大和物語

大和さんによる 艦娘・大和着任時のお話。
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大和 @BB_Yamato_not

私も今度小説を書いてみましょうか。

2013-09-10 03:30:42
大和 @BB_Yamato_not

脳内設定ですが、艦娘が着任する時のお話は今すぐにでも書けますね。 書きましょうか、書ける範囲で。

2013-09-10 03:32:31
大和 @BB_Yamato_not

「……よしっ!!E-4クリアだ!!」 その声は誰の声。 聞いたことの無い声が耳に入る。 そもそも、私は誰? ここはどこ、寒い、寒い……。 動いている?止まっている?高確率で動いている。 動ける?手足がある、眼も開く、口も動く。 #大和物語

2013-09-10 03:35:16
大和 @BB_Yamato_not

何かに引っ張られる。誰が引っ張っている? 私はどうなる?分からない、不安、焦り、気持ち悪いこの海。 海?どうして海だと分かる? 何故海という言葉を知っている? 頭が痛い。頭が痛い?痛いとはなんだろう。 #大和物語

2013-09-10 03:36:53
大和 @BB_Yamato_not

嘘、本当は痛みを知っている。知りすぎているくらい知っている。 痛いほど分かる、痛みだけに、とっても痛いほど。 ふと思い出す、皆の泣き叫ぶ声。最後まで私を信じた声。 絶望の声。 だけど、さっきの声は『希望の声』。 絶望を知ったからこそ、希望を知る。光があれば影もあるように。

2013-09-10 03:38:18
大和 @BB_Yamato_not

まだ引っ張られる。どんどん暖かくなっていく。 冷たいから温かいへ。 温もりを感じる、これは、なんでしょう。 ザッ ……。 「大和……なのか」 大和。それが私の名前。 思い出す、脳みそが働く。 過去の記憶が一気に流れこむ。走馬灯の如く、流れこむ。 #大和物語

2013-09-10 03:40:23
大和 @BB_Yamato_not

嫌な感じも、良い感じも、全てが……流れこんでくる。 「あ、あああああああ!!!!!」 辛い、痛い、苦しい、助けて。 ごめんなさい、沈んでごめんなさい。耐えられなくてごめんなさい、皆の期待に応えられなくて、ごめ……。 「大和!しっかりしろ!」 #大和物語

2013-09-10 03:43:11
大和 @BB_Yamato_not

また声がする。 記憶が混雑しているのが、やっと把握してきた。 ここはどこだろうと見渡す、6隻の艦、そして1人の人間。 「大丈夫か」 「はい……」 声が出る。そもそも私は人の姿をしている。 人によって動かされるはずの私が、人の姿をしている。 人を裏切った私が、人の……。

2013-09-10 03:44:41
大和 @BB_Yamato_not

「……う、うぅ」 「……他の艦娘とは違うのか、特殊だな」 「提督、速やかに帰投致しましょう」 「そうだな、それが良い」 私はその後のことを覚えていない。 気がついた時には、私はベッドの上で眠っていたからだ。 #大和物語

2013-09-10 03:46:12
大和 @BB_Yamato_not

あとで聞いた話しだと、ベッドまで運んでくれたのは戦艦の長門さんらしい。 そういえばあの場にも居たような気がする。 私はベッドから起き上がると、近くに居た人物に話しかけた。 「……あの」 「あ!大和さん、眼が冷めたのね」 #大和物語

2013-09-10 03:48:51
大和 @BB_Yamato_not

割烹着を着た女性だった。髪が長く、赤いリボンが目につく女性。 駆け足で私の所へ足を運び、ベッドに座る。 「倒れたと聞いた時には驚いたけど、無事で良かった。着任してすぐに轟沈なんて考えたくないもの」 その女性はにっこりと笑いながら、私に話しかけた。 #大和物語

2013-09-10 03:50:15
大和 @BB_Yamato_not

私はというと何のことだかさっぱり分からないので、きょとんとするしかなかった。 「あの……」 「ああ!自己紹介がまだだったわね!私は間宮よ。アイスクリーム食べる?」 右手にはアイスクリーム。私は理性を失っていたのか、がっついて食べてしまった。 #大和物語

2013-09-10 03:51:31
大和 @BB_Yamato_not

間宮という女性も驚いたようだったが、すぐに笑顔に戻った。 「それだけ食欲があれば、きっと大丈夫ね。提督に連絡をしてくるので、少々お待ちくださいね」 そう言うとベッドから立ち上がり、ドアを静かに開け、その場を去っていった。 私は……まだアイスを食べていた。 #大和物語

