おっさんケモもうそう

TLを荒らしたおっさんケモの和製ファンタジーもうそう
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鳥野郎 @toriyarou23

さっきTLを荒らしたおっさんケモの話まとめツイショ。タイトル「畜生の鎖」

2013-08-25 02:42:24
鳥野郎 @toriyarou23

昔考えてたケモ(オッサン注意)①江戸後期、五十年前に持ち込まれた新技術により人と獣を掛け合わせることが可能になった。しかし非人道的、非道徳であるとの観点から研究は干され、立ち消えることになった。だが真実は違う。半獣は男しか生まれず、強く逞しいが皆不完全な獣の形をしていたのだ。

2013-08-25 02:42:37
鳥野郎 @toriyarou23

②半獣化計画は頓挫した。作り出された半獣はその多くが頓挫したが、ある研究員にて数名は命を長らえることが出来た。世に出た幼い半獣達は時に戦に駆り出され、時に愛玩用として愛でられ、しかしながらその容姿の異様さから忌避の対象として見られていた。

2013-08-25 02:42:51
鳥野郎 @toriyarou23

③それから四十年の時が経ち、居場所を失いつつあった半獣は身を潜めるようにしてひっそりと生きていた。イヌ科の血を合わせられた男は、珍しいもの好きの城主に買われ鎖をつけられて観賞用にされていた。己の宝を自慢する宴が夜毎行われ、男は見世物にされるが一言も発しようとはしなかった。

2013-08-25 02:43:04
鳥野郎 @toriyarou23

④おい、わんと鳴け。城主は男を鞭で叩きながら命ずるが、決して声を発することはなかった。獣の耳、獣の爪、獣の尾を鞭で打たれるが、それでも決して。怒り心頭した城主は男を牢屋に繋いだ。食事も与えず水も与えず、わんと鳴くなら許してやろうと言った。

2013-08-25 02:43:39
鳥野郎 @toriyarou23

⑤男は鳴かなかった。それどころか飢えても乾いても、決して人に媚を売ろうとはしなかった。犬の血は逆の行動を求めていたが、男は人間でありたかった。ある日、男のいる牢屋に女と子供が入れられた。女は世にも珍しい金色の髪と青い目をしていた。子供は黒髪だったが、顔立ちは女と似ていた。

2013-08-25 02:43:53
鳥野郎 @toriyarou23

⑥「おじさん、そのお耳本物?」子供は無邪気に話しかけてきたが、男は答えなかった。隣同士の牢屋に入り数日、子供は毎日話しかけてきた。好きな食べ物、好きな景色、どこそこに行ったことはあるか、私はないの。子供は少女であった。男は少しずつ、少女に心を開いていった。

2013-08-25 02:44:06
鳥野郎 @toriyarou23

⑦ある日、項垂れていた女が男に話しかけた。「私、ここを逃げるんです。あなたも一緒に逃げましょう」女の言葉に男は首を振った。自分は外の世界では生きていけない。半獣は畏怖の対象だ。迫害されて死ぬだけなら、ここで孤独に死ぬほうがいいと。

2013-08-25 02:44:19
鳥野郎 @toriyarou23

⑧「死んじゃいやだ」少女は目に涙を溜めて男に叫んだ。あまりに叫ぶため、看守がしびれを切らして少女を鞭でぶとうとした。男ははっとして、自分を繋いでいた鎖を引きちぎり、牢屋の壁を壊した。これほどまでに自分には力があったのかと思いながら、男は女と少女を抱えて牢屋を出た。

2013-08-25 02:44:32
鳥野郎 @toriyarou23

⑨城では城主が相変わらず珍しいものを見せびらかす宴を開いていたが、男と女、少女の逃亡に血相を変えて「絶対に逃してはならん!」と命じた。城主の恐ろしさを知っている家来達は、血眼になって男を追いかけた。しかし男は、人の力と獣の力を有していた。次々に家来を倒し、城の外に抜けだした。

2013-08-25 02:44:45
鳥野郎 @toriyarou23

⑩「ありがとうございます、あなたのおかげで城から出られた」女は笑顔であったが、腹を押さえてうずくまった。男がどうしたのかと聞くと、鉄砲の弾が当たったのだと涙を流した。少女は女を母と呼び、泣きながらすがった。すぐそばまで家来の足音が近づいている。男は女を担ごうとした。

2013-08-25 02:44:58
鳥野郎 @toriyarou23

⑪「お願い、待って。話を聴いて」金髪の女は男の腕にすがりついて泣いた。そして少女をぎゅっと抱きしめると、母はいつもおまえを見守っているからねと言った。男は訳が分からず、それでも母娘を邪魔しては悪いと見張りをしていた。その手に、女が胸元に隠し持っていた美しい宝石を渡した。

