地獄への再送～〝Ｃ〟のゾンビサバイバル・レポート～＃２ 館編１

蒼桐大紀 @AOGILI

「大丈夫!?　無茶過ぎるよ」「他に良い案がなかった」「だからって、私の盾になるようなことしなくても……」「そんなつもりじゃない。戦術だ。わかっているだろ、本当は」「まあ、ね」いま無意識に『私』と言ったな。とは思ったが、思うだけに留めておいた。 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

さすがに堪えた。ひと息ついて膝を立てると、華奢な手が差し出された。「でも無茶には違いないでしょ」狙撃手は笑っていた。事によっては、嫌味にしかならないこの仕草も、こいつがやるとそうは感じない。こんな状況だからこそ、笑っていられる相手がいるのは……。 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

唐突に体の力が抜けた。自重を支えられなくなり横倒しになった衝撃、狙撃手の呼び声、どれもが遠ざかり、薄れていく。感覚、意識も薄れていく。麻痺していく。大蜘蛛にのしかかれたとき、腕につけられた傷を思い出した。そこからじぃんと痛みの波紋が広がっていた。 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

俺が最後に感じたのは、誰かの腕の感触だった。そして意識は途切れた。／’17日目(21日目まで毒によりHP回復不可) HP:77 食糧:89 狙撃手 ショットガン #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

狙撃手の独白。あれから彼の意識が戻らない。倒れたときは驚いたけど、すぐ気が付いた。大蜘蛛ゾンビは毒を持ってたのかも。二の腕を布できつく縛る。こんなので良いのかわからない。でも、何もしないでいるのが怖かった。 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

彼の頭をそっと下ろして、両手で左腕を持ち上げる。息を吸って、傷に口を付けた。手にも力を入れて、思い切り血を吸う。舌の先が痺れた。すぐに口を離して、血を吐き出した。朱の中に黄色い液がまじっている。やっぱり毒だった。 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

水で口をすすいで、また血を吸い出す。私の動きに合わせて、彼の腕に力が入る。勘違いかもしれないけど、私にはそんな感じがした。そうすれば、血が出やすくなるから。彼が生きようとしているんだと思ったから。やがて、傷から流れる血は朱だけになった。 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

残っていた綺麗な包帯で手当てしてから、私も口を綺麗にした。そうしないと、今度は私が毒にやられるかもしれないから。彼はそういうことをとても気にしていた。いつか私の手を引いて、ゾンビの群れから逃げたとき。星の下を走ったとき。一緒に逃げた理由も……。 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

『二人いるんだ。手を尽くす前に独走するな。お互い条件は同じだ、違うか』あの時は疲れていたから、ちゃんと覚えてない。でも、そんなこと彼は言った。そんなことを言われたのも、はじめてだった。彼の隣りに座る。敵が来たら撃つ。それが、私の役目。 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

「……が、死んだ」ぽつりと彼がつぶやいた。聞き返そうとしたとき、はっきりと両目が開いて私を見た。「状況は？　俺は一体どれくらい――んぐっ」濡らしておいたハンカチを押しつけた。いきなりしゃべったら、喉が壊れちゃうよ。彼はすぐに落ち着いてくれた。 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

まだ辛そうなのに、移動すると言う。肩を貸そうとしら「左肩を」と言われた。左なら私がすぐ撃てるから。「離れるときは、前に押し出してくれ」「そんな状態で前に出せないよ。味方が的を増やしてどうするの？」……どうしてこんな風にしか話せないんだろう。#ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

「フレンドリーファイア」「え？」「こっちは散弾だぜ」彼は黒いショットガンを持ち上げて笑った。いまも痛いはずなのに、傷なんてないみたいに。「どっちにしろ。お前さんが後ろの方がいいわけ。病み上がりに説明させるなよ」私は黙ってうなずいた。 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

ここまでのステータス。／’17日目(19になるまでHP回復不可) HP:77 食糧:89 狙撃手 ショットガン #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

館の蒼桐大紀C：【探索】動植物の組織標本が多数並ぶ部屋でレポートの断片を発見。『ＺＶはあらゆる生体に感染増殖／戦闘的に変異、群体を構築／侵略する生態系そのもの』探索度＋１、食糧：－４ #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

「どう思う？」狙撃手にレポート用紙を見せる。形式としてはカルテに近い部分がある。ZVはこの研究のコードだろう。いま存在するゾンビのことを指しているのは、まず間違いない。ZVという単語と姿からの連想か、もともとゾンビの略語として使われていたのか。 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

「ごめん、よくわからない」狙撃手はすまなそうに首を振った。意外と博識な面を持つ奴だが、専門外だったらしい。ならば、推測するしかない。「ZVはBC兵器の一種だとしたら」「ウィルスってこと？」「ああ、感染増殖した相手を変異させ、違う生き物に作り替える」 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

「それって、この街にゾンビが出るようになったのは、誰かが仕組んだってこと？」「ま、推測の域を出ないがな」とりあえずレポートの断片は回収した。ホルマリン漬けの中で眠る趣味はないが……。「今日はここで休むしかなさそうだな」「そうだね……」 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

「傷、まだ痛む？」「平気だ」「本当？」「……まだ痛む」白状すると、温かいカップを渡された。粉末ミルクに蜂蜜ドロップを溶かし込んだものだという。明らかに余分な言葉が少なくなってきている。俺は俺で狙撃手の存在前提で、行動指針を立てるようになっていた。 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

莫迦だなあ、と思う。こんな世界だというのに。自分一人さえ、ろくすっぽ生かせられないというのに。同行者前提での行動指針。笑うしかない。狂ってる。この館への道を教えてくれた人とは、別の意味で狂っている。そうして、二人で背中合わせに眠った。#ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

ステータス整理。／’18日目(19になるまでHP回復不可) HP:77 食糧:85 狙撃手 ショットガン 探索度1 #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

館の蒼桐大紀C：【探索】焼け焦げた部屋でノートの断片を発見。『今夜決行す。私は大罪人として歴史に名を刻む。記録する者が残っていればの話だが。息子よ、愛している』探索度＋１、食糧：－５ #ゾンビサバイバル #真実の館

蒼桐大紀 @AOGILI

「手紙みたいな文章だね……。どうしたの？」狙撃手の声が遠く聞こえた。二人で顔とを付き合わせているにもかかわらずだ。矛盾している。記録する者が残っていれば、という仮定。息子への遺言じみた言葉。そして、大罪人……。 #ゾンビサバイバル #真実の館