連詩 赤とんぼ

かべこ（@kabemix） @kabekox

1 子供の頃は暗黙の了解だったエラ呼吸は生きるための全てであったのだが今はもう記憶にも薄く最近はただ腹を満たすために空中を旋回しては空を紅くし夕方を連れてくるだけの毎日の流れに「いつになったら青くなれるの？」と問う彼女に何も言えないまま三分間先を行く僕は未だ赤とんぼ #月江詩人会

りよ @riyo0

2赤とんぼが/スイ、スイーと/微かな羽音と共に描く直線が/彼の魂をなぞる/「人間は秋に生まれた」/落ち葉の重なりも、うろこ雲の連なりも/そう奏でながら季節を安らかな冬へと運ぶ/「だから人間はみんな秋が好きなんだ」/赤とんぼは/スイ、スイーと。 #月江詩人会

遠山衛 @Banbieno

3 スイ、スイーと/夕暮れに/稲穂の上/とくればさぁ/ここは/俺の出番でしょ？/少し風が冷たくなった/と感じた時に/飛び立とうと思ってる/だって/こんな郷愁/真っ赤な俺にしか/出せやしないじゃないか/蝶々なんかには/出せやしないじゃないか #月江詩人会

Michika Edit @michika_yam

4 出せやしないじゃないか/こんな雨霞じゃね/季節は滲む/どうしようもない心地よさと/赤とんぼ/どうしようもないやるせなさと/かくれんぼ/半分半分半分こ/夜霧を纏う/見せれやしないよ/こんなにぽっぽと赤い顔/そうして露わな赤い尻 #月江詩人会

広瀬佑輔 @funoukenmei

5 赤い尻の猿の親子／山で見つける／小猿の必死さ／母猿のむき出しの……／それで私の母よ／私を生んだそのことのためですか／そんなに食べにくそうに／いつまでも／息子は今日もここで詩を書いています／息子は今日もここで／なんとまぁ！／詩を！／詩をですよ！ #月江詩人会

Kohji Nakahara @Huyuno_hoshi

6 詩をですよ!書いたところで!どうなるんですか!と叫ぶ博士を押さえようとしたそのとき私の脳裏には何の数式も浮かばず(つまり今までの勉学はいっさいの無力であった訳である)ただただ「言葉の持つなにか」がふわふわと浮ついていたのだ(昔はあんなにも正解を求めていたのに) #月江詩人会

かべこ（@kabemix） @kabekox

7 正解を求めていたのに／ようやく手にした羽はじたばたと／飛ぶよりもただ浮ついた／正解不正解の境界はとうに知れず／わたしはどこへ流れたい／静止の先には何も見つからず／今はただ宙を目指してさざめく風にじたばたと #月江詩人会

りよ @riyo0

8じたばたと動かす手足は羽ばたきたいと/少しだけ手助けしてやる/地に手足が着けば何事も無かったかのよう/よちよち歩いて草陰へ/その中の一本によじ登り/ーあ、翔ぶ/と思った瞬間からあっという間に私の身長を超えて空へ/小さな旅路を見送り/私は彼の景色の中の一つになった #月江詩人会

遠山衛 @Banbieno

9私は彼の景色の中の一つになった/それだけで十分じゃないか？/三千世界の夕陽が沈むまで/華々しい思い違いをみせてやる/ずっと愛してる/今日も今日が今日である/という動かしがたい事実には/理由も意味もないのだから/唾液いっぱい唾をかけてやる/すべて君のためさ #月江詩人会

Michika Edit @michika_yam

10 すべて君のためさ/いっそ/すべて君のせいさ/そうだろう？/僕はどこへだって行きたい/いっそ/僕はどこへも行きたくない/そうだろう？/四枚の羽が東と西と南と北を目指す/見失う/明日はどこへ行く？/心臓の音がする/世界はまた青く染まろうとする #月光詩人会

広瀬佑輔 @funoukenmei

11 世界はまた青く染まろうとする／よかった／あなたにも青く見えたのですね／ちょっと隣に座ってもいいですか／あれは確かに青でした／一点の曇りもない青でした／とても大きな／計り知れないものです／一体何だったんでしょう／まぁ／それにしたって僕たち気が合うと思いませんか？ #月江詩人会

Kohji Nakahara @Huyuno_hoshi

12 「気が合うと思いませんか？」声が聞こえたので振り返ったがそこには何もない(あってはいけない)ので「ずいぶんと脈絡の無い言葉ではないか？」と空中(もしくは私自身の意識に向けて)に答えた途端「いきているのはつらい」と言うので「そんな事は無いさ」と笑う(ほら見ろ！)　#月江詩人会

かべこ（@kabemix） @kabekox

13 ほら見ろ！そこには見えない糸が張られていただろう／音に乗せた思いは僕の口を出てすぐ風に掻き消された／食べ残された君の羽のひとひらに／僕の目に流れゆく、ふるえるような夕焼けの響きは／もう届いてはいないのかもしれない／ほらまたそこで、蜘蛛が網をはる音がする #月江詩人会

