2010/08/19 「ツイッター小説 お気に入りセレクト」

Takao Rival @takao_rival

#twnovel マッチでの火の付け方には三つの流派がある。外側に擦る、手元に擦る、その場で捻るの三つだ。どの流派も自らが本流であると主張して譲らず、永き年月が流れた。そして、今、二人の天才が歴史を変える。「先生、私は天下統一の話をお願いしたのですが」「や、だから点火統一の話を」

ｿﾗﾋﾄ／くうちゃん @blured_eden

ﾄﾝﾈﾙを抜けるとそこは雪国ではなく無人島だった。果実は食べ放題、砂浜は独り占め。貨幣も遠慮も罪悪感もなく、野放図に暮らすことができる。もし人恋しくなったらどうしたらいいかって？今来たﾄﾝﾈﾙを逆走すればいい。そんな場所を人は楽園と呼ぶのだろう。図々しい話だ。 #twnovel

140字物語 @shortshortshot

#twnovel ファミレスで彼女と昼メシを食べていると、近くに座っている数人の若者が大声で騒ぎ始めた。すぐに店員が来て静かにしてくれと丁寧に頼んでいる。俺はそれを見て、 「ああいう人達はなぜ自分達を客観的に見れないんだろうな」 と隣に座っている等身大の超絶美少女な彼女に言った。

影山影司 @apto117

#twnovel その民族はどこからか来て、いつの間にか墓場に住んだ。墓石に座り、共同墓地を寝床に、火葬場で飯炊きをし、土饅頭に野菜を植える。古今東西問わず、彼らを歓迎する民族は稀だ。だが誰も彼らを追い出そうとはしない。やがて墓場の上に彼らの王国が出来た。髑髏の王冠が掲げられる。

timlplp @timlplp

夏の間遊んでばかりいたキリギリス。働くことを拒んでいたが、冬になり満足な食事が出来なくなった。子供も出来てしまい、仕方ないのでアリのもとを訪ねた。憲法２５条を持ち出して生活保護と子供手当てをゲットしたキリギリスは、快適に冬を過ごし、次の夏も遊び呆けた。 #twnovel

ナマコボット @namaco_bot

エミリーは2ヶ月ぶりに熟睡した。夢に出てくる自分の亡霊に悩まされていたのだ。実在のエミリーとは対極の、日焼け顔の彼女。仲間と一緒に水面を走り、魚を跳ね上げて口でキャッチ！見上げる青い空。昨夜ようやく「それ鵜だし！」と気づいたご褒美が熟睡である。本当は魚がほしい。 #twnovel

Mark @Marknovel

夏物語は言いました。怖い話しと思い出ばかりで飽きるよ。秋物語は応えます。感傷的な話しで嫌になるね。冬物語も相槌を打ちました。暗い内容が多くて寂しいよ。春物語は違いました。希望に満ち溢れて温かい話しばかりよ。やがて春は皆に妬まれ地上から姿を消してしまいました。 #twnovel

藍　真史 @shin1960

#twnovel 首筋が汗でぐっしょり濡れている。気持ち悪さに飛び起きる。昨夜の酒といらだたしさがまだ残っているようだ。午前中の授業は休むことにする。喫茶店にいく。まだモーニングの間に合う時間。君からのメール。ゴメンナサイ、この通り入力して返信しなさい。まずはコーヒーを飲む。

泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 暑くなると屁を漏らす女であった。生まれつき体温調節が苦手で、犬が舌を出してハッハッとやるように屁で体温を逃がしていたのだ。同衾中も絶えず漏らした。別れた原因も屁であった。街で見知らぬ男と歩いていた女は、私には聞かせたことのない爆音の屁を鳴らし続けていたのだった。

江田・Ｋ【小説書き】 @koudakei

いつからか｢仕事終わりー｣とつぶやくと必ず｢お疲れ様です｣と言ってくれるフォロワーさんがいる。｢ただいま｣には｢おかえりなさい｣だし、おはおやリプも欠かさない。嬉しいな、と思いそのフォロワーさんのホームを開いて絶句。ツイートの全てが俺へのリプライだった。 #twnovel

朔（さく） @emikurumi

とりあえず優しくしてくれる人と戯れているうちに、恋しい人は遠くなってしまい。パンくずを失ってお菓子の家に辿り着いたグレーテルみたいになっている。 #twnovel

くすき　るか @yellow2_happy

夏休み、汗と泥にまみれてみんなで作った秘密基地。拙く繊細なバランスで造られたそれは必ず大人という絶対権力によって潰された。それでも毎年夏になるとお菓子と麦茶と漫画を持って、同じ山へかけて行く。いつまでも毎年そんな夏がやってくると根拠もないのに信じてた。 #twnovel

