クトゥルフ神話TRPGリプレイ小説"Random Jumper"Day4(後半)

タイタス・クロウ風CoCシナリオのリプレイ小説。四日目後半。
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マメ科の @abnorman_bean

クトゥルフ神話TRPGリプレイ小説"Random Jumper"Day 4-2...やっと折り返し。

2013-02-27 23:17:56
マメ科の @abnorman_bean

結局、俺たちは今夜呪文を「唱えない」事にした。あの呪文が何かのトリガーな可能性は十分にあって、何が発動するにせよ、市街地でそれが始まってしまうのはよくないだろうというのと、度重なる頭痛は精神衛生上よろしくないからだ。だ。

2013-02-27 23:21:13
マメ科の @abnorman_bean

駆け込みで美術館の職員らしき人を引っぱって訪ねてみたが、「一般公開していない資料は見せられない」の一点張りだった。ただの高校生の説得力ではこれが限界か。閉館後、周囲を巡り、見取り図を書く事にする

2013-02-27 23:23:02
マメ科の @abnorman_bean

目的の絵が眠る地下倉庫までは、基本的に一本道で行けるらしい。市レベルで展示されているものなんて知れているから、警備が厳重ということもなく、上手いタイミングで忍び込めば、なんとかなりそうだ。

2013-02-27 23:25:05
マメ科の @abnorman_bean

そして、倉庫の入り口には、おそらくそれなりには厳重に鍵が掛かった扉。一端倉庫に入ってしまえば、それで行き止まり。

2013-02-27 23:26:59
マメ科の @abnorman_bean

何かトラブルに巻き込まれたら、一巻の終わりだが、それは運を天に任せるしかないだろう。深夜のタイミングを見はからって、俺たちは地下倉庫へといざなう階段室を降りて行った。

2013-02-27 23:28:57
マメ科の @abnorman_bean

地下まで降り切ると、奥に見える倉庫入り口の扉まで少し歩く事になるが、かすかに音がするようで気になる。耳を澄ます。これは....水が流れる音...?右手側、壁を隔てた向こう側には、小川かなにかがあるらしい。美術品は湿気を嫌うんじゃないのか?

2013-02-27 23:32:01
マメ科の @abnorman_bean

だとしたら、ここは倉庫というより、廃棄場のようなところで、俺たちの目的の絵も、安置されているというより、遺棄されている、といったところか?

2013-02-27 23:33:04
マメ科の @abnorman_bean

扉の前に立った。思わず、笑みがこぼれるーそういう反射的な反応を、ミドリはひどく嫌っていたーこれはひどく簡単な奴だ。認証が必要だったりする奴じゃない。それで、ここが全うな絵画の保管場所じゃない可能性も増したが、兎に角、俺は懐から、先がちょっとだけ曲がった金属製の棒を取り出した...

2013-02-27 23:37:07
マメ科の @abnorman_bean

...扉の中は想像通りの空間だった、棚に雑然と並んだ物品は、その棚が傾いている事も合わせて、ここが保管庫では無い事を端的に示していた。業務用のゴミを廃棄する前の一時保管スペースと言った感じだ。右手に扉が目につく。方向感覚に間違えがなければ、さっきの水の流れの方に繋がっているはずだ

2013-02-27 23:41:03
マメ科の @abnorman_bean

そして今、目の前、十数歩ほど歩めば到達するところに、真っ赤な布が掛けてある、背丈ほどの高さの長方形の物体。これが目的の絵画か?慎重に、一歩一歩近づく。何が描いてあるのか?盗み見るように目を凝らす。布は分厚く、透かして見る事はできない。ついに赤い布に、触れられる距離まで来た時...

2013-02-27 23:47:04
マメ科の @abnorman_bean

「何をしている!?」咎める声が、扉のほうから。慌てて振り返る。しまった!内側から鍵をするのを忘れていた。人影がゆっくり近づいて来、さらに咎める。「深夜にこんな所に忍び込んで、人様のものを盗ろうとしているなら感心しないな」俺の面前まで歩み寄って来てそう告げたのは、あの少年だった。

2013-02-27 23:51:31
マメ科の @abnorman_bean

「何を。珍しい絵があるっていうのに見せてくれないから、忍び込んで見てみてやろうとしたまでさ」とっさに言い繕ってしまった。「へえ、ならそれでもいいけど」こちらの顔が見えていないのか、少年は回り込もうとする「正確を期するなら、これはボクに属するものだよ」言うと彼はハッという顔をした。

