こはな さばいばる

こはさばまとめです。 自身の旅に同行者を連れてはならない縛りを設けつつ、まったりとサバイバルしてます。
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御簾園 小花

かく@TRPG @enoniiii

【ゾンサバ】御簾園 小花 (みすその こはな):ゾンビから逃げ惑う少女。前向きに生きていきたい。 #こはさば http://t.co/PnaguFiu5t

2013-03-04 01:59:46
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かく@TRPG @enoniiii

【ゾンサバ】 ※少しですが流血注意 小花イメージイラスト。過去について猛烈なネタバレです。 #こはさば http://t.co/FYZdiXYG0d

2013-03-04 02:01:33
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サバイバル初日

かく@TRPG @enoniiii

1日目:今日の御簾園小花:【アクシデント】同行者が噛まれゾンビ化、戦うしかない! 【同行者】がいる場合は1人失って6のダメージ。いない場合はあなたが襲われ9のダメージ。いずれにせよ食糧:-2 #こはさば いきなり嫌な診断を引いたなあ…

2013-03-04 02:08:11

走る、走る。

大小様々な影が生き物ではありえないような動きをしながら、ゆらゆらと私を追ってくる。空も地面もお布団もご飯もお母さんもお父さんも、全てがゆらゆらとくゆる真っ暗闇の中へ溶けていく。

お父さんとお母さんと一緒に暮らしたシェルターの隅にある掃除用具入れに駆け込み、影に気付かれないように静かに息を潜め、隙間から外の様子を伺う。

ぐちゃ、ぐちゃ、食べているのか吐いているのかわからないような嫌な音が耳に届く。両手で耳を痛くなるほどぎゅっと塞いで音を遮断するけれど、視界はまるで誰かに瞼を引っ張られているみたいになって目を背けることができない。

ふと、お母さんの上でひしめいていた影が動きを止めて。
ゆっくりとこちらを振り向く。

影と、目が合った。

「―――――っ!」

がばっと音がしそうなくらい大袈裟に起き上がる。絶叫しそうになる口をどうにか手を使って抑え付けた。さっきのはただの夢、私は生きてる、大丈夫。大きく息を吸い込み、吐き出すことを繰り返す。昨日、体を痛めないよう苦し紛れにひいておいた煤けたカーテンは面白いくらいに汗まみれになっていた。

「もう何度目かな…。」

手を開いて閉じて、足が動くかを確認して…うん、五体満足。今日もなんとか生き長らえれていることを神様に感謝して、のびをひとつ。
割れた窓に映る自分の顔はお世辞にも健康とはいえない色合いだけど、せめて他の人間と会ったときに笑顔を忘れてちゃいけないから、ガラスに向かってにこっと予行練習をしておく。

ずいぶん長くなったここでの生活の中で得た知恵その一。
『ひとところに留まらないこと』
外には危険しかないけれど、中に留まって一人でじっとしているのも十分危険。

というわけで、今日も生存者が集まる場所を探して東へ西へ。ベーグルを配ってもらったり、お風呂に入ってすっきりしたり、お風呂炊きを手伝ったり!他にもいろんな人とお話ができた。楽しくて自分の状況を忘れられるこのひとときが大好きで、やっぱり外に出てよかったって思うこの瞬間がもっと好き。
楽しい時間はすぐに過ぎ去っていく。日が完全に傾く前に寝床探しを始めることにして、皆さんに「さようなら」と「またね」を告げていく。他の人達に何度か同行するよう誘われたけれど、私にはどうしてもついていくわけにはいかない理由がある。困ったように笑って、「自分は大丈夫です、またあなた方と明日出会えますように」と伝えて、未練を断ち切るようにその場を後にした。

どれだけ長くここで生活していても慣れない夜の恐怖に追われながら、足早にねぐらを探す。生き物がいないんじゃないかってくらい静かになるこの街の夜は、生きていない物がたくさん徘徊してる。昨日ねぐらに使った建物は倒壊が進んでいて、明らかに何かが徘徊した跡が残っていた。こういうときは大人しく違うところに居を構えるべきっていうのが、二つ目の生きるコツ。

