ザイバツ・ヤング・チーム #6
ハヤイ!ウィッカーマンは鳥籠牢獄の鎖をチョップで切断し、垂直に落下!だがダークニンジャは更なる斥力を己のカラテ生成物たるローブによって生み出し、真下へ跳んでこれを追う!ウィッカーマンは落下する鳥籠の上で身を一瞬沈め、そして、迎撃のサマーソルト・キックを繰り出す!「イヤーッ!」44
2013-03-15 23:42:38ダークニンジャの姿が揺らいだ。サマーソルトキックがダークニンジャを捉える事は無かった。「キリステ」彼は床に片膝をつくように着地した。背後で今の鳥籠牢獄が床に叩き付けられ損壊した。「ゴーメン」ニンジャソードの刃が粉々に砕けた。ウィッカーマンが空中対角線上で真っ二つに裂けた。45
2013-03-15 23:49:44「これがデス・キリだ。ゴグウ・ニンジャ=サン」ダークニンジャはウィッカーマンを振り仰ぎ、言い放つ。「もはやこの世にお前の居場所は無い。お前の重ねた歳月の一切が無駄だ。呪われよ」「サヨ!ナラ!」ウィッカーマンは爆発四散した。 46
2013-03-15 23:52:59と同時に、満身創痍のミラーシェードを数の力で追い込みにかけていた有象無象の歪み者達も、操り主を失い、腐肉じみて崩れ、床に堆積した。彼のイクサは荼毘をハゲタカから守るモンクめいて悲壮であった。ドモボーイは動かない。ミラーシェードももはや立ってはおられず、その傍らに膝をついた。47
2013-03-16 00:00:31ダークニンジャは台座の墨壷の蓋を外し、中をあらためた。緋色の光を放つ奇怪な泥濘。彼は眉根を寄せ、墨壷を台座から剥がし取った。緋色の光が失せた。彼は部下のもとへ歩いて行く。「奴がカツ・ワンソーの帰還を夢見、モータルやニンジャの命から精製しようとした呪物が入っている」48
2013-03-16 00:20:28「此奴は助からぬかと」ミラーシェードはドモボーイを示して言った。ミラーシェード自身もまた、そうして倒れずにいるのがやっとの状態である。ダークニンジャは墨壷の蓋を外し、中に収められた緋色の泥濘を指で掬い取った。「尋常の物でないが、我らには不要だ。あくまで壷そのものに用がある」 49
2013-03-16 00:22:55「それは」「すぐに呪物は乾き、力を失う。ここで使え」ダークニンジャはドモボーイのメンポを剥がし、泥濘を含ませた。数拍の間を置き、両腕を失ったニンジャは痙攣を始めた。「アバーッ!」覚醒し、床をのたうち回る。ミラーシェードは自らその泥濘を壷から取り、同様に嚥下した。彼は呻いた。50
2013-03-16 00:32:22ダークニンジャは床で苦悶するドモボーイを見下ろし、ミラーシェードに言った。「お前に余力があれば、連れて帰るのもよかろう」そして墨壷を差し出す。「気を抜くな。墨壷は必ず持ち帰れ」ミラーシェードは頷き、懐へしまい込んだ。「クアースは!クアース=サンは!」ドモボーイが叫んだ。 51
2013-03-16 00:38:24「クアース=サンは死んだのですか」「死んだ」ダークニンジャは答えた。「腕輪はジツではない。専用のLAN回線をネクサス=サンに繋ぐためのものだ。彼を経由し、キョート城と腕輪それぞれが繋がっている。ニンジャの肉体……城に縛られたニンジャの肉体を消費せねば、おれは現世に立てぬ」 52
2013-03-16 00:48:05「俺、俺は……」ドモボーイが呻いた。「お前達はよくやった」ダークニンジャはそれ以上説明をしなかった。「気を抜くな」彼はミラーシェードにもう一度言った。彼の姿は0と1のノイズに変換され、数秒後には跡形も無く消滅した。当然、クアースの死体がそのあとに現れる事も無かった。53
2013-03-16 00:52:37「畜生」ドモボーイは歯を食いしばった。ミラーシェードは感情の読み取れぬ目で己のアプレンティスを見下ろした。ドモボーイは言った。「俺にもよくわからねえんです。ただ悔しいんだ。わからねえけどさ……俺……」「その様子ならば、お前をここに捨てずにすみそうだな」ミラーシェードは言った。54
2013-03-16 00:58:16「あのさ……マスター・ミラーシェード=サン」ドモボーイは言った。「もう一つだけ訊きたいんだ……ミラーシェード=サンが、どうしてここに居たのかッて……俺達を追って来たんですか?それとも先に何か調べに来て?」「……」「この城の実際のとこを、マスターや、上の人らは、その……」55
2013-03-16 01:01:33「お前はどう思う」ミラーシェードは逆に尋ねた。ドモボーイは答えを探した。城に棲む恐るべきニンジャ。そして墨壷。ダークニンジャの肉体化。「織り込んだ計画だとすれば、どうする。お前らを騙した形だとすれば。恨むか」「……」ドモボーイは顔をしかめた。「わからねえです。わからねえよ」56
2013-03-16 01:08:04「クエストは成功裏に終わった」ミラーシェードは言った。「少なくともそれは真実だ。わかるか」「……真実」「お前を担いで帰る」「起こしてください。歩けるか、やってみますよ。荷物みたいでみっともねえからよ」「よかろう」 57
2013-03-16 01:13:30「少なくともスパルトイの奴よりは、ずっと役に立てると思うんですよ、俺は」「それだけ口がきけるなら安心だな」「あの女……アイツさあ、マスター……」ドモボーイは己を強いて、他愛のない話を絶え間なく持ち出した。彼は必死に話し続けた。そうするしかなかった。 58
2013-03-16 01:18:40「握って、開く。そう」外科医は大げさな身振りを交えてドモボーイに指示した。「もうしっかり繋がった」「本当か、オイッ!カラテがなまってしょうがねえ。イクサだ!」「せっかちはイケナイです!慣らしが要ります」「アアッ?」「アイエエエ!わかってくださいよ!大変な重傷だったんです!」 60
2013-03-16 01:23:31……廊下に出たドモボーイはカーボンフスマを蹴りつけ、足早に廊下を歩いた。幾つかの渡り廊下を経て、螺旋状の階段が外周沿いに存在する円柱状の竪穴へ。底の広間には奇怪な魔法陣じみた図形が描かれ、襤褸をまとったニンジャがしゃがみ込む。ネクサスだ。61
2013-03-16 01:25:36その傍には、恐らくたった今アンカーから帰還したばかりであろうディミヌエンドが、肩で息をしながら佇んでいる。待つのはスパルトイか。ニーズヘグか。別の誰かか。螺旋階段を降り切ったドモボーイは、そのまま奥のアーチ扉へ向かう。ディミヌエンドは顔を上げ、ドモボーイを見る。 62
2013-03-16 01:27:42その身体のあちこちに、大小の新しい傷。ドモボーイは歩く速度を緩めず、通り過ぎる。「……ドーモ」ディミヌエンドが会釈した。「ドーモ」ドモボーイは会釈を返した。「腕」ディミヌエンドが呟いた。ドモボーイは鼻を鳴らした。「ツバつけて直したぜ」「そうね」ディミヌエンドは少し笑った。 63
2013-03-16 01:30:19二人はそれ以上の言葉をかわさず、すれ違った。軋むアーチ扉を開け、ドモボーイは次の廊下へエントリーした。 64
2013-03-16 01:32:21