W.M.M

割とマジで妄想
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いとこんにゃく @itokonn

幼少期は面倒見がよくて手間のかからない兄と、ヤンチャで無鉄砲な弟だった二人。ベンジャミンの方は実の兄だと思っていたジェレミーが養子だと知ったことにより、面倒見がいいのは遠慮からだと感じわがままが増える。しかしジェレミーは怒らず、それに付き合う。ますますそれがひどくなる

2013-05-23 22:23:54
いとこんにゃく @itokonn

ベンジャミンの方は実子である遠慮からジェレミーが対等でいてくれないことに苛立ち、ジェレミーはベンジャミンに嫌われたと思い二人の間の距離は開き、ジェレミーが故郷を離れることによりその差は決定的になる。本当の家族になることはできなかったと思いながら故郷を去るジェレミー

2013-05-23 22:25:42
いとこんにゃく @itokonn

そして、保安官となり配属されたのはまさかの故郷。長い間連絡を取れなかった養父母やベンジャミンと今なら和解できるだろうかという甘い期待を抱きながらもジェレミーは故郷の地に立つ。するとそこはかつての面影がなく愕然とするジェレミー

2013-05-23 22:27:41
いとこんにゃく @itokonn

かつて炭鉱の街として栄えていたはずなのに、その活気が一切ない。あわててジェレミーは通りすがりの人間に炭鉱のことを尋ねると、陰気そうな顔で「2年前につぶれた」と吐き捨てられる。育った家も今は人が住んでいる気配はないほどに荒れ果てており、ジェレミーはその夜安いホテルに泊まることにする

2013-05-23 22:29:38
いとこんにゃく @itokonn

そして、食事と酒のために近所の安い酒場に行くと、そこは雰囲気が悪い。アルコールと喧騒とヤニで渦巻いており、シンガーには容赦ない野次が飛ばされる。その下品さに眉を顰めながらも酒を煽るジェレミーの耳に「見つけた!」という女の声と椅子が蹴り倒される音、誰かが床に押さえつけられる音が

2013-05-23 22:32:11
いとこんにゃく @itokonn

あわててそちらを向くと、美しい女が細い腕で一人の男をねじ伏せている。男はもがくがどうやら酒に酔っているらしく、女の腕から逃げ出すことが出来ない。保安官としての初めての仕事はこれになりそうだとため息をつきながら二人の事情をききだそうと近寄るジェレミー。

2013-05-23 22:34:46
いとこんにゃく @itokonn

エマの腕の力が少し抜け、若い男がジェレミーを見上げる。そして途端に顔を大きく歪む。保安官だとわかったからかと思いつつ、女にその男を離すように言うや否や、若い男は女を跳ね除け酒場を逃げ出した。「待ちなさい!!ベンジャミン!!!」「……ベンジャミン??彼の名前はベンジャミンなのか?」

2013-05-23 22:37:45
いとこんにゃく @itokonn

「そうよ。よくも邪魔をしてくれたわね。やっと捕まえたところだったのに」そういいながら女はジェレミーを睨む。「あなたがどんな職業かは知らないけれど、裏の仕事には裏のやり方があるの。邪魔しないでちょうだい」そう言って服についた埃を払いながら出ていこうとする女の肩をジェレミーは掴んだ

2013-05-23 22:39:39
いとこんにゃく @itokonn

「君はあの男について何かしってるのか?」「知ってるも何も、この辺で知らない奴はいない賞金首よ。あんた、この街でどんな生活してるの?」「ベンジャミンが……いや、まさかそんな……」「何一人で言ってるの。今度邪魔したらタダじゃおかないから」「待ってくれ。君の名前を、教えてくれ」

2013-05-23 22:41:47
いとこんにゃく @itokonn

女の名前が不快そうに吊り上る。「あなた、本当にこの街の人間じゃないのね。大丈夫、私のことは嫌でもわかるわ」そういって女は酒場を去った

2013-05-23 22:42:57
いとこんにゃく @itokonn

その後酒場の客にいろいろ尋ねまわるジェレミー。みな半笑いであまり詳しくは教えてくれなかったが、どうやら先ほどの女は「エマ」という女優で、ベンジャミンはこの辺一帯のカジノを取り仕切っていること、アルコールの密造をしているという情報をつかむ

2013-05-23 22:45:48
いとこんにゃく @itokonn

翌日、職場にあいさつだけを済まし、仕事が終わってから気もそぞろになりながら私服に着替え、昨日聞いた賭博場へと向かうジェレミー。客として賭けを軽くしながらベンジャミンがいないかどうか探ると、奥のカウンターで酒を飲んでいるベンジャミンを見つける。

2013-05-23 22:49:19
いとこんにゃく @itokonn

喧騒をかき分け、ベンジャミンの元へ向かうジェレミーそして、ウィスキーを飲んでいるベンジャミンの腕をむんずとつかむ。「ベンジャミン」振り向いたベンジャミンの顔に驚きがまず現れ、そしてすぐさま不快な顔に変化し、腕を離そうともがく。「昨日のお役人さんが俺になんの用ですかい?」

