為末大さんのつぶやきまとめ【不条理というもの】について

爲末大 Dai Tamesue　熟達論発売中 @daijapan

おはようございます。今日は【不条理というもの】について

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ちょうど１年ちょっと前だろうか、東日本大震災で母親を亡くした陸上部の子と話す機会があった。彼は少しずつ震災直後の出来事を話し、こっそり家に帰って母親が亡くなったと知った後の事をこう表現していた。”今もなんで僕の母親だったのかがわからないんです”

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物事には因果があり、努力や苦労は報われるとスポーツの世界では言われるけれど、災害で犠牲になった人を前にして僕は因果が何も無いと感じた。犠牲者とそうではない人の間には特に理由がない。何か理由があって犠牲になったわけではなく、ただそうだったとしか言えない。

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努力が全てだと言われて僕は育っていたから、僕に敗れ去っていった選手に対してどこか努力が足りなかったんだろうという目で見ていた。でも、引退近くになり自分の実力が落ちていく中で、努力量と実力は比例しないのを知った。スポーツはまず才能を持って生まれないとステージにすらのらない。

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僕よりも努力した選手も一生懸命だった選手もいただろう。でも、そういう選手が才能を持ち合わせているとは限らない。日々を一生懸命に生きた漁師さんが津波で亡くなった例もあるだろう。そこに理由は無く、ひたすらに不条理なものを僕は感じる。

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そもそもこの勝利が自分で作り上げたものだけでないのなら、自分は、自分という役割は何をすべきなんだろうか。引退していったライバル達がもし僕ならどうしただろうか。現役の最後はもう自分の身体が自分のものだけではない感覚で競技を続けていた。

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【終わり】自分が自分である事に理由は無く、物事にも因果は無く、真面目な人に災害が降り掛かり、豊かな所に生まれ平穏無事に暮らしている人もいる。世の中は不条理で、それでも人は生きていくしか無い。