@masanorinaito先生によるシリア体制批判
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アサド政権を潰さなければならない、或いは、反政府側の軍事力並みに、政権側の軍事力を低下させなければならない、と私は考える。シリアの民は、3千年を超える歴史のなかで、これだけ支配者に殺戮されたことはない。都市国家的な自立というものが、シリアの繁栄と都市文明を支えた。
2013-09-16 04:48:43都市国家は、軍事力によって自らを守ることはない。ウマイヤ朝のころは、そういう性格をもったが、しかし、自国の民を虐殺などしない。ダマスカスにしても、アレッポにしても、国民国家の枠組みに囲まれ、その領域のなかでは、何をしても許されるというのが、現在のシリアである。
2013-09-16 04:50:27イスラエルはアサド政権支持。ただし、ここまで弱体化してしまうと、もはやアサド、ヌスラ、イスラーム首長国、ヒズボラ、すべて潰しあってくれるのがベストという状況だからこそ、攻撃に「待て」を出した。
2013-09-16 04:52:43シリアの過去。1980年代まで、国営放送が「打倒、アメリカ帝国主義」を叫び続けていたが、政府高官の子弟は皆、アメリカ留学。バカ息子どもが夏になると帰ってきて、ムハーバラートを同乗させてオープンカーで市内を練り歩く姿をしばしば見かけた。シェラトンは、しばしば立ち入りが制限された。
2013-09-16 04:55:48そして、1990年、湾岸危機が起きると、シリアは寝返った。そう、同じころ、後ろ盾となってきたソ連が崩壊したのである。アメリカによる多国籍軍編成の呼びかけに、アサド政権は即座に応じた。「うちは、イラクをかつてからろくでもない国と考え、国交を断絶してきた」と言ってのけたのである。
2013-09-16 04:58:54哀れだったのはロシア。ソ連時代の借金は踏み倒され、下手をすると、中東での唯一の橋頭堡シリアを失うところまで追い詰められた。この状況で、シリアに対して強く出られるはずなどない。
2013-09-16 05:00:38「縁を切らないで」と頼み込んだのはロシアであって、シリアではないのである。そのころ、アサド政権の真骨頂というべき大成功をおさめている。アメリカ側に寝返ったのと同時に、レバノンへの実効支配をアメリカに認めさせたのである。
2013-09-16 05:02:48結局、湾岸戦争でアメリカに恩を売り、「お願いだから、振らないで」と懇願するロシアにも、「しょうがねえなあ」と駐留を認め、レバノンんを掠め取ったのである。冷戦終焉時に、これだけの利益を挙げた国があるだろうか。舌先三寸の世渡り上手。この国は戦争でこういう利益を挙げる国じゃないのだ。
2013-09-16 05:05:25それが、反政府運動のおかげで、ここまで酷い殺し合いの応酬になってしまった。そう。この国で反政府運動を起こしたら、こうなることは1980年代前半の激しいムスリム同胞団弾圧のときから分かっていたこと。何を今更、軍事介入を躊躇することなどあろうか。
2013-09-16 05:06:501980年代前半のように、反政府側は「皆殺し」にするだろう。いいか。あの国は、かつてやっているいるのだ。政権に刃向う人びとの「皆殺し」を。本当に「皆殺し」にする。それを、傍観するという決定が、今回、ロシアと米国の間でなされたのである。
2013-09-16 05:09:06シリアという国は、国連のような国際機関において、どういう言葉で語らなければならないかを熟知している。国際的な枠組みを「じゃあ、出てくわ」と踏みにじろうとする北朝鮮やイランとは、ここが違う。実に洗練された語り口で、しゃあしゃあと嘘をつき、国連を手玉にとって虐殺を実行できるのである
2013-09-16 05:12:11トルコを専門にしている私が、なんでシリアについて?という質問もあるので。1980年代の初頭、アサド政権が最初の大虐殺を敢行していたころ、シリアに留学していた数少ない日本人。専門領域を変えたのも、ある日、日本の研究機関にいたシリア人学者に呼び出され、「お前はバアス党を批判したね」
2013-09-16 05:41:47「いやそんなことはない」「お前はバアス党を批判した」「どこを指して、そう言うのですか?」「お前はバアス党を批判した」「していません」「お前はバアス党を批判した」←ぞっとするやり取りを、こともあろうに東京のアジア経済研究所でさせられた。
2013-09-16 05:43:43アサド政権は、「カネ」になることなら何でもします。宗教色など全くありませんから、宗教的道徳上、どう動くかなんて考えても何の意味もありません。もとより、西欧的なイデオロギーなど、金儲けのために役立つなら使う、というだけです。
2013-09-16 05:48:13内藤先生がシリアについて言われているようなことは、日本のシリア研究者は皆知っている常識に過ぎない。しかし、それを言わないのは、言うと二度とシリアに入国できなくなり(殺されなくもビザがおりない)、研究対象国に入国できなくなると、地域研究者は研究者生命を断たれるから。
2013-09-16 05:59:59内戦が始まってからは、反体制派支配地域に密入国しての取材しかできていないが、アサド政権側への取材も試みはした。日本国内でビザが取れないことは目に見えていたので、ダマスカス入りする韓国のNGOに参加させてもらうことにした。が、直前で、ぼくと他数人の日本人だけ、ビザ発行を拒否された。
2013-09-16 06:07:15シリアは極端な例だが、アラブ諸国は程度の差はあれ全て言論の自由のない強権国家なので、アラブ地域研究者は全て程度の差こそあれ研究対象国の政権の批判をしない曲学阿世の徒。比較的自由だったエジプトでさえ「アラブの春」の前にムバラクの独裁、腐敗、人権侵害を強く批判した研究者はいなかった。
2013-09-16 06:19:47