工房径ついのべ集2013年7月
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pleaseinuplease
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工房径（koubou-kei）
@pleaseinuplease
#twnovel 皆が晴れを願う七夕に、逆さのてるてる坊主をこっそり吊した。願いは叶わず、快晴の朝、あなたはゴルフバッグを持って玄関に立つ。「久しぶりの休みだったのに」「接待だ、仕方ないだろ」雨模様の私に苦笑して、顎を掬った。「ごめんな、夜には一緒だ」。唇だけの、つかの間の逢瀬。
2013-07-07 09:16:02
工房径（koubou-kei）
@pleaseinuplease
#twnovel わがままで、ひとりが好きで。一生一緒に暮らせる人なんていないと思ってた。休日の晴れ渡る空の中、公園の木陰でふたり黙々と本を読む。アウトドアなあなたと読書好きな私の妥協策だ。目を上げると彼は微笑んで。「結婚してよかったと思うだろ？」悔しいから頷いてなんてあげない。
2013-07-07 09:29:32
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#twnovel 織り姫と彦星の心配をしている暇はない。俺は君に、会いたい、会いたい。「こんな忙しいのに会えるわけねえだろ」自分に言いきかせるようにして切った夕べの電話。舌の根も乾かぬうちに、PCで時刻表を探してた。待ってろ。七夕の今宵、俺は君住む町行きの流星になる。
2013-07-07 14:21:34浮世さま @ukiyo_do の「ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです。」 http://togetter.com/li/531198 でついのべを書く皆さまにこっそりのっかってみました。
工房径（koubou-kei）
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#twnovel 「天国のお姉ちゃんのことは忘れて、私をお嫁さんにして」「ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです」。遺影を前に繰り返された義兄とのやりとり。諦めきれずに追いかけ、私は二十歳。「もう大人よ。妹はいや」彼はふっと微笑んで「君こそ義兄さんと呼ぶのをやめなさい」
2013-07-08 16:45:34☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
工房径（koubou-kei）
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#twnovel 憧れの彼のバス停まで約３分。停車前、胸はウルトラマンのカラータイマーよろしく高鳴って。「おはよ」乗り込んできた彼は私を見つけて傍に立つ。「ねえ」私の耳元に口を寄せ「前は遅いバスだったよね。俺と同じにしたの、もしかしてわざと？」ジュワ！ 今すぐ故郷の星に帰りたい。
2013-07-09 18:29:41
工房径（koubou-kei）
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#twnovel 「無理です。あなたは先生の忘れ形見だ」父の書生だった彼は私が掴んだ袂を振り切った。男女が並んで歩くだけで噂になる町。その柳並木を、下駄を鳴らしながら追いかける。「私を泣かせたら、父が化けて出るから」学生帽を目深に被る彼の顔は赤い。「泣かれたら、僕が１番困ります」
2013-07-10 08:30:51
工房径（koubou-kei）
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#twnovel 「お前さあ」呆れたような視線も、ペンを弄ぶ指も。独り占めできるなら怒られてもいい。「もう少し頭使えよ」すみません、あなたのことでいっぱいなんです、上司様。ここまで仕事をがんばれたのも、あなたに追いつきたいからで。あれれ？ 何だか赤い顔。「あのな、全部聞こえてる」
2013-07-10 17:15:07
工房径（koubou-kei）
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#twnovel あつい、とけそう。「だめだよ」彼はぐい、と手を引っ張った。睫毛を伏せれば、無骨な指が顎を掬う。「目を、逸らすな」。無理。太陽を直接見たら目が灼けるって言うもの。「何言ってんだか」ふふっと笑う息がかかる。本当だよ、あなたの視線は凶器なの。もちろんその唇も。
2013-07-11 05:31:41
工房径（koubou-kei）
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#twnovel 灼けたアスファルトにそっと素足を下ろすと、足の裏から地球の裏側へ抜け落ちる感覚。ぼしゃん。溺れる身体をアマゾンカワイルカが押し上げる。戯れるうち海と川の出会うポロロッカの高波に攫われて。ぶくぶくぶく。気がつけば、手にはブラジルの酒、ライムの効いたカイピリーニャ。
2013-07-12 08:31:36
工房径（koubou-kei）
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#twnovel 「勘弁してくれ」私が想いを告げると、15も年上の彼はごりごりと無精髭の生えた顎を擦った。「この年になって、惚れたはれたってのはきついんだよ。心臓に悪い」「それならなおさら、もしもの時のために私がいた方がいいじゃない」彼は諦めたようにふっと笑った。「違いねえ」
2013-07-12 18:25:41◆７月14日ついのべの日
【お題】「冷やしツイノベはじめました」
《サブ企画・寒冷化言章》
13土・涼しい「風」 14日・冷たい「水」 15月・寒い「氷」
三連休なので、段々と涼しく冷たく寒くなっていくお題の変化をお楽しみください。縛り好きなら使用禁止語に。
お題「風」
工房径（koubou-kei）
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#twnvday 冷房の効かない会議室。プレゼンの大役を務め上げ座ったまま眠る彼女を、起こさぬようにパンフレットで扇いだ。連日連夜がんばる姿に心を動かされていた。物わかりのいい上司のふりはもうやめよう。喫水線ぎりぎりまで想いを積んだ俺の船は、今、白帆を大きくはらませて。
2013-07-13 08:20:42
工房径（koubou-kei）
@pleaseinuplease
#twnvday 悪友の彼に呼び出されたのは古めかしいウイスキー・バー。「こんなとこで女の子を口説くんだ」憎まれ口は、私の想いを隠す常套句。「いいや、お前が初めてだけど」嫌みなどどこ吹く風で、彼は私の手を取った。教えてよ、ウイスキーの飲み方も、あなたの気持ちも。夜はまだ長いから。
2013-07-13 21:51:35お題「風」「水」
工房径（koubou-kei）
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#twnvday 幼なじみで、幼稚園からずっと一緒だった彼。風の噂で有名大学の推薦入学が決まったと聞いた。この胸の痛みは、きっと水をあけられた悔しさだ。「喜んでくれねえの？」無視しようとして腕を掴まれる。「ガキのころから頭のいい男が好きだってお前がいうから、俺、頑張ったんだけど」
2013-07-14 05:09:48お題「風」「水」
工房径（koubou-kei）
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#twnvday 立ち漕ぎで坂道を上りきり、目の前には待ちに待った人気のない下り坂。隣に並んだあなたと「せーの！」でペダルから両足を離した。ひゅん、ひゅん。木々の緑は千切れて、ふたり鷗のように、空（くう）を切る。このまま入道雲を突き抜け、飛沫を上げて海に飛び込んでしまおうか。
2013-07-14 07:21:14お題「風」「水」「氷」
工房径（koubou-kei）
@pleaseinuplease
#twnvday 久々の休日。夫婦水入らずでオープンカフェへ。席に案内されたとたん、突然愛しい妻から氷のような視線。あれ、何で風向きが変わった？ 「店員の女の子と親しそうだったね」そういうことか。「『奥様と仲良しですね』ってからかわれてたの」真っ赤になる君。今日も暑くなりそうだ。
2013-07-14 10:44:08お題「水」
工房径（koubou-kei）
@pleaseinuplease
#twnvday 古書街で突然降り出した、にわか雨。羽織ったシャツの下に買った本を突っ込み、喫茶店に飛び込んだ。まずい珈琲を飲みながら灼けた頁を捲り、ああ、そうだった、と頷いて。多感な時代に読みふけった本は、甕の中に溜まった雨だ。砂漠を進む日々の中、私を潤す、確かな言葉。
2013-07-14 20:54:22お題「氷」