ドラマ『悪夢ちゃん』全話解説

ドラマ『悪夢ちゃん』全話を、主に心理学や精神分析の観点から解説しました。
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倉沢 繭樹 @mayuqix

女教師と悪夢ちゃんは、夢の機能によって結びつけられ、導かれているように思う。現実を予知夢というかたちで先取りするのも夢なら、現実で傷ついた心を癒すのも夢だ。ふたりの夢に現れる「夢獣(ゆめのけ)」は、その機能の象徴だろう。

2012-12-29 19:10:27
倉沢 繭樹 @mayuqix

特殊な能力や特異な血筋を持つことを表す身体的なしるしを「聖痕(スティグマ)」という。悪夢ちゃんの前髪の色が違うのは、おそらくそれだろう。そうした「能力者」は、社会に対してマージナル(周縁的)な立場に置かれる。

2012-12-29 19:11:10
倉沢 繭樹 @mayuqix

その社会に利益をもたらす存在であり、同時に災厄をもたらす存在でもあるからだ。ふたりは協力して、何とか夢の力をプラスの方向に使おうと苦闘しているのだ。

2012-12-29 19:11:43
倉沢 繭樹 @mayuqix

『悪夢ちゃん』第9話は、女教師が幼少期を過ごした児童養護施設が、子どもを誘拐して養子として海外に売る斡旋業者と関係しているのでは、という可能性が示唆された。その糸口は、悪夢ちゃんが昔見た、夢獣(ゆめのけ)が初めて現れた夢の景色によって開かれた。

2012-12-29 19:12:47
倉沢 繭樹 @mayuqix

私たちは自分の過去を遡っていくとき、非常に印象的な幼少期の記憶「原風景」に出会うことがある。フロイトは、両親の性交場面の目撃といったトラウマティックな子どもの記憶を「原光景」と呼び、それは半ば空想であるとした。

2012-12-29 19:13:33
倉沢 繭樹 @mayuqix

つまり、現実ではなく子どもの内的欲動に基づく幻想(こころの物語)だと考えた。 このドラマ『悪夢ちゃん』では、夢と現(うつつ)が地続きであることが強く描かれている。女教師は、自分の見た夢を現実と取り違えていた。

2012-12-29 19:15:19
倉沢 繭樹 @mayuqix

主観的には「事実」だと思われている記憶を、フロイトは「心的現実」と呼んだ。「夢は第二の人生である」(ネルヴァル)。

2012-12-29 19:16:36
倉沢 繭樹 @mayuqix

『悪夢ちゃん』第10話は、志岐貴が人身売買組織に協力していると見せかけて、実は悪夢ちゃんと武戸井彩未を守ろうとしていたことが明らかになった。志岐は自ら海に身を投げた。志岐の夢研究の最終目標は、人の無意識に働きかけてその変容を促し、世界から争いを無くすことだった、という。

2012-12-29 19:17:36
倉沢 繭樹 @mayuqix

「夢は無意識の王道」とフロイトは言ったが、無意識に影響を与えるには、たとえば夢という手段を用いるのは効果的かもしれない。悪夢ちゃんには、他者の無意識につながることができる能力があるので、その能力の研究が、無意識に作用する化学物質を生む、といったことがあるかもしれない。

2012-12-29 19:19:07
倉沢 繭樹 @mayuqix

しかし、映画『パプリカ』中のセリフではないが、夢は人間に残された最後のフロンティアだ、という気もする。科学が「天使おそれて立ち入らざる処」に踏み込んでよいものか、という疑問である。

2012-12-29 19:20:02
倉沢 繭樹 @mayuqix

『悪夢ちゃん』最終話は、武戸井彩未が志岐貴を殺害したと勘違いして、ショックで倒れた悪夢ちゃんが、夢を介した武戸井の導きによって、無意識の世界から現実に戻ってきた。夢獣(ゆめのけ)は、幼少時の武戸井の親友で、悪夢ちゃんの母親である、古藤万之介の娘の化身だった。

2012-12-29 19:21:03
倉沢 繭樹 @mayuqix

古藤博士は、悪夢ちゃんの「夢は外からやって来る」という言葉に関して、人間の外部に無意識のかたまりがある、と述べる。ユングの提唱した「普遍的無意識」を参照しているのだろう。志岐の「無意識への働きかけによる平和構築」という実践理論と融合させると、

2012-12-29 19:21:53
倉沢 繭樹 @mayuqix

「世界を変えるには、人類がそこから影響を受けている『無意識のかたまり』にアクセスし、働きかけることが必要だ」という命題となる。古藤博士と志岐の夢研究は、その地点において共生する。

2012-12-29 19:22:30
倉沢 繭樹 @mayuqix

さて、女教師は、悪夢ちゃん=「セルフ」とのふれあいによって、「ペルソナ」から「太母(グレートマザー)」へと変化した。そこには、夢獣=「トリックスター」の協力もあった。

2012-12-29 19:23:19
倉沢 繭樹 @mayuqix

愛(エロス)は、人と人とを結びつける統合の機能を持つ、と言われるが、その意味で、このドラマは悪夢ちゃんという「結(ゆい)」を中心とした、愛の物語であった。

2012-12-29 19:23:59
倉沢 繭樹 @mayuqix

『悪夢ちゃん スペシャル』を見たが、青春ドラマになってたな。「セルフ」である結衣子が、彩未=「太母」を理想像として発見する成長の過程を描いたわけですね。そして、悪夢ではなく希望の夢を見る、と。木村真那月の相変わらずの舌足らずなセリフ回しがとてもいい。

2014-05-02 23:09:58