#今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

執務机に置かれた黒電話が鳴り、神通が受話器を持ち上げる。 「ラバウル基地司令部です……はい、分かりました。提督、お電話です」 「ん」 提督は手を伸ばし、神通から受話器を受け取る。 「替わりました。お前か！ そっちはどうだ？」 提督の声が少し明るくなる。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「で、わざわざそっちから電話してくるんだ。何かあるんだろう」 明るい表情から一転、提督は真面目な表情に戻った。 「アレの話か。俺だってここで毎日麦茶を飲んでいるわけじゃないんだ。で、情報源は？」 神通は来月の補給計画書を整理しながら聞き耳を立てる。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「なるほど。あぁ……大丈夫だ。そっちの連中にもよろしく」 提督は受話器を戻すと大きくため息を付いて椅子にもたれかかった。 「どうされましたか？」 神通が声をかけるが、提督は無言で天井のシーリングファンを睨みつけている。 「あの、提督」 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

提督はすっと体を起こし、神通に体を向けた。 「神通」 「何でしょうか」 神通は姿勢を正す。いつもとは提督の雰囲気も、声の調子も違う。 直感が彼女に注意を促していた。 「強くなりたいか？」 「もっと強くなって、提督のお役に立ちたいです」 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「君らしい答えだ」 提督は表情を和らげる。 「提督、先ほどのお電話でなにか言われましたか？」 電話している時の提督は平謝りしているか楽しそうにしているかのどちらかなのに、今日は様子がおかしい。 「や、大したことじゃないんだ。心配かけてすまない」 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「少し疲れているのかもしれない。30分ほど横になるよ。何かあったら蹴ってでも起こしてくれ」 「わかりました」 苦笑交じりに頷き、神通は隣の仮眠室に入る提督の背中を見送った。 提督が居ない一人の執務室で、神通のペンだけが静かな音を立てる。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「神通」 隣室から聞こえた小さな提督の声を、秘書艦は聞き逃さなかった。 「提督、どうされました？」 静かにドアをあけた神通は静かに提督に問いかける。 返事はなく、ただ穏やかな寝息だけが聞こえる。 「寝言ですか」 苦笑して神通は執務室に戻ろうとする。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

ドアを閉めようとした神通は提督愛用の昼寝用枕の下に何かが下敷きになっていることに気づいた。 「これは……？」 提督を起こさないよう慎重に枕の下からそれを引き抜く。 封の切られた封筒の表面には『極秘』とだけ押印されている。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「提督」 返事がないことを確認してから神通は封筒の中身を取り出す。 「これって……」 中身を見た神通は凍りついた。あまりにも、彼女自身のよく知るものに似ている。 「うぅーん、神通、もう30分経ったか？」 提督が大きく伸びをしたのはその時だった。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「あっ、提督っ、まだ15分しか」 慌てて中身を封筒に戻そうとした神通の右手から封筒の中身が滑り落ちる。 「いや、少し寝て決心がついた」 「あっ」 ひらひらと左右に揺れた三つ折のA4コピー用紙は提督の目前にふわりと着陸した。 「あれ？」 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「すみません、見るつもりは……」 「見られちゃったか。はは、参ったな」 必死に弁解しようとする神通をよそに、提督は苦笑いを浮かべる。 「神通、これが何かわかった？」 「艤装ですよね、それも軽巡洋艦用の」 率直に神通は答えた。提督は無言で頷く。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「今度こそ、君の第二次改装ができるだろう。おめでとう、神通」 提督は神通の手を引いて抱き寄せる。 「こんな素敵な近代化改修、私、嬉しいです」 神通も提督の背中に手を回す。 「正式な図面がきたら、な」 「はい」 #今日の神通さん