茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第975回「権力者は、ただの人」

茂木健一郎 @kenichiromogi

しゅりんくっ！　ぷれいりーどっぐくん、おはよう！

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート９７５回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、昨日のニュースに関連して。

茂木健一郎 @kenichiromogi

けた（１）トルコの情勢が、ますます混迷を深めている。最初は首都イスタンブールの公園の木を切り倒して人工的な空間に整備する、という計画に対する反対デモだったのが、次第に現首相エルドアンの強権的な手法に対する一般的な抗議へと発展した。それに対して、エルドアンは強硬な姿勢を崩さない。

茂木健一郎 @kenichiromogi

けた（２）エルドアンは、好調のトルコ経済を背景に、二期目をつとめつつあり、本来オリンピック招致を目指す発展しつつあるトルコの象徴的リーダーであるはずだった。ところが、イスラム的価値観を重視するなどの変調ぶりで、リベラルな市民層から反発をかっている。

茂木健一郎 @kenichiromogi

けた（３）エルドアンの病理は、デモをしているごく普通の市民を、「反国家勢力」、「テロリスト」などと決めつけている点にある。あたかも、自分の意志が国家の意思であるかのようである。このような「勘違い」は、なぜ生じるのだろうか。ここには、国家という仕組みの持つ本質的脆弱性がある。

茂木健一郎 @kenichiromogi

けた（４）権力者は、なぜ権力者たり得るのか。そもそも、権力者というものは、大抵の場合、個人としての能力は大したことがないことが多い。ソクラテスのように賢くなく、宮本武蔵のような戦闘能力もなく、ボルトのように速く走れるわけでもないし、ダヴィンチのように絵がうまいわけでもない。

茂木健一郎 @kenichiromogi

けた（５）一人の生身の人間としては弱っちい権力者が権力をふるえるのは、国家という仕組みがあるから。かつては王権や独裁者がその権力を独占することが通常だったが、現代では選挙を通してリーダーを選ぶ。トルコもそうだったはずだが、時に、エルドアンのように勘違いする輩が出て来る。

茂木健一郎 @kenichiromogi

けた（６）国家というのは、一つの巨大な幻想装置である。それは、自然状態における無法を避けるために「社会契約」によって形成された、という建前になっているが、実際にはもっとわけのわからない、まさに現代のリヴァイアサン。この怪物は平気で殺人を犯し（死刑！）、戦争をし、弱きを抑圧する。

茂木健一郎 @kenichiromogi

けた（７）そのリヴァイアサンたる国家は、本来どんな個人にも帰着しないはずだが、中核的組織である公務員はしばしば勘違いし、（選挙によって選ばれたはずの）権力者もまた、怪物の権勢がもともと自分のものだったと誤認する。結果何がおきるか。愚か者が偽りの力を振りかざす。今のトルコのように。

茂木健一郎 @kenichiromogi

けた（８）国家という存在を懐疑することは、健全な知にとって当然のことである。それは、無政府主義とは違うし、グローバリズムとも違う。もともと無力な人間が、国家というリヴァイアサンと結託することで大きな力をふるう、その虚飾の構造に目を向けなければ、知などあり得ないからだ。

茂木健一郎 @kenichiromogi

けた（９）権力者は、ただの人。裸の王様である。最良の指導者は、自分がただの人だと知って、それでもなお謙虚に国を導こうとする。最悪の権力者は、自分が愚鈍であることを覆い隠そうとするために、リヴァイアサンの威を借りる。愚鈍な権力者は、後を絶たない。自分がただの人とは認めたくないのだ。

茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート９７５回「権力者は、ただの人」でした。

茂木健一郎 @kenichiromogi

だったね、ごめん。まとめの人、これも入れておいてください！ @HirotoMishina @kenichiromogi 首都はアンカラですよね