物音を立てないよう、できるだけ静かに路地裏を歩く。効くようになった夜目を凝らしながら様々な建物を渡り歩くけれど、今日はなかなかピンとくる物件が見当たらなかった。どんどん世界が黒に侵食されていく風景に、ふと、あの悪夢が頭を過ぎった。途端、さっきまでの少しのどきどきとは比べ物にならないほど気が張り詰めてきて鼓動の音がやかましくなる。鳥が羽ばたく小さな物音にすらビクッと体を震わせ、とっさに動いたせいで足元の木材を踏み鳴らしてしまった。バキッと鳴った音に「きゃあっ!」と悲鳴をあげた。

がさっ

私の声に何かが反応した。

硬直する足。
過ぎる記憶。
いやな予感。

逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ!
逃げることで頭がいっぱいになる。
足を動かすことまで思考が回らなくて、
どうすれば逃げられるのかわからない。
見開いた目の端から涙が零れる

途端、背後から私の肩に何かが触れた。

「大丈夫かい?」

それは優しそうな男性の声だった。

安堵で思わず破顔し、硬直する身体をどうにか動かして目の端を拭った。「大丈夫です、少し驚いただけだから。」とぎこちなく笑って背後の男性に顔を向けた。そしてすぐにその人から感じる人間ではないだろう雰囲気(これはある時期から外したことがない)を感じ取り、再度硬直した。

できるだけ警戒されないよう、口元には笑みを貼り付ける。

「あの、もしかして噛まれました?」
「えっ?…なんのこと?」

男性の口元がきゅっとしまるところを見逃さなかった。

「早く治療薬を探された方がいいですよ。」
「…確かに、少しだけ指をやられたよ。でも掠る程度だからさ。」

男性の手をぎゅっと両手で握り、真剣な目で諭す。

「お願いします。治療薬を探してください。」

じっと見つめると、やがて男性は「わ、わかったよ…。」と頷いてくれた。ほっと息を吐いて、男性の手を離す。よかった。この人にご家族がいるなら、絶対に治してもらわなくちゃ。

もう今日は遅いから、と渋る私を男性は自分の仲間と使っているというねぐらまで案内してくれた。「他の人間と長居はしたくないけれど、もう夜明けまでそう時間はないし…起きていればいいかな」と考えながら、着いたねぐらの入口は、まるで戦闘が起こった後のような荒れ方だった。青ざめながらねぐらに駆け込んでいく男性の後を追う。ざわざわとしたいやな予感が当たらないで欲しいけれど…多分、当たると思う。

「嘘……だろ…?」

そこに広がっていたのは、恐らく男性の子供と、それを貪る奥さんだったなにか。くずおれる男性を見て、もうこの人は駄目だと直感した。奥さんみたいなものが男性に這いずるように近寄り、とれかけた手で男性の頬をさする。私の記憶の中の最後の男性は、きっと笑っていたように思う。

もうあの建物からずいぶん離れたけれど、きっとあの家族は3人揃ってソンビになれたんだろうなって、朝日が昇るのを見ながら思った。


精神的ダメージと駆け回ったダメージで9ダメ。

こはさば 2日目~

かく@TRPG @enoniiii

@ZS_tl 2日目:今日の御簾園小花:【戦闘】暴徒の集団が、あなたの食糧をすべて奪おうと襲い掛かってきた! 「現在食糧の1割(端数切り捨て)+2」点のダメージ! 食糧:-2(戦闘後に計算) #こはさば

2013-03-05 02:07:34
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@ZS_tl (wolfram8216)さんが発見した川と、(sasugaotojya)さんが発見した缶詰め(食料庫)を少し頂きました。ありがとうございます! #ゾンサバenokiiii #こはさば

2013-03-06 03:31:02

こはさば -哉人くん編-

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@ZS_tl 3日目:今日の御簾園小花:【同行者】足と目を悪くした子供(アイテム扱い。だが、有利な効果は何もない)を発見。連れて行くなら好きにせよ。足手まといと分かってもなお連れて行くなら、だが。食糧:-2 #こはさば 「病院に行こうね。」

