- psychologylabo
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昨日は福島県立美術館でプライスコレクションやっと鑑賞。台風のせいか当日券の行列は20分程度で済んだ。中は地方美術館ではあり得ないほどの混雑。ベーコン展よりすごかった。いつもの癖で、他の作品は後回しに、いきなり若冲の部屋へ。二回巡回したけれどひさびさの眼福でした。
2013-09-16 21:25:23若冲については以前ユリイカの若冲特集(2009年11月号)である「仮説」を提唱したことがある(伊藤若冲のD4C)。論点は三つ。(1)若冲は絵画の「レイヤー」を明確に意識していた。(2)フェルメールがカメラ・オブスクラを“利用”したように、望遠レンズの圧縮効果を“利用”していた。
2013-09-16 21:25:53(3)絵によってはレイヤー間の階層を意図的に混乱させて幻惑的な効果をもたらしていた、というもの。
2013-09-16 21:26:21(1) は「鳥獣草花図屏風」の「正面から見た象」という、田村信の一発ギャグめいた絵が典型。頭と胴体が同心円状に重なり前後に圧縮された象は、およそ写実とはかけ離れた想像上の解剖図に基づいており画家の考え方がよくわかる。あの見事な鯉魚図や鷲図も、きわめてレイヤー的。
2013-09-16 21:27:21(2)については有名な「群鶏図」が典型。最遠方の鶏と手前の鶏の大きさがほぼ同じに描かれている強烈な「圧縮感」。羽毛があたかも同一平面上の敷物であるかのようなテクスチャーを形成し、「胴体」と「頭部」の配置を意図的に混乱させることで、立体にも平面にも属さない奇妙な空間が生まれる。
2013-09-16 21:29:07ちなみに(2)の仮説はその後「日曜美術館」に出演した際、CGで“実証”してもらいました。あれはちょっと感動した。
2013-09-16 21:29:35(3)レイヤー同士の関係性を意図的に混乱させることで、さらに幻惑的なイメージが可能になるという事実に気付いた可能性。辻惟雄氏が指摘するように(『奇想の系譜』)若冲に絵にはしばしば「穴」がうがたれている。
2013-09-16 21:30:11『薔薇小禽図』では、バラの花の絨毯模様のなかに組み込まれた無数の白い花(金桜子)、『棕櫚雄鶏図』では、シュロの葉柄のつけ根に開けられた奇妙な小穴がそれであり、『雪中錦鶏図』では、融けかかった雪のまだらがつくり出す幻想的な模様のなかにくり抜かれた穴…
2013-09-16 21:30:19要するに「穴」を媒介としてレイヤー階層を混乱させる幻惑効果が、いわば「圧迫祭り」的な作用を鑑賞者に及ぼし…というところが、この論文の奇妙なタイトルの由来です。「またかよ」と思っていただければ幸いです。
2013-09-16 21:31:03話変わってあまちゃんの「みつけてこわそう(search and destroy)」がイギーポップかベトナム戦争かと盛り上がっていますが、医学生時代に良く聞いた言葉。感染症や抗がん剤の論文に良く出てきた気がする。こっちはもちろん、ネタ元はベトナム戦争なんだろうけれど。
2013-09-16 21:35:09