2013-02-27 23:59:54
マメ科の @abnorman_bean

「君は...昨日の...?まさか...そんな偶然...あり得ない...」一体何を驚いているというのか?もうこれで4日も彼を見ているのだ。「そんな事より、これ、何が描いてあるんだ?」そしてお前は何をしにここに来た?それが分かれば、もしかしたら事件の謎が分かるかもしれない。

2013-02-28 00:03:59
マメ科の @abnorman_bean

「これはただ、ボクの肖像画だよ。昔描いてもらったんだ」リチャード・ピックマンか?「良く知っているね。あぁ、リチャード!今から思えば彼も可哀想な人だった!」それはいつの事だ?「昨日も言ったよね、人間の「いつ」だの「どこで」だの「どうした」だのといった事は、どうでもいい事なんだよ」

2013-02-28 00:08:09
マメ科の @abnorman_bean

その言い方は相変わらず癇に障った。俺たちはこの街で起きている事件を解決しようと必死なんだ。それに総始郎、お前だってその「どうでもいい」人間の一部じゃないのか?「そうまで言うなら、見たら良い。このボクと変わらないものが描いてあるし、作成年月のサインもリチャードは打ったはずだ」

2013-02-28 00:12:08
マメ科の @abnorman_bean

「ボクは、ここに絵があるって分かって、ただただ懐かしくって、ただそれだけで見に来たんだ。そしたらたまたま君がここに居た。本当にただそれだけの事。だから何か調べに来たんだったら、一緒に見たら良い。何も特別な事は、描いていないってすぐに分かる」

2013-02-28 00:16:41
マメ科の @abnorman_bean

そこまで言われて踏ん切りがついた。あと腕一本の距離だった、赤い布をつかんで一気に引き下げる。そこに描かれていたのは...「なんだ、これは...!!」総始朗が驚愕の声を上げる。今までの超然とした態度が嘘のように。そして私もまた、暗がりに浮かぶ、その絵を見て、アッと小さな悲鳴を...

2013-02-28 00:18:23
マメ科の @abnorman_bean

少年は描かれていた。正確には、かつて、少年は描かれていた。かつて少年だったものの顔らしき部位には、深い深い皺が幾重にも刻まれ、画面全体はずたずたに引き裂かれ圧搾と無理な伸張を繰り返したが如く、地獄めいた咆哮を上げているようだった。そして胸元にぽっかりと開いた「穴」。

2013-02-28 00:24:21
マメ科の @abnorman_bean

肖像画全体が「穴」に向かって引き込まれ、引き裂かれて行くように見え、赤い筋が何本も絵の至る所から噴出しては「穴」に吸い込まれて行くようにも見える。必死にこらえる。だが、何度こらえても、目をやるたび、同じ現象が視神経を通り越して脳に響くかのようだ。

2013-02-28 00:31:52
マメ科の @abnorman_bean

慌てて布で絵に覆いをする。この布の赤も、もしかして絵の中の血の色だろうか、そう思うとまた冥い思いが巡る。だが、私よりも彼の方が深刻なようだ。「そんな、どうしてだリチャード」「絵を描いて、仮初めに時間を止める。それだけだったはず」「していない、ボクは何一つ悪徳なぞしていない...」

2013-02-28 00:36:42
マメ科の @abnorman_bean

総始郎は、うずくまったまま、暫く動こうとしなかった。私も必死に、今見た絵、それが巻き起こした胸のむかつきを抑えようとする。少し間を置いて、彼が立ち上がった。一体今のは何?この絵は一体何なの?私が問い、彼が答えようとした、その時だった。

2013-02-28 00:40:40
マメ科の @abnorman_bean

突如、地震が起きたかと思い、慌てて身を屈めるが、それは地震では無かった。地「割れ」だ。あろう事か、固いコンクリートで覆われているはずの床が真一文字に裂け、そこから徐々に、私たちの方に這い出して来たものは、名状し難くも冒涜的な速度で畝る、幾本もの触手、だった。

2013-02-28 00:47:59
マメ科の @abnorman_bean

私は思わず嘔吐した。だが総始朗は先ほどまでとは打って変わって、平然とした表情に戻り、呟いた。「またか...この状況でこれは...まずいな」逃げよう。彼が私に手をかける。でもどうやって?入って来た扉は、この見るも総毛立つモノに塞がれているし、

2013-02-28 00:50:58
マメ科の @abnorman_bean

もうひとつの扉の向こうは水が流れているだけで、何があるか分からない。「ボク一人だったらどうという事はないんだけど、君を無事に、となると厄介だ」いったい眼前の、口に出すのもはばかられるモノは一体何?「何なのかは分からないけれど」「これはボクの事を追って来ている。ずっと」

2013-02-28 00:54:53