2013-03-06 11:43:53
かく@TRPG @enoniiii

@ZS_tl 同行者禁止縛りなので連れていけませんが、病院までおんぶして行きます。休憩を頻繁に挟みつつ。 #こはさば

2013-03-06 11:45:22
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@ZS_tl 食料3減らして小花が病院警備。 #病院警備 #こはさば 「すみません、名簿にこの子のご家族がいないか確認させて下さい。(ぜえぜえ)」「お姉ちゃん、つかれたの?」「あはは、運動不足かな…」

2013-03-06 11:47:36
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@ZS_tl しろねこ(pulsar29)さんの梅見(食料庫)と霧崎夢幻(Dr_Kirisaki)さんの栄養ドリンク(川)にお邪魔しました。ありがとうございます! #こはさば #ゾンサバenokiiii

2013-03-06 12:21:53
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@ZS_tl 4日目:今日の御簾園小花:【休息】安全そうなホテルを発見。今日はゾンビに襲われることもなく、ゆっくり休めそうだ・・・。HP:+5 食糧:-3 #こはさば

2013-03-07 00:12:51
かく@TRPG @enoniiii

5日目:今日の御簾園小花:【休息】瓦礫の上で朝食。短時間で効率的に休めた。HP:+4、食糧:-1。今日は調子がいい、2回目の行動が可能だ(名前の後に「2」をつけて診断。同様の効果とは重ならない) #こはさば 小花「うーんっ!いい天気!」

2013-03-08 01:12:11
かく@TRPG @enoniiii

5日目:今日の御簾園小花2:【探索】行き倒れかけている生存者を助け、隠れ家まで無事送り届けた。お礼に治療薬(ゾンビ化しつつある者を元に戻す。使い捨て)か食糧6のどちらかを貰える。 #こはさば 小花「ありがとう。困っている人のために役立てるね。」

2013-03-08 01:13:21
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@ZS_tl 小花がHP-3して警備。 #病院警備 小花「今日はいいことがあったなあ…(わくわく)」 #こはさば

2013-03-08 01:48:19
かく@TRPG @enoniiii

@ZS_tl 鷹己(rl_zs)さんの執事喫茶(川)とセキイチ(thesekiichi)さんの食料庫にお邪魔しました。ありがとうございます! #ゾンサバenokiiii #こはさば

2013-03-08 12:20:35
かく@TRPG @enoniiii

6日目:今日の御簾園小花:【探索】なぜかあなたに懐いたゾンビ(アイテム扱い。毎日食糧+2。【アクシデント】が出るたび8のダメージ)、命令すれば食糧を探してくれそうだが連れて行くか? 食糧:-2 #こはさば

2013-03-09 00:18:59
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@ZS_tl ルーナ・クレシタ(Luna_Crescita)さんが見つけたきれいな川とシューニャ(Shiki_Tsubasa)さんが見つけた食料庫にお邪魔しました。ありがとうございます! #ゾンサバenokiiii #こはさば

2013-03-09 19:52:57
かく@TRPG @enoniiii

@ZS_tl 小花が食料-3して警備 #病院警備 #こはさば 今日は覇気がありません…

2013-03-09 23:19:56
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7日目:今日の御簾園小花:【戦闘】ゾンビ化した親を安らかに眠らせてほしいという少女に出会う。了承して戦うなら5のダメージ、お礼に拾った治療薬(ゾンビ化しつつある者を元に戻す。使い捨て)をくれる。 #こはさば

2013-03-10 09:36:05

※グロテスクな表現が薄く含まれます

「お母さん!お母さん!目を覚ましてよ、僕だよっ!?」

哉人くんの叫び声が頭の中で何度も何度も反響する。目の前の凄惨な光景に眩む頭を押さえながら、いつの間にか後退していた私の身体を、コンクリートの壁が退路を阻む。誰も私が現実から逃げることを許してはくれないみたいです。

