【奇病にかかった或る異邦人の噺。】

Twitterでアップしたのを自分用にまとめてみましたー!
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テレビのコード @sq_ykx

【一日目】 「おや?」 朝目を覚ます。目を開いているのに暗闇の世界が広がっていた。 何か違和感を感じて顔に触れてみる。 右目の上に「何か」があった。 触れてみると柔らかく、くしゃっ、と音を立てた。

2013-09-12 01:17:28
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【一日目(続)】すぐさま芽衣さんの名前を叫ぶ。慌てた様子で扉を開けて部屋を開けたことが物音から分かる。 「八雲さん!!なにがあ、って、」 それ、どうしたんですか?と彼女は声を震わせて言った。 「何がありますか?」 見えない彼女に尋ねる。

2013-09-12 01:18:58
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【一日目(続)】 「花の蕾が、八雲さんの目に、あります」 (やはりそうか、) どうやら私は奇病にかかってしまったらしい。 奇病にかかった或る異邦人の噺。 一日目 終

2013-09-12 01:20:22
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てなわけでシリーズ始めます・*・:≡( ε:)

2013-09-12 01:20:53
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奇病にかかったとある異邦人の噺 二日目upするよー‹‹\(´ω` )/››‹‹\(  ´)/›› ‹‹\( ´ω`)/››

2013-09-12 21:34:29
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【二日目】 大学には「病気になったから当分休みます」と芽衣さんに頼んで伝えてもらった。 心配や迷惑をかけたし、正直治る見込みもないのでこのまま解雇されるかと思ったが知り合いの講師の一人に「この手のこと」に詳しい人がいたことを思い出した。

2013-09-12 21:37:04
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【二日目 続き】 「それは、また珍しい奇病にかかったもんだね、ハーン先生」 電話越しの彼はため息をついた。 「どういうものなんですか、これは?」 「右目に桃色の花が咲いてるんだろ?」 そう言われ花に触れる。 「それな、言葉を失うんだ」 「言葉を…?」

2013-09-12 21:37:48
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【二日目 続き】 今こんなに普通に話しているじゃないですか、と私は言った。 「花びらが一枚落ちる度に言葉を失うんだよ」 「治る方法はあるんですか!?」 呑気に話す彼に苛立ち、ムキになって声を荒らげる。 「それはな、」 はらり、と何かが受話器を持たない左手の上に落ちた。

2013-09-12 21:38:32
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【二日目 続き】 「××する人の涙だよ」 何かが聞こえたが、聴こえない。 何の事を言っているのか全く分からない。 「今なんとおっしゃいましたか?」 一番初めに失ったのは、「愛」だった。 【二日目 終】

2013-09-12 21:41:20
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【奇病にかかった或る異邦人の噺】三日目アップするぞー٩( 'ω' )و

2013-09-13 21:12:34
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【三日目】 言葉を忘れると言うことは、記憶をなくすことに等しいと昔どこかの本で読んだ。 本を読めば言葉が追加されると思ったが唯一使える右目が使えない今、私は深淵の世界に沈んだも同然だった。 そんな暗闇の世界で彼女の言葉だけが私を現実と繋いでくれているような気がした。

2013-09-13 21:17:08
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【三日目 続き】 助手であり、居候である彼女。 私がこんな状態になってから彼女は私の手を握ってくれることが多くなった。 はらり、はらり、と落ちる花びら。 花びらが落ちることは意識していないと気付かない程度の感覚だが、その度に彼女は力強く私の手を握った。

2013-09-13 21:17:38
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【三日目 続き】 「…八雲さん。私の言葉は届きますか?」 「ちゃんと届いてますよ」 今のところは、と言うのは止めておいた。 「……八雲さん、××ですよ」 (まただ、) 彼女が今どんな表情をしているか分からない。 それでも私は彼女に微笑んだ。

2013-09-13 21:18:44
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【三日目 続き】 少しずつ花びらと共に消えていく私の言葉。 大切なものが少しずつ消えていく中、何が大切だったのか分からないこの感覚が、 はらり、はらり、 一番×××。 (一番、何だったんでしょうね?) 【三日目 終】

2013-09-13 21:19:13
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てなわけで【奇病にかかった或る異邦人の噺】四日目、始めます・*・:≡( ε:)

2013-09-14 22:36:41
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【四日目】 言葉を失ってから少しずつ語彙力が落ちていくのがわかる。 この病気になる前、私は饒舌だったはずなのに今ではなんの言葉も出ない。 ただこの病気の仕組みについて分かったのは「単語」を忘れるのではなく「言葉」を自分の中から失うという事。

2013-09-14 22:38:04
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【四日目 続き】 花びらと共に失われていく「言葉」達。 例えば、「天気」という言葉を失ってしまえば「晴れ」も「雨」も「雪」も全て私の中から消える。 光を失って、もう四日目になった。 相変わらず世界は暗闇に包まれていて、芽衣さんお手の温もりだけが私をこの世へと繋ぐ。

2013-09-14 22:39:59
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【四日目 続き】 「芽衣さん」 「はい?」 名前を呼ばれた彼女は返事をした。 「何でもありません」 私は笑った。 「あのね、芽衣さん」 ポツリ、と私は呟いた。 「これから私は少しずつ「言葉」を失っていきます」 「はい」 「きっと貴女の言葉も私の元に届かなくなる日が来るでしょう」

2013-09-14 22:40:49
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【四日目 続き】 それでも、と言って彼女の手を強く握りしめる。 「私の事を、」 私の事を? どうして欲しいのか、何を言おうとしたのか、何を伝えたかったのか、わからない。 (この胸の痛みは何なんでしょうね?) 胸が張り裂けそうになる。

2013-09-14 22:41:58
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【四日目 続き】 伝えたかった想いが伝わらない。 消えてしまった今、それが何だったのか分からない。 「…私は八雲さんの分まで沢山お話します」 私の消えた想いを汲み取った彼女は言った。 「だって私は、」 ××だから (あぁ、)

2013-09-14 22:43:25
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【四日目 続き】 その言葉は、もう伝わらないんですよ。 張り裂けそうな胸の痛みを堪えて「ありがとうございます」と彼女に微笑んでいった。 (貴女が何を言おうとしたかはわかるのに、何を言いたいのかは分からないんです。) 【四日目 終】

2013-09-14 22:44:48
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【 奇病にかかったとある異邦人の噺 】五日目アップするどー\('ω')/

2013-09-15 21:49:56
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【五日目】 「おはようございます、八雲さん」 「おはようございます、芽衣さん」 朝、必ず交わされる挨拶。 そこに彼女がいる事を確認するように。

2013-09-15 22:13:26
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【五日目 続き】 「八雲さん、今日は×××ですか?」 彼女は沢山私に話してくれる。 「八雲さん。 ×××、××××と×××××どっちにします?」 沢山言葉を紡いでくれる。 「八雲さん、聞いてくださいよ。さっきロビーに×××を×××××××、」 ( でも、 )

2013-09-15 22:14:20
テレビのコード @sq_ykx

【五日目 続き】 何の事を言っているのか全く分からない。 聞こえるのに耳に入ってこない。 「そうですか」 そう言って私は彼女に微笑んだ。 きっと彼女は私が分かっていないことを悟っているだろう。 それでも彼女には笑顔で返事をした。

2013-09-15 22:14:53