とても文明の発達した時代で、人間の文明に憧れたつがいの狐がふたりで頑張って修行して人間の姿を手に入れて、憧れの高度な文明社会に生きることになるんだけど、ちょうどその頃から社会は不穏な空気に包まれる。お偉方が選民思想がどうので身分の低い人間を迫害し始める。
2013-01-26 11:53:52あるとき、汚染しつくされた地球を捨てて宇宙船で新しい星に行こうということになるんだけど、お偉方は選ばれた人間しか宇宙船に乗れないとして身分の低い人達を虐殺し始めるの。人間として生活を続けていた二匹の狐は必死に逃げ隠れして、身分の低い人間が全滅してしまっても彼らだけは生き延びた。
2013-01-26 11:54:14地球にただ二匹だけ残った狐は、人間の置いてった機械を利用したりしてずっと生き続けた。つがいは愛し合っていたから長い時間など苦ではなかった、でも、何百年か経った頃には雄の狐はろくに機械もいじれない自分がいなきゃまともに生き延びれもしない雌の狐のことを疎ましく思うようになっていた。
2013-01-26 11:54:21すっかり人間になりきってしまった雄は、昔人間が抱いたのと同じ、男尊女卑の思想を自分の中に作り上げてしまっていた。それでも雌は雄を愛し続け、ふたりはさらに生き続ける。またあるとき、汚染がやわらいだ地球に人間が帰ってきた。
2013-01-26 11:54:33だがかつて彼らが持っていた文明は既にそこになく、原始人同様の生活をしていた。雄は彼らのことを気に入り、何かと世話を焼いた。雌よりは興味を引く生き物だったから。かつての人間の歴史を早送りで再現しているうちに、ふたりの狐は人間は老いるものだということを思い出した。
2013-01-26 11:54:41人間たちと同じように老い始めた彼らは、人間の集落から少し外れたところに居を構えた。雄の狐が昔々に人間が持っていた機械たちをすこしずつ崩して、それを人間に売ることで生計を立てていた。雄は相変わらず雌を疎んでいた。
2013-01-26 11:54:56老いて、まともな思考もできなくなってきた頃のある日、雄はいつものように小さながらくたを人間に売りつけて、ねぐらに帰る途中の畑のかかしで首を吊って死んだ。死体は狐のそれであった。畑の主は腰を抜かして、化け物だと騒ぎ家から銃を持ち出し狐の死体を乱射した。
2013-01-26 11:55:08この化け物には妻がいたはずだ、そいつも化け物ならば殺さねばと畑の主は狐のねぐらに向かった。お前の主人が呼んでいるぞと言われれば、この数百年、ねぐらから一歩も出たことのない雌もそこを飛び出さずにはいられなかった。
2013-01-26 11:55:15案内された先で変わり果てた姿の雄を見て、雌は本性をあらわし狐の姿と声で泣いた。畑の主はこの化け物め、と叫んで雄にしたのと同じように雌にも銃弾を叩き込んだ。雌は雄のぶらさがったかかしに寄り添って死んだ。
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