3日前のこと。
私はいつものように人間が集まる明るい場所を探しながら、新しいねぐらを見つけようと散策していました。歩き慣れた路地裏を急ぎ足で進んでいると、突然足を掴まれたような違和感を覚えました。

「あ、あの」

ゾンビかと思って心臓が跳ねたけれど、言葉を話す彼は正真正銘の人間。

足の違和感、次いで届いたか細い声。その正体は瞬きをしない、目がうつろな少年でした。私の足を細い腕が巻きつくようにして止めていて、その指は不自然な方向へ曲がっています。パンパンに腫れ上がった足は、人間のそれとはとても判別できないような赤黒い斑点が浮かぶ紫色。恐らくゾンビ化しかかった足を無理に切り離そうとして、中途半端に投げ出されたのでしょう。それはあまりにもひどい有様でした。

「すみま……せん。たす…けて……くら………さ…」

助けを求める腕は細かく震えていて、見えない目で必死に私をゾンビか否か判断しているようでした。きっと折れた指は心ない人間にされたものなのだと思います。こうして助けを求めて足を掴まれた人間が驚き、少年の手を蹴りつけるなんて想像に容易い。ここは、そういう人間の心の優しさを蝕んでしまう街です。

「大丈夫だよ。私が助けてあげるからね。」

そうっと少年に声をかけて、安心してもらうために静かに頬を撫でました。少年は見えていない目から静かに涙を流しながら頷きました。

見たところ、少年は脱水症状を起こしているようだったので、きれいなお水が流れる川を探すことにしました。少年を背負ってゾンビから逃げながら川を探すのは大変だったけれど、頑張るしかありません。
運良く見つけられた川では宅急便のお兄さんがお水を配っていました。お兄さんにお礼を言って、頂いた飲料水を少年に手渡します。

「僕、哉人っていうんだ。」

川でゆっくり休み、少し元気を取り戻した少年…哉人くんを再び背負い直して、頂いた水を入れたペットボトルを持って病院へ向かおうとしていると宅急便のお兄さんが病院まで向かうお手伝いを申し出てくれました。私は水を、お兄さんは哉人くんを連れて病院まで一直線。どうにか強いゾンビに遭遇することもなく、病院まで辿り着くことができました。
病院受付で哉人くんの親御さんがいらっしゃった記録が残っていないか確認しても、名簿にそれらしい人物はありませんでした。

「小花お姉ちゃん、ここまで連れてきてくれてありがとう!」

お風呂をお借りしてさっぱりした後、お医者さんに看てもらった哉人くんは最初に会ったときよりずいぶんと元気を取り戻したようでした。

「お母さんとお父さん、早く見つかるといいね。」
「うん!お姉ちゃん、またね!」
「また会おうね、哉人くん。」

病院を出た後、崩壊を免れているホテルを見つけてゆっくり休むことができました。それから二晩が明け、晴れ渡る空の下、今日も人間の集まる場所を探します。

「たす……け……」

ものすごく既視感です。

「あの、大丈夫ですか?」

今回倒れていたのは元気そうな叔父さんでした。お腹が空いて動けなくなっていたそうなので、私の今日のご飯を渡して一緒に叔父さんの隠れ家まで同行しました。隠れ家では男性の妻である優しそうな女性が待っていて、後でお子さんに使う予定だった治療薬を頂きました。悲しいことにお子さんはもうこの世にはおられないそうです。

一応ですが、確認しておきます。

「あの…つかぬ事をお伺いします。哉人くんという少年に心当たりはありませんか?」
「哉人!?それは、髪が短い背がこれくらいの!?」

ものすごい勢いで机に両手を叩きつけ、男性が私に詰め寄ります。

「アナタ、落ち着いて下さい。その哉人くんは今どこへ?」

必死に冷静に装う奥さんも声と握り締めた拳が震えています。

「病院です。あなた方のお子さんである可能性は0ではないと思います。もしよろしければ、お連れします。」

きちんと足元を見て、落ち着いて向かいましょう。焦って道の途中でゾンビに食べられてしまっては元も子もないから。

「お母さん!お父さん!!」

哉人くんが泣きながらご両親に抱きついている光景がとても温かく心に残りました。ご両親は哉人くんの状態に少し驚いていたものの、生きて私たちの前にいることがとても嬉しいと涙を流されていました。

