な色合いの絵葉書にはメッセージもなにもない。でも彼が無事であること、元気であるこのようで嬉しい。今月のには珍しくメッセージが入っていた「ざんしょみまいもうしあげます」たどたどしく書かれた文字。思わず抱きしめたくなった。/残暑 #同題sstb
2012-09-14 11:29:49九月中旬、一枚の葉書が虎徹のアパートに届いた、それを指先で持て余す。卓上には同じ筆跡の葉書が数枚、拙い日本語で文章が綴られていて、初めて届いた時は驚いたものだ。俺も別に日本語に親しんだ訳じゃねぇんだけど。 “暑中お見舞い申し上げます” 「ばぁか。残暑だ残暑」残暑/ #同題ssTB
2012-09-14 11:35:10夏の終わりの休日。夕刻、冷えたビールを持ってバニーと海を見に行く。シュテルンメダイユ地区にあるのは港と防波堤。海浜公園に申し訳程度の人工的な砂浜。海水浴には向かない海。日差しは夏の熱量を残したままだけど、通り抜ける風は心地よく冷たい。長い夏がようやく終わる。/残暑 #同題ssTB
2012-09-14 11:41:11「っあー…あっちぃ!」「クーラー直しましょうよ…」いい年した大人が床で大の字になる。何が原因で喧嘩をしたのかもう思い出せない。つう、と滴り落ちる汗にバカらしくなって叫んだ。「修理代なら僕が払いますから!」「ぜってー嫌だ!」壊れたリモコン、投げたのはどっち?<残暑> #同題ssTB
2012-09-14 11:46:39虎徹君から届いた絵葉書には彼の近況と共に『スイカも送る』という謎の文字が。届いたのは葉書のみのはず。と考えていると来客を告げる音。「はい。どちら様で、」「来たぞ!ワイルドタイガーだ!なんてな。残暑見舞い届けにきたぜ」彼の手には大きなスイカがひとつ。空虎<残暑>#同題ssTB
2012-09-14 11:48:09もうすぐ秋なのに思い切って半袖のワンピースをかっちゃった。ずっとボクはヒーローなんだから可愛いんじゃダメ、カッコ良くなきゃ!って思ってたんだけど、タイガーが似合うって、可愛いって褒めてくれたから。<残暑> #同題ssTB パオリンにレモン色のギンガムチェックのワンピを着せたい・・
2012-09-14 12:04:55都会の公園、ここだけ時が止まったようだ「…虎徹さん」来る、と思った瞬間。狂ったように始まった蝉の最後の叫びに被る「好きです」二人目を見合わせて、あまりのタイミングに吹き出す「俺も、好きだ」笑いながら自然に言えた。背中を一筋流れたのは夏の名残か、緩んだ緊張か/残暑 #同題ssTB
2012-09-14 12:05:57俺の胸に耳をつけたバニーが、貴男の海の音がする、と呟いた。知ってますか。ヒトの祖先が海から這い出し陸で暮らす為には自分の中に海を持つしかなかった。頑丈な骨は、血液は、その為にある。僕は貴男の海が故郷の様に恋しい。名残の夏を惜しむかのようにこの身を抱きしめた。/残暑 #同題ssTB
2012-09-14 12:06:16貴男の胸から海鳴りが聞こえる。貴男の頸には潮の味が。今はもう1分しか見られない眼差しは海底から見上げる水面のようで、僕はいつまでもこの海に留まりたくなる。二人分の汗で湿った貴男の背中。ずっと抱きしめていた相手はもうすぐ裸では眠れなくなるな、と小さく独り言ちた/残暑 #同題ssTB
2012-09-14 12:07:35“四季”なんだから季節は四つだけでしょう。なぜ挨拶を変える必要があるんですか。昨日は秋刀魚を食べました。やっぱり腹部は苦いです。サーモンのスシは好きです、ハラミ美味しいです。都会育ちの相棒はまだオリエンタルの文化に溶け込むことに大分必死だ。 -残暑 #同題ssTB
2012-09-14 12:24:16空調の効いた室内にいるとあまり季節感を感じません。でも最近キッドさんに飛びつかれたあと背中の暖かい感触がしばらく消えないんです。これが日本の和歌でいう季節感やワビサビなんでしょうか…とタイガーさんに聞いたらニヤニヤ顔で背中をバンバン叩かれた。痛いでござる…〈残暑〉 #同題ssTB
2012-09-14 12:28:13「ここは天国ですねぇ。九月だってのに、外はあっつくて」髭面に汗。机の前、揺れるクリアファイル。「書類は扇ではありません。早くこちらへ」手を伸ばすと引っ込められた。「渡したら、追い出されますよね?」笑い、また扇ぐ。居座るは暑気避けと、言い張るつもりか。<残暑・虎月> #同題ssTB
2012-09-14 12:32:01盆の里帰りが遅れに遅れてこんな時期になってしまった。線香に火をつける。広い墓地に生者は独りきりで墓石に向かう。二人きりでデートしてるみたいだなあ、友恵ちゃん。懐かしい呼び名を口にのぼらせれば、ゆらゆらと立ち上る煙と共に消えていく。ひぐらしが鳴いていた。/残暑 #同題ssTB
2012-09-14 12:34:31絡む暑さに辟易して思いきって海に行こうと決めた。共に蟠る胸の内を吹き飛ばすようにチェイサーを走らせる。海に裸足を浸けて、思いがけない冷たさに驚く。ここにはもう夏がいないのか。残り香のように留まっていた暑さを振り払っておきながら、冷えた隣に寂しさを覚えた。/残暑 #同題ssTB
2012-09-14 12:37:52縁側に腰掛け水を張ったタライに足をつけ、目の前の奇妙な恋愛模様を眺める。若い二人の顔が不意に近づく度に隣の男が無言で怒り、その度に足元に波紋が起きた。見当違いも甚だしい。取り合われているのは、貴方の可愛いヒーローではないのに。とんだバカンスになったものだ。<残暑> #同題ssTB
2012-09-14 12:41:54「奢りだぜヒーロー」突き出されたテイクアウトの珈琲には氷が浮いていた。近所のカフェの定員だ。「まだくそ暑いってのに火災現場なんてありがとな」煤だらけの顔を見合わせたバディヒーローはこそりと囁きあった。「帰りに珈琲でもどうだ?」「いいですね」 /残暑 #同題ssTB
2012-09-14 12:44:22「虎徹さん、あれは?」「ひぐらしだな。ついでに言うとあれはひぐらしで、あれもひぐらし。まあ、今鳴いてるやつはみ〜んなひぐらしだな」/残暑 #同題ssTB
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