平尾のワインバーLIVING D のカウンターを挟んで交わされる交換小説

無口なマスターと恥ずかしがり屋の客が(ひまにまかせて)カウンター越しに交換小説をつぶやいています。 お客さんならだれでも参加できまぁす(///ω//)ノシ お気軽に♪ ハッシュタグは #living_d_story 続きを読む
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けんたろう @winevogelTC

昔よく通ってた、平尾のお店は元気でやってるだろうか。。

2010-07-21 18:18:35
グッチ @LIVING_D_wine

@osumikentaro 懐かしい顔だなー。ようこそ。

2010-07-21 20:29:32
けんたろう @winevogelTC

@LIVING_D_wine オヤジはまだ現役でパスタを茹でてた。昔と同じカウンターに座り、いつものワインを頼む。まるで、ほんの一週間前にもこの席でこうして飲んだかのような、そんな気がしてきた。

2010-07-21 20:47:49
グッチ @LIVING_D_wine

@osumikentaro すべてを、お見通しなのか、オヤジは黙っている。イベリコのハムを慣れた手つきでサーブし、フォークを2本差し出した。

2010-07-21 21:14:24
けんたろう @winevogelTC

私はそのうちの一本のフォークを持ち、イベリコのハムをひときれ口に運んだ。もう一本のフォークが、いつ来るともしれない彼女の来店を待ち続けていた。 RT @LIVING_D_wine すべてをお見通しなのかオヤジは黙っている。イベリコのハムを慣れた手つきでサーブしフォークを2本差し出

2010-07-21 22:21:19
グッチ @LIVING_D_wine

@osumikentaro カウベルが鳴った。隣に座ったのはボブだった。

2010-07-21 23:05:47
けんたろう @winevogelTC

私はボブを一瞥し、すぐにワイングラスに視線を落とした。「しばらくだったな」ふたりの間に沈黙の時間が流れた。ボブはカウンターの一番端の席に座り、そして、重い口を開いた。 RT @LIVING_D_wine @osumikentaro カウベルが鳴った。隣に座ったのはボブだった。

2010-07-21 23:12:57
グッチ @LIVING_D_wine

@osumikentaro 「ナンシーのことは、聞いたか?」グラスを拭くオヤジの手が少し止まった。

2010-07-22 00:50:30
けんたろう @winevogelTC

私はボブの問いかけには答えずにワインを飲み干した。カウンターに置かれた金魚鉢の中で、ナンシーが笑ったように見えた。 @LIVING_D_wine 「ナンシーのことは、聞いたか?」グラスを拭くオヤジの手が少し止まった。

2010-07-22 01:00:39
グッチ @LIVING_D_wine

@osumikentaro 「相手はやっかいだぜ、Ken、自分一人でなんでもできると思うなよ。悪い癖だ。」わざと大げさに言って見せたのは、南部の人間の特徴かもしれない。

2010-07-22 03:16:33
けんたろう @winevogelTC

@LIVING_D_wine 「確かにパーティーを組めば案外簡単にやれるのかもしれない。だけど」酒場に沈黙が流れた。「ザイルで確保された人生って、つまんなくないですか?」

2010-07-22 08:56:40
グッチ @LIVING_D_wine

@osumikentaro 出て行くKenを二人は黙って見送った。 「しかし、マスターこの店は相変わらずヒマだなあ。」 「余計なお世話だ、ボブ、Kenを頼んだぞ。」 「アイアイサー!マスターもどう?」 ボブはいつもオヴァチュアを飲む。深いルビー色が今夜にふさわしい。

2010-07-22 13:01:43
けんたろう @winevogelTC

@LIVING_D_wine これからKenがどこに向かおうとしているのか、ボブは知っていた。「背振山系、か」。ワイングラスを持つ手が小刻みに震え、わずかに残ったオヴァーチュアが波打っている。「この週末、ついにあの沢をやるんだな」ボブは震える右手を押さえつけ、そうつぶやいた。

