ギルティ・オブ・ビーイング・ニンジャ #8
「……ファラオは二挺拳銃を構え……ニンジャを蜂の巣に……かくして禍……途絶えたり……」ヤクザ天狗は消え行く意識の中で、自らが考案したモージョーを懸命に唱え続けた。セノバイトの額に開いた大穴の向こうで、病んだ月が「インガオホー」と呟いた。「サヨナラ!」セノバイトは爆発四散! 25
2013-04-06 18:51:40今宵のヤクザ天狗に、立ち上がるための力は無い。岩陰で一部始終を見ながら怯えていたラマ屋とラマは、おそるおそる彼に近づいた。「おお……おお……」ラマ屋の両目から、わけのわからぬ涙が溢れ出る。彼は跪き祈った。このサイバネまみれのヤクザは、何か聖なる存在であると……直感したのだ。 26
2013-04-06 22:16:30このヤクザ天狗という男は、テクノピューリタンから見ても、キリスト教徒から見ても、あるいは一般市民の目から見ても、目を背けられ黙殺されるべき、異形の存在であった。「感謝します……感謝します……」だがラマ屋は苦心して彼をラマの背に乗せ、丘を下ったのだ。三日後、彼は妻と再会した。 27
2013-04-06 22:22:24同じ頃、ニンジャスレイヤーはニンジャ遺跡の崩落から間一髪で脱出を果たしていた。ユカノを背負ったニンジャスレイヤーが鍾乳洞に飛び出すと、後方でひときわ大きな音が鳴り、壁画回廊は完全に崩れ去ったのだ。危険なニンジャ真実が人の目に触れることはもはや無いだろう……恐らくは、永遠に。 29
2013-04-06 22:32:38ニンジャ遺跡が埋没すると、不思議なことに、ぴたりと震動は収まった。寺院都市そのものが崩壊する気配は無かった。ユカノを背負ったニンジャスレイヤーは、しめやかに坑道を駆け抜け、断崖絶壁の松から松を跳び渡り、安全なオンセン・コテージへと向かった。まずは体勢を立て直さねばならない。 30
2013-04-06 22:43:22憔悴したドラゴン・ユカノは、己を背負うニンジャスレイヤーの耳元へと、小さな声で感謝を伝える。だがこの安堵が永遠には続かぬことも、彼女は知り得ていた。ゲコクジョウ……すなわちニンジャたちのラグナロックが近づいていることを、彼女は悟っていたからだ。 31
2013-04-06 22:51:24……それから三日間ほど、ユカノとフジキドはオンセンコテージを拠点として傷を癒しつつ、ニンジャ古代文明の痕跡を求めて周辺を探索し、また石窟寺院都市からの脱出に難儀していた奴隷たちを手助けした。ニンジャの正体を奥ゆかしく隠したまま。 32
2013-04-06 23:02:53フジキドはヤクザ天狗を探したが、彼の消息は掴めなかった。コテージに残された彼のものと思しき盗聴機セットにフジキドは強い興味を抱き、ネオサイタマへの手土産にしたという。…三日目の夜、二人のニンジャは次なるニンジャ真実探索の旅に出るため、夜霧に紛れてオンセンコテージを後にした。 32
2013-04-06 23:10:24一ヶ月後、オムラ・エンタテイメントの後継企業であるタノシイ・エンタテイメント社の武装マグロツェッペリンが禁断の台地に着陸し、ニンジャ修道会によって奴隷化されていた元オムラ社員らは無事回収される。 33
2013-04-06 23:19:53石窟寺院廃墟はタノシイ社の手で高級レジャー宿泊施設化。マサシの庵は見つからなかったので捏造された。大電波塔が立てられ麓のテクノピューリタンと武装衝突が起こったが、それはまた別の機会に語られるべき物語であろう。ただ危険なニンジャ真実がすでに封印されていた事のみが幸いであった。 34
2013-04-06 23:26:20(((カツ・ワンソー……父殺しの原罪……)))ラマの背に揺られながら神秘的な山道をゆくユカノは、タルタロスが死ぬ間際に残した不気味な言葉を反芻した。そしてフジキドに問う。「フジキド、もし全てが終わり、人間に戻れる日が来るとしたら……?それを望みますか……?」 35
2013-04-06 23:38:49「人間に……」「そうです。仮にもし、邪悪なニンジャソウルから解放される時が来るとしたら……」「ニンジャソウルを……失う…」ユカノのゼンモンドーめいた問いに、フジキドはしばし思案した。人として生きるのか、ニンジャとして生きるのか。人の世で生きるのか、ニンジャの世で生きるのか。 36
2013-04-06 23:51:28「おれはニンジャスレイヤーだ。亡き妻子のために全てのニンジャを殺すと誓った。いずれカツ・ワンソーとやらも殺す。あとは……」そこで突如、フジキドの言葉は遮られた。林冠を跳び渡る何者かが頭上からスリケンを投げ放った!二人はいつの間にか、新たなニンジャテリトリーに侵入していたのだ!37
2013-04-07 00:08:21「……全てが終わってから詳しく検討するとしよう!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは灰色の修道服を投げ捨て、赤黒のニンジャ装束を露わにすると、バイオパインの幹を蹴って高く跳躍する。岡山県は広大である。彼にはまだ見つけ出すべき多くの真実とインストラクションが残されているのだ! 38
2013-04-07 00:21:02