逃げられません

森月 6/16ぐだぐだまとめ
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さの @saxno_

試合会場でとんでもなく好みの子を見つけちゃった伊月さん。うっかりステンダップなマイソウルをひと気の無いトイレに鎮めにいきますね。もともと性癖が人と外れた伊月さん、遠く離れた喧騒を耳にしながら誰か来るかもと個室の外で一人男のゴールデンタイム。そうですそこに現れたのがァーー森山由孝ッ

2013-06-16 03:53:28
さの @saxno_

自慰に夢中で気がつかない伊月さんの後ろからそーっと近づく森山さん。見慣れたジャージに髪の毛、身長、第一印象だって覚えてる。途端にぞわりと背筋が震える。あんなド真面目なPGなんてやってる初対面でも分かるあのしっかり者が、こんな人気もクソも無いとこで、こんなこと。

2013-06-16 03:56:41
さの @saxno_

確かに自慰は、男の基礎代謝の一つだ。咎めはしない。でも、こんなとこで、わざわざ「人に見つかるかもしれない」状況下ーなるほどそういう壁なのか、ふむと一つ相槌を打ち、こちらに気付いてすらいない彼の真後ろに立つ。 「いつも、こういうところでしてるの?」 彼の汗が冷や汗に変わった。

2013-06-16 04:00:36
さの @saxno_

「…あ、…海、常、……の、」「森山由孝。一応君と同じ五番なんだけど覚えてる?最近みんな黄瀬しか見てなくてさ。」ポケットをまさぐりながら、彼の辛そうなそれを見る。「……あ、…あの、 黙ってて、くれます、よね」命乞いをするような目で、四センチ下から見上げてくる。

2013-06-16 04:04:32
さの @saxno_

いくら同じ男だとは言えこのキューティクルのかかった見た目が綺麗な髪の毛と近付くと分かるシャンプーの匂い。整った顔と下手したら女よりも美人な通った鼻。こっちの人間だったら間違いなく勃ってるな、と直感的に思った。この加虐心をそそられる顔を向けられて素直にイエスと首を縦に降るだろうか。

2013-06-16 04:07:59
さの @saxno_

俺は笑う。「個室、行こっか?」彼の目から希望の光がなくなっていくのが手にとって見える。鳥肌が立った。 「お願いですから…あいつらだけにはバレたくないんです お願いします お金は無いけど何でもします、から、」こちらに目を合わさずに彼は言う。…うわぁ俺今物凄い悪役じゃん。

2013-06-16 08:53:47
さの @saxno_

心底後悔しているようで、冷や汗で塗れた彼の顔を見やる。ぎゅうと強く握ったズボンは皺がどんどん増えていく。 「ーこれでもさ、そこそこ人を見る目はあるつもりなんだけど。いつも仲間の後ろで笑ってあまり前に出たがらないように見えたけど、ほんとは自己顕示欲とか絶対強いでしょ?…伊月、君。

2013-06-16 09:00:37
さの @saxno_

あとこんな人がいつ来るかもわかんないとこで興奮してたみたいだし、普通じゃないよなー。…ねぇ、やっぱり何時もの真面目な"伊月くん"は皆と一緒に居るために作ってる君なの?」思ってることをそのまま言う。さっきまであんなに頑なに目を合わすことから逃げて居た彼は細くて自分と似た目を

2013-06-16 09:08:53
さの @saxno_

「別に真面目じゃないのが悪いって言ってんじゃなくて、君のそのほんとのカオが知りたいだけ。鏡見てくれば?今凄い顔してるよ。」実は黄瀬から誠凛の人の話はだいたい聞いて居た。黒子…とお互い喋っていたらしい。"すごく真面目で優しくて、たまに叱ってくれて、でもダジャレが好きな、良い先輩"

2013-06-16 09:18:32
さの @saxno_

…そんなことを、言っていた気がする。ダジャレって、とその当時は苦笑を交えていた気がしたが今この状況下で頼んだらなんか作ってくれるかな。…無理か。少し潤んだようにも見える彼の目を見て思わず喉が鳴る。あーー別にそっちの趣味はないんだけどなぁ…、完全に快感を覚えてしまった自分がいて。

2013-06-16 09:23:36
さの @saxno_

「今まで一人でキツかったろ?自分を偽って。そうまでして仲間と一緒にいたかったんだろうし、…でもそれって本当に幸せな事じゃないだろ、ほんとの自分じゃない自分で友人関係作るとか。それとも、…"そういう自分が上手く友人関係を形成してる"って状況に心酔でもしてるの?楽しそうだなぁ。」

2013-06-16 09:29:19
さの @saxno_

俺が一言一言喋るたびに目の前の彼の呼吸が止まるのが分かる。彼からすれば目の前から本当のことっていう槍が自分に降りかかってるようなものなんだろう、そりゃ俺も耐えられないなぁ。途端、彼が俺のTシャツから手を放すーと言うよりかは、手が外れた、と言った方が近いだろうか。

2013-06-16 09:32:34
さの @saxno_

「…おれ、は、そんなんじゃ、」会話する気のない声量でぽつりと呟く。その彼を、また、壁に追いやって手を着いて、形成逆転。「どうする?マトモに喋ったことも無い奴に、こんなにも自分の本性暴かれてるけど。今どんな気分?嬉しい?悲しい?辛い?恥ずかしい?悔しい?」耳元で、優しく囁く。

2013-06-16 09:36:58
さの @saxno_

ぼろりと、彼の細い目から出てきたとは思えない飴玉のような大粒の涙が溢れ出た。「…っ、なん、か、」拳で自分の目をガシガシと擦るその手の甲には、伊月くん自身の睫毛が一二本。覚束ない口調でもう一度、涙で潤んだ瞳で俺を見上げて言う。「あんたになんか、分かってたまるか…!」

2013-06-16 19:55:40
さの @saxno_

「……そりゃわかんねぇよ、だって俺は伊月くんじゃないもん。でもね、第三者だから見えることだって有るんだぜ?現に反応見る限り初めてだろ?」顔を覆ってる彼の両手を解けばそこには、俺のせいで、赤く腫らした目。たまにはこんなのもいいかな、なんて。その目にそっと触れたくて手を伸ばす。

2013-06-16 19:55:55
さの @saxno_

すると、反射的だろう、彼の手が自分の手を破裂音と一緒に払い除けた。まだ息が荒いところを見ると喋ることが出来ないのだろう、その眉間に寄った皺と視線をみれば今伊月くんが言いたいことなんか痛いほど伝わる。「…怖がんなくたって、大丈夫だよ」左頬を滑らせるように触れる。

2013-06-16 19:56:29
さの @saxno_

「苦しい思いはしなくていいんだよ。隠さなくてもいいんだよ。一人でかかえこまなくていいんだよ。こんなにも自分の事を分かってくれる人が居るじゃないか。君の本当の顔、俺にもっと見せてよ。」右頬にも片手を添えて、無理やり目線を揃える。電球の光が彼の涙で反射して、瞳に、光が見えた気がした。

2013-06-16 19:56:42
さの @saxno_

もう抵抗もしない。一回止まって居た涙がまた零れ出しては俺の手に触れる。「だからさ、オニーサンに一回だけ、その身を委ねてみない?」、目の前の彼は、もうなんの反応も示さない。 …その赤い目を、俺の両手で覆った。

2013-06-16 19:56:48