相馬主計百日草語り(2013.03．25)

相馬主計 @souma_kazue

萇弘死于蜀、藏其血三年而化為碧…。碧血碑の由来となった荘子の故事だ。忠義に殉じた志士の血は、死して地中で三年した後、碧石になるという。碧石といっても、必ずしも碧くはない。碧石の中には血玉髄、または血石と呼ばれる赤き斑点を持つ濃緑色半透明の石もあるらしい。 #相馬主計百日草語り

相馬主計 @souma_kazue

あの戦から、幾年の時が過ぎただろうか。こんな日に、何故か久々に筆をとる暇が取れた故、遅筆ではあるが、あの時のことを少しだけ思い出しつつしたためようと思う。 #相馬主計百日草語り

相馬主計 @souma_kazue

二十五日の夜が明ける前に作戦は実行される筈だった。しかし、二十一日に発進した三艦、高雄丸、回天丸、蟠龍丸は二十三日の激しい風雨、浪に襲われ、闇夜のような中で離散し、共に行方が分からなくなっていた。 #相馬主計百日草語り

相馬主計 @souma_kazue

俺は回天丸に乗り込んでいた。回天の乗組人員は艦長・甲賀源吾、海軍長官・荒井郁之助、陸軍長官・土方歳三、仏蘭西人・ニコル、軍艦・相馬主計、彰義隊及び神木隊、そして野村利三郎。 #相馬主計百日草語り

相馬主計 @souma_kazue

僅か四半刻…三十分の戦いであった。その僅かな時間の戦いの中で味方の討死十九名、手負い三十余名、俺自身も鎗疵を負った。艦長・甲賀源吾は腕と脚を撃たれながらも果敢に令を発していたが、やがて顳顬を貫かれ斃れる。誠に剛毅な人物であった。 #相馬主計百日草語り

相馬主計 @souma_kazue

敵艦に斬り込んだ者五名も皆討死した。その中に、野村利三郎の姿もあった。 #相馬主計百日草語り

相馬主計 @souma_kazue

野村は、自ら志願して回天に乗り込んだ。板橋のことがあって以来か、事ある毎に副長ある所に附き従うことを望んでいた。そして回天のみで決行となった際、海軍士官・大塚浪次郎とほぼ同時に勇躍乗り込んだが、斬り合っているうちにやがて…。 #相馬主計百日草語り

相馬主計 @souma_kazue

函館に帰還した後、野村の墓を妙信寺に建てた。また、その他の伏見以来の戦死者の為、殺生供養を行った。 #相馬主計百日草語り

相馬主計 @souma_kazue

野村の亡骸は何処かへ流れ着いたとも聞く。左様でなければ海の深く深き所まで沈んでいっただろうか。いずれにせよ、土に辿り着けてれば、と祈るばかりだ。どんな義が胸の内にあったか、その真のところを知ることはできぬが、その血は必ずや碧石になっただろうと信じている…。 #相馬主計百日草語り

相馬主計 @souma_kazue

古戦場にいるのか、俺の建てた墓の前にいるのかはわからぬ。だが、新島で罪人として暮らしていた頃も忘れた日などなかった。ただ静かに亡き友を思い、冥福を祈るばかりだ。 #相馬主計百日草語り