2013-08-25 02:45:34
鳥野郎 @toriyarou23

⑫これがあればしばらくは食っていけます、と女は言った。男は女が言いたいことを悟ったが、首を振った。逃げるならば三人一緒がいい。そう言ったが、女は虫の息であった。少女は女にすがりついて一緒に行こうと泣いていたが、女は少女の頬を張って「強く生きなさい」そう言った。

2013-08-25 02:45:47
鳥野郎 @toriyarou23

⑬嫌だ嫌だと泣く少女をもう一度抱きしめた女は、男に笑って「私が時間を稼ぎます。その間に逃げて」と言って髪を縛った。美しい金色だった。「私がたとえ逃げおおせたとしても、私ではその子を守れない。あなたが守って」男は、女と約束をした。生まれて初めての約束だった。

2013-08-25 02:46:00
鳥野郎 @toriyarou23

⑭男は少女を抱えて逃げた。耳元でかあちゃん、かあちゃんと叫ばれたが、今度はうるさいとは感じなかった。悲しくて悲しくて仕方なかった。あの城主が憎くて仕方なかった。今まで自分を迫害してきた人間が仕方なかった。足が動かなくなるまで走って走って、夜が明けた。

2013-08-25 02:46:13
鳥野郎 @toriyarou23

⑮獣の耳を布切れで隠し、疲れて眠った少女を抱えたまま、とっくに動かない足を引きずって歩いた。あの城から出来るだけ遠くへ、遠くへ、遠くへ。しかし昇った陽は容赦なく男と少女を苛んだ。ついに限界がきて、男はどさりと倒れてしまった。感度のいい耳が拾うざわついた喧騒に、もうだめだと考えた。

2013-08-25 02:46:24
鳥野郎 @toriyarou23

⑯「どいてくれ。俺は医者だ」そんな中聞こえた声は、若者のようだった。若者は男の上半身を抱えると、ひどく弱っている。俺の長屋へ運んで治療しようと言った。わけがわからなかった。男は、今まで誰にも優しくされたことはなかった。人間は、半獣の自分を迫害するばかりで理解しようともしなかった。

2013-08-25 02:46:36
鳥野郎 @toriyarou23

⑰「あんた、いい耳してるな。俺はいぬは好きなんだ」布団に寝かされて聞いた若者の声に、男はついに安心さえ覚えて眠ってしまった。隣に、少女の布団もあった。小さな手と大きな手は、しっかり繋がれていた。

2013-08-25 02:46:52
鳥野郎 @toriyarou23

そういえば前にツイした畜生の鎖の猫様編も妄想してたので吐き出す。

2013-08-25 00:52:39
鳥野郎 @toriyarou23

①猫様は高級見世物小屋(そんなもんがあるかどうかは知りませんが)に飼われているおっさん猫。基本気まぐれで客の前にもほとんど顔を見せないが、小屋から出ることは主人が決して許さなかった。猫様は小屋の二階からいつも下を見て、面白い人間がいないか観察する毎日を送っていた。

2013-08-25 00:56:43
鳥野郎 @toriyarou23

②ある日猫様は、町を歩くひとりの男を見かける。行きは何やら大きな重箱を抱えて嬉しそうに西へと歩いていくが、一刻もしないうちにおなじ道を帰っていく。その姿は行きとは全く異なり、肩を落として心なしか暗い。猫様は男を観察することにした。

2013-08-25 01:00:20
鳥野郎 @toriyarou23

③男は毎日のように行きは嬉しそうに、帰りはうなだれて重箱を抱えて歩いている。猫様はしっぽを揺らしながら男を毎日観察した。主人は相変わらず猫様を外には出さないが、二階の出窓から見える景色だけで十分だった。日々変わるようでそうでもない景色は、猫様にとって平和そのものだった。

2013-08-25 01:03:22
鳥野郎 @toriyarou23

④ある日なんの気の迷いか、男が見世物小屋の二階を見上げた。特に布もかぶっていなかった猫様、男に獣の耳もふらふらと泳ぐしっぽも見られてしまう。目を見開く男に、見つかってしまったとわざと大きな声で言ってみると、男は周りを見渡してこういった。「よかったら、おはぎでも食べませんか」

2013-08-25 01:05:17
鳥野郎 @toriyarou23

⑤猫様は笑って手を伸ばした。食事はちゃんと主人が持ってきてはくれるが、甘いものなど十数年前に口にしたきり食べていない。それでも半獣の自分を恐れずそんなことを言ってくる男に呆れながら、猫様は男が投げてよこした重箱を受け取った。風呂敷を開けると中にはうまそうなおはぎが詰まっていた

2013-08-25 01:07:10
鳥野郎 @toriyarou23

⑥おはぎは美味かった。猫様は重箱に入っていたそれらを、主人に気付かれぬように小屋の中の住人にも与えた。おおむね好評で、翌朝同じように重箱をもってやってきた男に空の重箱を投げた。「うまかったぞ。すこし粒が荒いが、嫌いではない」猫様の言葉に男は笑って「食ってくれたんだな」といった

2013-08-25 01:10:16