第三回ツイッター小説大賞 応募作品

今回はお気楽に応募。
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高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

サークルの会合へ行ったら誰もいない。暫くして女の子が一人来た。「僕らだけだね」その日は二人でデートして、やがて結婚した。「ごめんなさい。あの日貴方だけに嘘の集合場所を教えたの」40年後妻が私に謝る。「そうだったんだ。じゃあ、僕はみんなに休むようにお願いしなくても良かったんだね」

2013-04-07 22:21:09
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

テストが終わらなかった。叱られる。学校も親も嫌になり僕は家出した。着いた先は海だった。酷く寒い。暖を取るため教科書を燃やすがまだ寒い。鞄を漁るとテスト用紙があった。その時、たくさんの人が焚き火を囲んだ。「僕らのテストを返してよ、先生」採点が終わらなかったテストの束を僕は落とした。

2013-04-07 22:19:46
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

「喋らないとおしおきよ」なかなか言葉を覚えない息子をトイレに閉じ込める。泣いて謝るまで開けない。そのうち自分がイライラした時も閉じ込めるようになった。寒い夜ベランダにいると、背後で窓の閉まる音がした。振り向くと窓の向こうに息子がいた。「バイバイ、ママ」笑顔の息子の口がそう動いた。

2013-04-07 22:19:05
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

僕はいじめられっ子。友達も先生も僕を嫌う。教室を逃げ出し、飛び降りようと屋上の柵を掴む。地面の隙間からタンポポが生えていた。美しくて健気。やり直そう。自殺をやめて柵から手を離すと、タンポポに血が滴り落ちた。僕が人生をやり直しても先生と血塗れのクラスメイトは人生をやり直せないな。

2013-04-07 22:20:59
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

機内で赤ちゃんが泣き出す。母親が必死にあやすが泣き止まない。泣いてる理由が分からずムカつき舌打ちすると、僕の体は赤ちゃんに変わっていた。母親の笑顔。暖かい布団。僕は安らぎ、眠くなる。世界が暗転する。自分が消えてしまう感覚。怖い。泣き叫ぶ。僕は悟る。そうか怖くて泣いていたのか。

2013-04-07 22:20:19
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

鬼のように冷酷な男だった。そんな男から金を借りた自分を恥じた。執拗な取り立てにあい、夜中まで働き返済したが、借金は一向に減らない。妻を風俗で働かせろと男は強要してきた。私は男の首をしめた。「鬼退治ができたわね」寂しげに妻が笑う。「いや、まだ鬼はいる」自分の胸を僕は指差した。

2013-04-07 22:20:27
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

宇宙飛行士が月面から戻ると、月が地球に接近を始めた。原因不明。地球に最接近した月が赤く染まった。人類が滅亡を覚悟した瞬間、月から一筋の光が伸びた。光は一人の男を照らした。男が肯くと、男の体は月へと上った。月は元の位置に戻り、人類の危機は去った。月は宇宙飛行士に恋をしていた。

2013-04-07 22:20:35
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

祖母が大好きだった。「年は取りたくないわね」祖母が嘆く。私は医者になり長寿の研究をした。不老不死の薬が一錠できた。迷わず祖母に渡す。「ありがとう。でもいらないわ」「何で?」「年を取るのが嫌なのは周りの人が死んで自分が残されるからよ。誰も私を知らない世界で生きるのは死よりも辛いわ」

2013-04-07 22:20:51
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

「明日があるさ」困った時に父が使う口癖だ。先送りする言い方が好きになれず、父の事も嫌いだった。今しかない思いで頑張り、僕は会社を立ち上げたが、不景気で会社は倒産し、莫大な借金が残った。自殺しようと首に縄をかけた時、父からメールが届いた。「明日があるさ」その場に崩れて僕は泣いた。

2013-04-07 22:19:37
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

新人の彼に声を掛ける。私は仕事で彼に気を掛ける。彼が私に優しい笑顔をかける。誕生日。プレゼントにリボンをかける。欠ける夜の月。電話を掛ける。彼に話しかける。家のドアに鍵を掛ける。彼の許へ駆ける。駆ける。駆ける。私はこの恋に賭ける。

2013-04-07 22:20:44