りよ @riyo0

14蜘蛛が網をはる音がする/始発列車の響きや/雲の切れ間から射す朝日/街路灯の儚い青さ/起き抜けの最初の溜息を捕えては/巣に繋ぎ止める/自分が死んだ事にも気づかずに/じっと夜明けを待ちながら/それを糧として/生き続ける #月江詩人会

遠山衛 @Banbieno

15生き続ける/ことにする/わ/今/そう/朝一番の純潔な陽が夜ごと罪を重ねる身体を射抜いて嗚呼/なんたる赤裸々/恥ずかしくてたまらない/こんな朝は/ねちねち雨が降るべきだ/…/あきれた/わ/覚悟決めた/わ/行方不明の声/はりあげよ/不条理な空/撃ち落とすまで #月江詩人会

Michika Edit @michika_yam

16 撃ち落とすまで撃ちまくる/連弾なんぞ生ぬるい/88鍵を八十八が奏でるのさ/88鍵の黒鍵/白い息/どこへだって行ける/「今朝あなたが飲んだミルクティーは、クレオパトラが顔を洗った水かもしれません」/今朝あなたが見つけた朝焼けは、撃ち落とした夕焼けかもしれません # 月江詩人会

広瀬佑輔 @funoukenmei

16 今朝あなたが見つけた朝焼けは、撃ち落とした夕焼けかもしれません／朝と夜／二つの始まりがよく似ているということは／地球も韻を踏むのに夢中だから／飽きもせず何十億年も／誰も見ていなかった日々の方が長かっただろうに／まぁ確かにあいつ／最近は上手くなってきたよな# 月江詩人会

Kohji Nakahara @Huyuno_hoshi

18 上手くなってきたよななんて言われた午前1時君は殻を破って空へと向かうが(僕はそれがうらやましくて仕方なかった)僕は午前2時30分に殻にこもって自分を磨いた(これは僕の自己防衛)ちっとも上手くなんかなっていない(彼は嘘を使うのが上手くなってきた気がして悲しい)　＃月江詩人会

かべこ（@kabemix） @kabekox

19 彼は嘘を使うのが上手くなってきた気がして悲しい／私は私であり／私の心は誰のものでもないように／彼のもまたそうなのだ／嘘をついたと嘆く自分に腹が立つ／愚かな自分に嫌気がさす／ああこんな日は／冷たい雨に／流されてしまえばよかったのに #月江詩人会

りよ @riyo0

20流されてしまえばよかったのに/勢いに背を押されながら/振り返らずにはいられなかった/セルロイドの翅でも飛びたいのだ/足りない視野でも見届けたいのだ/抵抗を押し退けて/生きることと生きていることは違うと/羽音を響かせたいのだ/ここにいると #月江詩人会

遠山衛 @Banbieno

21ここにいると/生ぬるい空気に窒息してしまうから口をパクパクさせている/あいつ阿呆みたいじゃと 噂されているが噂以上に阿呆であると思うので胸が痛い/こんな切なさはいたたまれないので/歯ブラシを固定したまま口を(頭を)動かすようにして/歯を磨いてみた #月江詩人会

Michika Edit @michika_yam

22歯を磨いてみた/幸せな街こんこんと/歯磨剤が降る/首を横に振る/ギーク・シャーク/ギーク・シャーク/磨かれない心に口は泡を吹いた/いい人は悪い人だ/幸せな街は寂しい街だ/そこに誰かいるか/この音が聞こえるか/ギーク・シャーク/ギーク・シャーク/私は首を振り続ける #月江詩人会

広瀬佑輔 @funoukenmei

23 首を振り続ける／首を横に振る女の人は美しい／そこに悲しくて強い意思があるから／首を横に振る女の人は美しい／特にあの重そうなまぶた／これが例の拒絶／ぼくは腹がよじれるほど笑う／宇宙ではしが落ちた音がしたので／腹がよじれて／大地に根づいて／ついでにくしゃみも出る# 月江詩人会

Kohji Nakahara @Huyuno_hoshi

24 くしゃみも出るような言葉を吐き続ける意義すら見当たらず(そんなものないのかもしれない)涙の出るような寒々しい話(だと自覚している)を綴り続ける理由を発見できず(心のどこかで拒否しているのだろう)手当り次第に八つ当たりするしかないのだ(本当は飛びたいだけなのに) #月江詩人会

かべこ（@kabemix） @kabekox

25 飛びたいだけなのに／俺の眼鏡は色を映さず／風と音を頼りに探るのは光／お前のその高さと虹色眼鏡を夢に見て／もう一度肩を並べることは絶望なのか／翼の気配を近くに感じ／溢れんばかりの恐怖は消えて／言葉にせずとも知っていた／輝くお前の眼鏡が俺をとらえることはもう #月江詩人会