鏡とアリス

鏡とアリス
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鏡に映ったのは、誰ですか

ソーダアメ|140字小説 @sodaame140

鴉が上空を飛びます。眼下には女の子がうたた寝しています。彼女は夢の中で、鏡の世界を漂います。周囲は全て鏡、どこまでも続く共鳴する世界の中で、鏡の中を只進んでいきます。影が彼女に問います。君が落としたのはこの銀の腕。それとも銅の右脚。彼女の小指は、ありません。 #鏡とアリス (1)

2013-09-02 00:55:27
ソーダアメ|140字小説 @sodaame140

彼女の小指は、ありません。私が落としたのは、普通の小指です。約束したのに、見当たらないのです。影はけらけら笑いました。銀色の鏡はどこまでも深く、先は真っ暗で何も見えません。君の小指は持っていない。代わりに、この腕をやろう。彼女の右腕は、深い銀色になりました。 #鏡とアリス (2)

2013-09-03 01:29:44
ソーダアメ|140字小説 @sodaame140

彼女の右腕は、深い銀色になりました。遠くで鴉の鳴き声が聞こえます。影は立ち去ると、後には何も残りませんでした。彼女の右腕には、やはり小指はありません。キラリと光る街灯が並んで、彼女は先へ進みます。兎が走る姿が見えました。胸には、彼女の小指をぶら下げています。 #鏡とアリス (3)

2013-09-04 00:28:00
ソーダアメ|140字小説 @sodaame140

胸には、彼女の小指をぶら下げています。兎はそのまま走り去りました。彼女が先へ進むと、泉がありました。泉の精は彼女に問います。綺麗に見えるが毒か聖水か、汝の心を映す鏡。手を入れてみよ。彼女は銀色の腕を挿します。泡立つ銀の雫。溶けて。聖水という名の毒を、彼女は。 #鏡とアリス (4)

2013-09-05 00:47:38
ソーダアメ|140字小説 @sodaame140

聖水という名の毒を、彼女は。影は近くで笑いました。手に入れたものを、そんな簡単に壊すのか。それなら最初から欲しがらなければいいのに。望んでいたのはこれじゃない?それ以外なら意味はない?それなら、きっと与えたものは、無駄なのだろうな。自ら要らないと言うのなら。 #鏡とアリス (5)

2013-09-06 03:57:11
ソーダアメ|140字小説 @sodaame140

自ら要らないと言うのなら。少女は泉に飛び込みました。右腕が溶けて消えていきます。泉の底で、少女は人魚と出会いました。彼女は声を持ちません。失った約束は、また探せばいいのよ。水中に字を書くと、彼女は笑いました。人魚は少女に鱗の首飾りを渡すと、消えていきました。 #鏡とアリス (6)

2013-09-07 00:42:59
ソーダアメ|140字小説 @sodaame140

人魚は少女に鱗の首飾りを渡すと、消えていきました。目を覚ますと、少女は木陰の下で横になっています。ここはどこかしら。少女はお気に入りの本を閉じ起き上がりました。鴉が上空を飛んでいます。鴉は急降下すると、兎の首にある少女の指を奪いました。これは彼女のものだ。 #鏡とアリス (7)

2013-09-11 00:34:28
ソーダアメ|140字小説 @sodaame140

これは彼女のものだ。彼女は夢の中の出来事を思い出します。それは、何だか不思議な夢でした。鴉が彼女の目の前に立ちます。君が無くしたものは、僕が見つけよう。彼女は鴉の咥えているものを見て、自分の手をまじまじと見ました。彼女の指が、ありませんでした。 #鏡とアリス (8) 第一部 完

2013-09-11 01:48:23

現実と幻想の狭間で

醜いものなど、何も見たくはないのに

あとがき

ソーダアメ @cacid_soda

光があれば、どこにでも影はいます。

2013-09-02 00:58:12
ソーダアメ @cacid_soda

失われた小指は、約束の証です。

2013-09-03 01:30:44
ソーダアメ @cacid_soda

胸にぶら下げているのは、何ですか。

2013-09-04 00:29:33
ソーダアメ @cacid_soda

光が溶かす、私の身体を。

2013-09-05 00:49:14
ソーダアメ @cacid_soda

望んでいたのは、これじゃなかった。

2013-09-06 03:58:07
ソーダアメ @cacid_soda

届かない声ならば、いっそ。

2013-09-07 00:44:56
ソーダアメ @cacid_soda

夢で見た記憶は、どこに行くのでしょう。

2013-09-11 00:40:33
ソーダアメ @cacid_soda

無くしたものは、何ですか。

2013-09-11 01:51:58

テーマソング coming soon.