次の日。

「もう、しつこいよぉ……!」

襲い来るゾンビから息を切らしつつ命からがら逃げていました。
走り回って数十分。ふと気がつくと、あんなにもしつこかったゾンビたちが私を追うのをパッタリと止めています。怪しく思い、来た道を静かに戻ってみると、ゾンビにゾンビが立ち向かっていました。そんな珍しい光景を見たのは長いサバイバル生活の中でも初めてで、反乱を起こしているゾンビのことがとても気になりました。
戦いが一段落したようで、その反乱を起こしたゾンビの顔を一目見ようと足音を立てないよう慎重に近づきます。

「うそ……。」

その横顔は、確かに私のお父さんそっくりでした。

「お父さんっ!?」

いてもたってもいられず、ゾンビに近づこうとするとそのお父さんによく似たゾンビはすぐに他のゾンビを連れて何処かへ消えてしまいました。

あのお父さんに似たゾンビの話をしてみようと病院に向かう途中、哉人くんのご家族に挨拶をしようと思い立ち、彼らの隠れ家に寄り道をしました。キッチリ閉じられた扉を数度にわたって大きくノックし「小花です」と声をかけます。少ししてから「小花おねえちゃん?」と、おずおずと扉が開き、電動車椅子を腕で操る哉人くんが顔を出しました。

「こんにちは、お姉ちゃん。」
「こんにちは!哉人くん、お元気してた?」
「うん…。」

首を縦に振る哉人くんはあまり元気そうには見えません。どうしたの?としゃがんで哉人くんに目線を合わせ、ゆっくりと尋ねてみました。

「あのね、僕は元気なんだけど。お母さんとお父さんが…」

哉人くんが言うには、ご両親が食糧の配給に出掛けてから一晩も帰って来ていないそうです。哉人くんたっての希望で、この時間なら大丈夫だろうと、車椅子を押しながら二人で少しだけ家の周りを探索することにしました。

「あっ、あれ!」

一時間が経ち、そろそろお家に戻ろうかと言い始めたときのこと。哉人くんが指をさした先には赤いハンカチが落ちていました。

「お母さんのハンカチに似てるかも…」

そうつぶやく哉人くんに待っていてもらい、そうっと落ちていたハンカチを拾い上げます。周りには靴の片方が落ちていて、尋常ではない雰囲気に顔が強張りました。あのときと同じ嫌な予感。ある時を境にして、この嫌な予感はほとんど外れたことがありません。

「あとはお姉ちゃんが探しておくから、哉人くんはお家にかえろ?」

引き攣る頬を無理やり引き上げ、笑いながら話しかけます。心臓はドクンドクンと早鐘を打ち、嫌な予感が止まりません。

「いやだ!僕も探すよ。こんなの絶対に普通じゃない!僕のお母さんとお父さんだよ!?」

テコでも動かまいとする哉人くんに折れました。ならば少しだけ、と指切りで約束して少しづつ布切れや荷物が落ちている道を辿ります。

点々と転がる荷物、増えていく赤。
哉人くんは目がほとんど見えていないことがせめてもの救いです。

べちゃっ。

「…!」

踏みつけた足元の赤い水たまりはまだ新しいようで、赤の飛沫が黒いタイツに染み込みます。赤い水たまりからは何かが引きずられた跡が曲がり角の奥へ続いているようです。

ドクン、ドクン

当たらないで欲しい。こんな少年にまで試練を与えるのだとするなら、神様は酷い人に違いない。

曲がり角にゆっくりと、静かに近づきます。

ぐちゃぐちゃという、いつも耳から離れない、あの音が

影と

目 が

「お姉ちゃん!!」

哉人くんの声でハッと我にかえり、車椅子の取っ手を強く握り締めます。ぐっとぬめる足を踏み込みその場から少しでも早く遠ざかろうと震える足を無理やり動かそうとします。

「ねえ、お姉ちゃん!あれってお母さんだよね!?ねえ、お母さんどうしちゃったの!?」

哉人くんがパニックを起こすのも仕方ありません。それは、純粋で虚ろな目に映るにはあまりにも惨たらしい光景でした。

四つん這いになったゾンビが人間の首に噛み付きます。ぶちぶちと剥がれる肉片と首の骨が折れる音が合わさり、悲痛な叫び声が聞こえなくなりました。あとは静かに肉を貪る音とゆるゆると勢いをなくしていく血しぶきが水たまりに波紋を作る音が聞こえるだけ。