2013-09-10 03:52:27
大和 @BB_Yamato_not

暫くして、駆け足が聞こえてくる。 「大和!!」 見慣れた制服を着た男性が1人、焦りながらも部屋に入ってきた。 見慣れた制服……?何故私はそう思ったのか、と考えた。先ほどから記憶が混雑している。 変なノイズのようなものが走り、映像もフラッシュバックする。 #大和物語

2013-09-10 03:53:41
大和 @BB_Yamato_not

「……大和、もう大丈夫なのか?」 「……は、はい?」 大丈夫の意味がわからなかった。 身体としては問題は無いのだろう、しかし記憶が混雑しているのは不便で仕方がなかった。 「長門……長門は着任時に艦娘として着任したことを覚えていたんだな?」 後から入ってきた長い黒髪の女性に聞いた。

2013-09-10 03:55:15
大和 @BB_Yamato_not

「もちろんだ……自己紹介もきちんと行ったはずだ」 「何故大和はこうなっているんだ」 「それは私にも分からない。提督と同じように、私もこのような着任は初めて見るからな」 やはり、私は『何かが違う』ようだった。 「……あの、私は戦艦大和であっているのでしょうか?」 「ああ……そうだ」

2013-09-10 03:56:46
大和 @BB_Yamato_not

「私には理解が出来ません。戦艦大和は沈んだはずです、なのに何故……もしかして、ここは天国なのでしょうか?そもそも、戦艦としての大和がこのように人の身に宿るなど……どこの神様の悪戯でしょうか?」 「なるほど、相当混乱しているみたいだな」 目の前の男が答えた。 私を見つめながら。

2013-09-10 03:58:03
大和 @BB_Yamato_not

「良いか、大和。お前は艦娘として生まれ変わったんだ。そして、俺が提督として指揮する鎮守府に着任をした」 「わ、私が艦娘……?着任?て、提督?」 「……困ったな、クリアしただけでは大和を出撃させることは無理そうだ」 前のめりになっていた身体を椅子に預け、再度私のほうを見る提督。

2013-09-10 04:00:14
大和 @BB_Yamato_not

私は少しずつ整理を始めた。 呉にて完成した戦艦大和は、成功することが奇跡であろう海戦に出て、沈んだ。 そして、その魂が今現在こうして新たなる戦場へと運んできた。 艦娘として、これからも提督の元、戦い続ける。 ということらしい。 #大和物語

2013-09-10 04:01:53
大和 @BB_Yamato_not

「……大和は」 「ん?」 「大和はまた、出撃をするのですね」 「……ん、あ、ああ……うーん、いや当分はしないが……資材も少ないしな」 頬を指でかく提督。 「……長門、さん」 提督の後ろで立っている女性、戦艦長門であろう女性に話しかける。 #大和物語

2013-09-10 04:03:46
大和 @BB_Yamato_not

その美しき髪を揺らしながら私のほうへと向かってきた。 「どうした、私は長門型戦艦一番艦、長門だ。名に覚えはあるな」 「……もちろんです」 「どういうことか、大和は記憶が滅茶苦茶になって着任したらしい」 「はい」 #大和物語

2013-09-10 04:05:19
大和 @BB_Yamato_not

「私達はそんなことはなかった。艦娘として生まれ変わったこと、そしてするべきことも全て頭に入った上での着任だったからな」 「……そう、なのですね」 「私だけではない、駆逐艦も軽巡洋艦も、重巡洋艦も、軽空母艦も、正規空母も、そして戦艦も、皆そうだった」 #大和物語

2013-09-10 04:06:26
大和 @BB_Yamato_not

「何故大和だけがこうなったのか、私には理解が出来ない」 そう長門さんが言うと、部屋は静かになった。 暫くの沈黙が続く後、私は切り出した。 「……そ、それは大和も同じです。何故ここにこうして居るのかも、大和には分かりません」 「……そうか、では思っていることを言ってくれ」

2013-09-10 04:07:49
大和 @BB_Yamato_not

私は長門さんと、提督の顔を見る。 不安が喉奥からやってくるようだった。 吐き気のようなものに襲われる。 「……私、は、思い出している、だけ、です……産まれた時のこと、進水した時のこと、海戦に行ったこと……沈んだ時のこと」 「……なるほどな」 長門さんは頷く。提督も同じように頷く。

2013-09-10 04:10:16
大和 @BB_Yamato_not

「大和、つまりお前は沈んだことに恥じらいを持ち、悔み、惜しみ、苦しみ、辛く重いものがのしかかっている、そういうことだな」 「はい」 即答した。 本当にその通りだったから。 「……なら、今のお前に出撃は出来るのか?」 長門さんは私の目を見て言った。 #大和物語

2013-09-10 04:12:19