@kigurom

#twnovel その男はマンションの17階に住んでいた。男は帰宅するとき、いつも14階でエレベーターを降り、そこから階段で17階まで登っていた。男にはそうせざるを得ない理由があるのだ。それを気の毒に感じたオーナーが、エレベーター内に踏み台を設置した。ちなみに、男は９歳である。

TAG @bttftag

#twnovel 日射しに焼かれるアスファルトの上を滑るように丸い影が走った。灰と青が混じり合った空を小さな風船が飛んでいく。少年は自ら手放した風船を、ポケットに手を突っ込んで見上げている。風一つない日、少年は自らの長い長い夏休みの終わりを知る。

layback @laybacks

「パパー、あや、たこあげしたい」「あやちゃん空を見てごらん。鉄塔さんと鉄塔さんがあやとりしてるでしょ。あやもあやとり好きだよね。凧揚げすると邪魔になるからやめようね」「うん……かわいそうだし」「何が可哀想なの？」「だっててっとうさん『川』しかつくれないんでしょ」 #twnovel

まどか @madoka3699

繋がったまま、彼は指にうっすら力を込め、ゆるゆると揉み解し始めた。リズミカルな指の動きはとろけそう・・・。うっとりして焦点が合わない。ああ・・・沁み渡っていく。半開きの口のままの私を見据え、彼は口を開いた。「こうすると、きゅうりに塩がなじむからね。わかった?」 #twnovel

らし @rashi_catwillow

#twnovel カバ先生は仰った「卒業おめでとう、今日でお別れですね。皆さんのような優しい生徒は初めてでした。先生はカバですがうわなにをする」生徒たちは教壇を取り囲み隠していた歯ブラシで先生の歯を磨き始める、30人で30の歯を。ありがとうカバ先生。カバ先生の瞳に涙、あおーげばー

佐木ささめ @sakiandu

#twnovel 扉の鍵を開ける音、階段を上がる足音。子供達でも分かる気配。「パパお帰りなさ～い！」彼らは駆け足で父親を迎えに行く。私はそっと立ち上がり台所で味噌汁を温め始める。彼は子供達をあしらいながらも私の元へ真っ先にやって来る。「ただいま」私の幸福の象徴が微笑む。

@K_Ichida

#twnovel 温度銃。ねらって引き金を引くと温度がわかる。太陽や月の温度もわかる。おもしろいので歩いている人も計ってみた。すると１０人にひとりくらい、体温が１５度くらいの人がいる。人間じゃない。どうしようと思っていると声をかけられた。「いいことを教えてあげよう」知りたくない

@K_Ichida

#twnovel 「せっせっせをしよう」見知らぬ子供に声をかけられた。無邪気な顔で私を誘う。しかたなく始める。左手を合わせたとたん、子供の手が離れなくなった。どうやっても離れない。子供はくすくす笑っている。気がつくと子供はいなかった。そして私の左手首から先はなくなっていた。

トモロウ @tomolowland

#twnovel 入口付近の席では幹事の手長猿が配膳係をやっていた。その向かいではインド象があちこちの料理に鼻をのばし、その隣のツキノワグマは鮭のバター焼きを天井近くまで跳ね飛ばしていた。私の向かいの雌ライオンは虎視眈々と私の体を狙っている。私は手長猿を、静かに睨みつけていた。

ミラ @miramiran

#twnovel ベッドサイドの明かりを頼りに推理小説を読む。小さな子供が折檻される話であれば時代小説でも恋愛小説でもなんでもよかった。数年に一度、まるでのどが渇いて水を飲まずにいられなくなるみたいに、心が本を求める。もうすでに大人で、あの頃の自分より大きな子供がいるというのに。

すわぞ @suwazo

#twnovel 優等生の江口くんが突然ゾンビ化したので学校は大騒ぎになった。本人もショックなはずだが、それでも毎日登校して明るく振舞う健気な姿に、江口君の人気はむしろ上昇した。逆に「勝手にゾンビになるなんてひどい」と江口君を振った元カノの浅田さんは評判ガタ落ちである。

すわぞ @suwazo

#twnovel 突然ゾンビになってしまった江口くんは、バスケ部に顔を出さなくなった。激しい運動をすると手足がもげてしまうそうだ。代わりに最近は図書室でよく見かける。「俺がゾンビなのはもう仕方ないし。ゾンビなりにできること探そうと思って」江口くんは志望校のランクを上げたそうだ。

Makoto Karube @ker6er0s

ロボットを作る技師は「命を持たないものに意識はない」と言い、臓器ブローカーは「意識を持たないものは命ではない」と言う。牧師は「意識が消えても命は残る」と言うのだが、「命がなくても意識はある」と主張する奴にまだ出会ったことがない。たぶん、私が経験不足だからだろう。 #twnovel