blついのべ2012年9月10月

*腐注意* お題とついのべまとめ。 『書生と先生の連作』はこちらに入っています。
0
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 同輩の娘さんが、お前と年頃が近くてね。気紛れを言われるのは慣れているが、流石に戸惑う。若い者同士、散策するのにいい陽気だなんて。…左様ですか、今晩は鰤の照り焼きを拵える予定でしたけど、先生が仰有るなら。しまったという顔をさせて、それで楽しいわけじゃないのに。

2012-09-16 23:06:47
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 脛が痛い、喉がおかしいと己の身体に辟易していた時期を経て、書生は見違えた青年になった。道行く婦女を振り返らせ連れの男を不機嫌にさせる程だと、町で見掛けたという編集者も証言する。若い女性と近付けば、きっと目が開くだろう。老いていくだけの作家に縛るべきではない。

2012-09-18 23:26:52
長月笹良 @sasa_sep

書生と先生で、優しいキスについて深夜のテンションで語ってください。 http://t.co/WrVvbJNb

2012-09-18 23:32:05
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel その夜も、襖が音もなく開いた。そちらに背を向け、顎まで布団を引き上げるのが習い性となった。いつもなら隠微な水音が聞こえだすが、今晩はじっと動かない。空寝が微睡みに融けかかる頃、不意に枕元ににじり寄られる気配がした。蟀谷に触れる生温い風に、息をするのも忘れる。

2012-09-18 23:30:55
長月笹良 @sasa_sep

『手が触れ合って意識してしまう』『先生』を描きor書きましょう。 #kawaiiCP http://t.co/BsWkBYah

2012-09-19 22:40:43
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 肩に手が掛かり仰向かせられる。眠り込んだふりのまま唇を吸われ、我知らず迎え入れるように開いた。甘い、書生の机に載った書きさしの原稿はそこで途切れていた。先生、只今戻りましたと呼ばわれて肩が波打つ。遅い夕餉、飯碗を渡す手と手が重なり、危うく取り落としそこねた。

2012-09-19 22:39:45
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel お前の書いている、あの小説だがね。水を向けると、ご覧になりましたかと書生は含羞んだ。若い奉公人が女将に懸想するのは悪くないが、主人の留守に寝所へ忍び込むのはあまりに低俗すぎやせんかね。書生の書いたものを検分するのは当たり前だ。喩え、内容に心当たりがあろうと。

2012-09-21 23:01:34
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 奉公人は思い余ってああしたので、一口に低俗とは言えないと思います。なら、その辺りを書き込むべきだね。はい、ありがとうございます。一端の口をきくが、受け入れる素直さも持ち合わせる。それと女将の表現が固い、女性的なふくよかさが足りない。はい、まだまだですと笑う。

2012-09-22 23:18:55
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 音もなく開く襖、畳を踏む気配だけが側に近付く。懊悩するかのような沈黙と停滞を私は畏れている。いつか破れるゴム風船にいっぱい空気を入れて胸をどきどきさせる児童のように、同時にどこか愉しんでもいる。肩に掛かる手を予期していた。息を潜めたまま吸われる唇が、甘い。

2012-09-27 00:31:53
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 先生お早うございます、全ては朝日の下に泡沫に帰したとでも云わんばかりに書生は挨拶を寄越す。私が夜通し転々反転を繰り返したのを知ってか知らずか、疚しい処など一点もありはしないという顔をして。ああ、とおざなりな返事をすると見せる白い歯の、その清潔さまで子面憎い。

2012-09-27 22:31:23
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 奉公人は次第に剛胆になり、ある夜とうとう女将の 夜着の胸元をまさぐるが、そこにあるべき乳房は描かれない。鼻先を寄せた 襟足にも脂粉の匂いは感じられない。いつまで経っても主人は帰らず、他の使用人は鳴りを潜める。女の寝たふりは変わらず、私も狸寝入りを続けている。

2012-09-28 22:31:00
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 頤を捉え、喉仏をなぞる指に、生唾を飲む様さえ隠しようもない。首のうしろでは一心に顔を埋めているが、嗅ぎ分けられるのは煙草の匂いがせいぜいか。寝間着の襟から這い込む掌、起伏もない薄い胸に爪がかかる左右の一点。布団に蒸された体に震えが走る 。いけない、これでは。

2012-09-30 21:19:06
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 自ら慰めるなど何年ぶりか、疾うに枯れて久しい我が身からは薄く僅かな残滓しか吐き出されなかった。若い奉公人の、ひいては書生の行いは、幼い子供が母親に甘えるようなものだと認識していた。老いた私までそれに引きずられ、あまつさえみすぼらしい欲望なぞ抱いてはいけない。

2012-10-02 23:18:22
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel その後暫く、夜更けに襖が開くことはなかった。書生は原稿を何処かに仕舞ってしまい、奉公人と女将の顛末を知る由もない。布団を被って瞼を閉ざすが、微かな家鳴りに耳が尖り寝付かれない。まるで若いさなかのように体が火照るのを感じる。それから逃れる為に、今夜も手を汚す。

2012-10-05 23:40:26
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 夜に寝足りないせいか、日中に机の前で微睡んでしまう。ふと目を開けると、書生が私の背中に綿入れを着せかけていた。日が落ちると冷えますからと微笑む。ああ、それはいいから少し肩を揉んでくれないか。はいと従順に頷き、首の付け根に手がかかる。圧迫されてあえかに呻いた。

2012-10-08 22:56:05
長月笹良 @sasa_sep

#twblnovel 書生の机に原稿を見つけたのは数日後のことだった。私が指摘した通りに推敲されてはいるものの、主人は未だに帰らない。奉公人は女将の布団を捲り、あまり出歩かないらしい足を眺めている。敷布の上の踝に触れると、いけません、と叱責が飛ぶ。好きにさせておいて、勝手な女だ。

2012-10-13 00:52:12