2013-05-23 22:54:19
いとこんにゃく @itokonn

「今日は保安官として来たつもりはない。ジェレミー、君の兄としてきたんだ」「俺にはアニキなんていませんぜ。何か勘違いなさってるんじゃ?」そういいながらベンジャミンはジェレミーから顔をそらし、酒を煽る。「勘違いなわけがない。あんなにも長い時間共に過ごしたじゃないか!」

2013-05-23 22:57:10
いとこんにゃく @itokonn

「確かに、俺には幼少期共に過ごした年長の男がいた。けれど、その男はこの街を捨てて遠くに行ってしまったままだ。炭鉱がつぶれ、親父が病気で倒れても何の音沙汰もなかった男をどうして兄とよべるんですか?」ジェレミーは息をのむ。「お父さんは、倒れたって……?」

2013-05-23 22:59:56
いとこんにゃく @itokonn

「何も知らずにのうのうと生きていたお役人さんにはわからないだろうが、こっちにはこっちの事情があるんだ。お役人さんとして来てないなら、この賭場のことも今日は目をつぶって帰ってくれよ。そして、二度と、うちには立ち寄るな」

2013-05-23 23:03:09
いとこんにゃく @itokonn

言葉を失い、体の力が抜けたジェレミーの手から自分の腕を離し、子分に「送ってやりな」と一言だけかけるベンジャミン。そして、子分たちに両脇をつかまれそのまま賭場の外に放り出されるもジェレミーは呆然としたまま動けない。

2013-05-23 23:05:05
いとこんにゃく @itokonn

そこに昨日の女、エマが現れる。「ぼうっとしてどうしたの?ノースブルック保安官」「……エマ。どうして私の名前を……?」「あら、私のことわかったのね。こんな田舎じゃ情報は命よ。特に私の様な仕事をしてると」そう言いながらエマは妖艶な微笑みを浮かべジェレミーを誘う。「一杯どう?」

2013-05-23 23:07:56
いとこんにゃく @itokonn

「悪いが、そういう気分じゃないんだ」「弟に拒絶されたから?」なんでも知っているという風に微笑むエマと驚愕するジェレミー。「君はどこまでしっているんだ……」「私が知りたいと思ったところまでは。私と飲んで損はさせないわ」そういうとジェレミーの返事も聞かずにエマは手を取り、彼と酒場へ

2013-05-23 23:25:03
いとこんにゃく @itokonn

昨夜の酒場とは違い、ジャズなどが流れる雰囲気のいい酒場。エマは自分でカウンターの中へ入りお酒を注ぎ、ジェレミーに差し出す。「遠慮はいらないわ」ジェレミーは頷き、その酒を飲み干す。「いい飲みっぷり。もっといる?」ジェレミーは首をふった。疲れと衝撃のせいか、いつもより酔いがまわる

2013-05-23 23:28:42
いとこんにゃく @itokonn

「ベンジャミン・ノースブルックのことを教えてほしいの」「俺なんかより、君のほうが余程詳しいさ。俺はあいつのことを何も知らない」「そりゃあ、今のことはね。でも、昔の話なら別だわ。あなたのほうが、よっぽど詳しい」そう言いながらカウンターの横にエマは座りジェレミーを見つめた

2013-05-23 23:30:48
いとこんにゃく @itokonn

「昔か。俺がノースブルック家に引き取られ、父さんの馬車から降りてきた時、母さんに抱かれて眠る赤ん坊がいたんだ。緊張で固まっている俺にその赤ん坊は目があってにっこりとほほ笑んでくれた。それはたまたまだったのかもしれないが、緊張した幼い俺は受け入れられたと思って途端に嬉しくなった」

2013-05-23 23:33:47
いとこんにゃく @itokonn

「孤児院では同じ年頃の子どもはたくさんいるが、みんないつだれがどこに貰われるかでピリピリしていてね。だからこそ、その微笑に救われて、幼いながらにいい兄になろうって決意をしたんだ」「いい話ね」「これだけだとな。俺は勉強も弟の世話も熱心にした。両親がほめてくれるのがとにかく嬉しくて」

2013-05-23 23:38:00
いとこんにゃく @itokonn

「ベンジャミンはいたずら好きの悪がきだったが、俺のことをよく慕ってくれた。俺もベンジャミンと遊ぶことは嫌いじゃなかった。そんな時に、俺は父さんが大事にしていたトロフィーを落としてしまった。トロフィーはあっさりと壊れた。俺は罪悪感で震えながら、父さんに誤りにいった。

2013-05-23 23:43:54
いとこんにゃく @itokonn

そしたら、父さんはなんていったと思う?『ジェレミーかばわなくていい。ベンジャミンがやったんだろう?罪は自分で受けるべきだ』そして、ベンジャミンはトロフィーを壊した犯人にされた。助かったって思ったと思うか?逆だったよ。すごく惨めだった。俺は怒ってすら貰えないんだと思ったよ」

2013-05-23 23:46:08