ゾンビになったお母さんが、自分のお父さんを食べている。
そんな事実を認められる人間の方が少ないと思います。

「哉人くん、お姉ちゃんと一緒に逃げよう?ここにお父さんたちはいなかったみたいだから。ね?」

そんな戯言が通じるわけがないとわかりながらも、哉人くんにはこれ以上この光景を見て欲しくなくて、すがるようにお願いしました。

「嫌ッ!!!」

哉人くんが私の手を払いのけ、叫びました。

「アレ、お母さんなんでしょ!?ねえ、助けてよ!お父さん!お母さんがっ!!」

彼が助けを求めているのは、私ではなくお父さんのようです。そのお父さんは今まさにお母さんの手によって顔の半分を失っていっています。

「お姉ちゃん、お母さんをたずげでぇぇぇ…」

涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃに濡らした哉人くんが私に縋りつき、私のワンピースが濡れていくのが伝わりました。

「…哉人くん、ここでお留守番できるよね?」

素手だけど、やれるだけやってみよう。
彼の求める救済とは違う、私のエゴの詰まった救済になってしまうだろうけれど。
大丈夫、私は簡単には死なないから。

近くにあった木の棒を掴み、ゾンビの背後に周り…

ぐちゃあっ

どろどろのプリンのようになった腐った脳漿を足で踏みつけました。悲しくて悲しくて、涙が止まりません。荒い息と嗚咽が混ざって体に酸素が回らず、頭がくらくらします。

目のない頭がこちらを首を傾げるように伺っています。その体から生えている腕がゆっくりと、私の喉をかき切ろうとこちらに伸びます。脳を失っても動くそれは、私の目には「助けて」と救いを求めているように見えました。

「もう大丈夫。あなたたちは他に人を殺めることもないでしょう。哉人くんのことは私に任せてください。」

喉からヒュウと風の鳴く音がしただけで、実際に声を出せたかは今となってはわかりません。

ふらつく身体に叱咤して、静かになった哉人くんを連れて私たちはその場を離れました。


3日目:今日の御簾園小花:【同行者】足と目を悪くした子供(アイテム扱い。だが、有利な効果は何もない)を発見。連れて行くなら好きにせよ。足手まといと分かってもなお連れて行くなら、だが。

4日目:今日の御簾園小花:【休息】安全そうなホテルを発見。今日はゾンビに襲われることもなく、ゆっくり休めそうだ・・・。

5日目:今日の御簾園小花:【休息】瓦礫の上で朝食。短時間で効率的に休めた。HP:+4、食糧:-1。今日は調子がいい、2回目の行動が可能だ

5日目:今日の御簾園小花2:【探索】行き倒れかけている生存者を助け、隠れ家まで無事送り届けた。お礼に治療薬(ゾンビ化しつつある者を元に戻す。使い捨て)か食糧6のどちらかを貰える。

6日目:今日の御簾園小花:【探索】なぜかあなたに懐いたゾンビ(アイテム扱い。毎日食糧+2。【アクシデント】が出るたび8のダメージ)、命令すれば食糧を探してくれそうだが連れて行くか?

7日目:今日の御簾園小花:【戦闘】ゾンビ化した親を安らかに眠らせてほしいという少女に出会う。了承して戦うなら5のダメージ、お礼に拾った治療薬(ゾンビ化しつつある者を元に戻す。使い捨て)をくれる。


(後半の少年は何故か視力が回復していました。なんとなくその後の展開は想像で補完していただけたなら。)

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