2010-07-22 14:25:45
グッチ @LIVING_D_wine

@osumikentaro オヴァチュアというワインが生まれた場所、ナパの渓谷を彷彿とさせる背振系の山々は、人を選ぶという。別名「天狗の森」の異名をとる。「この山は、どうしてこんなにも悲しいの?」ナンシーはそう言って町を去った。彼女は一体何を見たのか…。

2010-07-23 01:17:12
けんたろう @winevogelTC

@LIVING_D_wine ナンシーが見た「それ」を探しに、井原山に突き上げる渓谷、「ダルメキ谷」に向かった。苦難の遡行。落差13mとも言われるアンノ滝を命綱もつけずに登るKen。源流まで登りつめたその先に、ついに見つけたキツネノカミソリ。 http://goo.gl/AYju

2010-07-25 11:21:53
グッチ @LIVING_D_wine

@osumikentaro やや距離を置いて、Kenは呆然と立ちつくした。何かを拒んでいるように思えたし、誘っているようにも思えた。こ、これが…。

2010-07-25 11:44:41
けんたろう @winevogelTC

@LIVING_D_wine Kenは身体の芯から湧き上がる抑えがたい感情に気づいた。冷たい沢水に全身ずぶ濡れなのにも関わらず、身体が熱く火照っているのだ。キツネノカミソリの花言葉は「妖艶」。そのことに気づいたときには、もう、手遅れだった。

2010-07-25 11:49:25
グッチ @LIVING_D_wine

@osumikentaro ナンシーはキッシュ作りがうまかった。そしてKen達はワインと一緒に、平尾の「D」でそれを食べるのが週末の楽しみだった。ボブなんかは食べすぎでよく鼻血をだしたものだ…。ナンシーの笑顔、ナンシーの言葉がフラッシュバックする。

2010-07-26 14:30:26
けんたろう @winevogelTC

@LIVING_D_wine 「遭難したときは沢に降りずに山頂を目指すのだ」そう、ボブから何度も言い聞かされていたことをKenは思い出した。朦朧とした意識の中で、ゆっくりと山頂に向けて歩き続けた。よろけながらさまようKenを笑うかのように、キツネノカミソリが妖しく揺れていた。

2010-07-26 20:18:04
グッチ @LIVING_D_wine

@osumikentaro ボブはカウンターでうなだれていた。Kenの捜索がはじまって2日目の 朝を迎えようとしていた。マスターにも疲労感が漂っている。

2010-07-27 13:04:29
けんたろう @winevogelTC

@LIVING_D_wine いったいKenはどこに行ったというのだ。井原山までの登山道はくまなく探した。獣道や沢筋に至るまですべてだ。これではまるで神隠しじゃないか。途方に暮れたマスターの頭に、ひとつ思い当たる場所が浮かんだ。ま、まさか。「な、中洲 !?」

2010-07-27 13:09:07
グッチ @LIVING_D_wine

@osumikentaro ボブは激しく頭を振った。「だってあそこは、去年の火災で廃墟になったはずでは?確かに最後にナンシーを見たという情報はあそこだけど…。」

2010-07-27 14:27:58
けんたろう @winevogelTC

「いや、まてよ」ボブは焼け跡の向こうを見やった。ネオンの揺らめきが那珂川の川面に妖しくゆらめいていた。それはまるで、井原山に群生するキツネノカミソリのようだった。「あのネオンの中、だな」ボブは中洲の最深部に潜入することを決めた。 #living_d_story

2010-07-27 15:13:49
グッチ @LIVING_D_wine

中州に足を運んだボブの前に広がる街は、2年前ナンシーを捜し歩いた時と様子が違っていた。Kenの捜索も打ち切られた今となっては、マスターの言うとおり、ここにかけるしかない。「まるで出来損ないのミステリーだな」つぶやくボブに淫靡な空気がまとわりつく。#living_d_story

2010-07-27 16:56:47
けんたろう @winevogelTC

細い路地の向こうで何かが横切ったような気がした。「ナンシーか?」ボブは危険を顧みずその路地に入っていった。延々と続く路地の突き当たりには、パチパチと音を立てながら点滅する薄汚れたネオンサイン。その下の小さなドアに描かれていたのはキツネノカミソリ。 #living_d_story

2010-07-27 18:05:34