「ピアスド・ハート・ハーツ・エブリシング」#1

アズニィの妄想から生まれた、ニンジャスレイヤー二次創作。実際安い。
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アズニィ @az21friday

ニンジャスレイヤー・イミテーションストーリーズより「ピアスド・ハート・ハーツ・エブリシング」#1

2013-01-07 00:03:14
アズニィ @az21friday

「世界は所詮!天と底!サシミとシャリ!サシミとシャリ!俺たちマグロになれはしない!スシを、世界をぶち壊せ!スシ、分離重点!スシ、分離重点!」 1

2013-01-07 00:03:44
アズニィ @az21friday

パラパラとまばらな拍手が会場を包む。「以上、ゼンザのバンド、ピアスハートによる『スシ分離重点』でした。ドーモ」DJのコールに答え、彼らは楽屋に戻って行く。 2

2013-01-07 00:04:21
アズニィ @az21friday

ここ、ネオサイタマのライブハウスでは、人気のないバンド、キャリアの浅いバンドは「ゼンザ」と呼ばれ、決して単独でライブをすることはできない厳しいルールがある。ルールを破りゼンザ程度のバンドがライブハウスを借りれば、たちどころにムラハチである。 3

2013-01-07 00:05:10
アズニィ @az21friday

彼ら「ピアスハート」も例外ではなく、大人気パンクバンド「アベ一休」のゼンザとして一曲披露したところだ。もっとも、客の反応は芳しくなかったが。「……アンタイセイ!アンタイセイ!……」盛り上がる客のコールが楽屋まで聞こえる。 4

2013-01-07 00:05:45
アズニィ @az21friday

「ブッダファック!奴等と俺ら、何が違うんだよ!」リーダーのマルダが毒づき、壁にチョップする。だがコンクリートの壁は硬く彼の手を拒む。「ブッダファック!ブッダファック!」マルダは怒りに任せ、掃除用のホウキで壁を殴打!ホウキはあえなく大破!ナムサン! 5

2013-01-07 00:06:23
アズニィ @az21friday

((意気込みだろうな))ドウジは声に出さずに思う。同じく人気のパンクバンド「ケジメド」のタケシ=サンは、アンタイセイを示すために両の中指以外をケジメしたという。そんな覚悟には彼にも、ましてや他のメンバーにもない。せいぜい口にピアスをする程度だ。 6

2013-01-07 00:07:01
アズニィ @az21friday

((第一、俺は痛いのが嫌いなんだ))唇のピアスがうずく度、彼のニューロンにこのピアスを開けた日がトラウマめいて甦る。こんな生ぬるい考えでは、アンタイセイを体現できるはずがない。わかってはいるが、それでも痛いのは嫌なのだ。 7

2013-01-07 00:07:59
アズニィ @az21friday

「とにかく、今日は終わりだ!サケ!サケ行くぞ!」「あ、俺は帰ります」「ア?アア。彼女持ちは大変だな、打ち上げも満足に参加できねぇんだもんな」「ハイ」彼には、数年前から付き合っていた彼女、カキネがいる。家で待つ彼女を置いて、酔いつぶれることは不可能であった。 8

2013-01-07 00:08:26
アズニィ @az21friday

「オカエリナサイ、ドウジ=サン」「タダイマ、カキネ=サン」家で待っていた彼女は、ドウジを暖かく迎えてくれた。パンクバンドを始めたころ、初めて自分についたファン。それがカキネだった。 10

2013-01-07 00:09:44
アズニィ @az21friday

売れないバンドマンである自分を支えるため、昼はコケシマートで働き、夜は食事を作って待っている彼女に、彼は言葉では足りないほどの感謝を覚えていた。「今日のご飯は鍋にしたの、トーフ多めだけど」 11

2013-01-07 00:10:18
アズニィ @az21friday

鍋に使われている激安四連トーフ「カルテット」は、彼らのようなマケグミの食生活を助けている。ネオサイタマを代表するトーフ企業、サカイエサンの看板商品だ。 12

2013-01-07 00:11:54
アズニィ @az21friday

「今日はコケシマートで特売でね、いつもより実際安かったの」「ありがとう、カキネ=サン。美味しいよ」味よりも、鍋の暖かさとカキネの優しさに、彼の心は満たされていった。テレビの合成笑い声につられ、二人で笑いあう。 13

2013-01-07 00:12:42
アズニィ @az21friday

こうして、彼の一日は終わる。未来は見えないが、穏やかで幸せな日々。いつかパンクバンドを止め、適当な仕事を見つけて、二人で貧しいながらも幸せに暮らそう。ドウジはそう考えていた。 14

2013-01-07 00:13:35
アズニィ @az21friday

……そう、あの日までは。 15

2013-01-07 00:14:01
アズニィ @az21friday

二ヶ月ほどたったある日、ピアスハートのベーシスト、シラギノが突如行方不明になる事件が発生した。だがネオサイタマ市警はよくある失踪と断定し、酔って海に落ちたという結論で早々に捜査を打ち切ったのだ。 17

2013-01-07 00:15:32
アズニィ @az21friday

「納得いかねェ!アイツはメンバーの中で一番サケが強かった!サケに飲まれて海に落ちるようなイディオットじゃねェぞ、シラギノ=サンは!」マルダはメンバー以外誰もいなくなった楽屋で叫ぶ。他の二人も同じ考えであった。 18

2013-01-07 00:16:11
アズニィ @az21friday

「マッポ絡みのヤバイ事件に巻き込まれちまったのかな」ドラムスのニロキが青ざめた顔で呟く。「それなら俺たちは顔を突っ込んじゃいけない。権力もカネもない俺たちなんか、一瞬で揉み消されるぜ」「……バカ!」マルダが壁を殴り、ニロキの弱音を止めさせる。 19

2013-01-07 00:16:39
アズニィ @az21friday

「俺たちは何のバンドをやってるんだ、エエッ!?アンタイセイパンクだぞ!?マッポに屈したら、もはやバンドなんか続けられるわけないだろうが!」マルダの意見も、もっともであった。アンタイセイ。つまりパンクとは体制への反抗なのだ。 20

2013-01-07 00:17:31
アズニィ @az21friday

アンタイセイを名乗る以上、アンタイセイを貫かねばならない。さらに、今回は仲間の失踪が絡んでいるのだ。「……ベーシストがいなきゃ、ピアスハートは活動できねェ。なんとしてもシラギノ=サンを見つけるぞ。たとえ死体であってもな」マルダは泣きながら熱弁した。 21

2013-01-07 00:18:22
アズニィ @az21friday

数刻後。ドウジは憂鬱な気分で家のドアを開けた。「タダイマ」家は無人であった。「カキネ=サン……?」まだバイトから帰ってきてないのだろう。彼は書き置きをしたうえで、シラギノを探すため、聞き込みに出かけた。 22

2013-01-07 00:18:59
アズニィ @az21friday

マッポ、ライブハウスの常連、店近辺の商店街……彼は精力的に聞き込んだが、有力な情報は得られなかった。無意味な調査に疲れが溜まってきた頃、ドウジの携帯IRCに着信があった。カキネからであった。 23

2013-01-07 00:19:29