黒子の怪談 #kaidan_965 第三回 まとめ。
それだけなら誰かが悪戯したんだろうで終わりだ。もともとこっくりさんなんてだいたいそんなもんだしな。 だが、なぜかその「ショボイ」奴等に限ってピタリと正しいことを言い当ててくるんだよ、これが。 #kaidan_965
2013-09-21 22:22:32しかも過去のことだけじゃなくて未来のことまで言い当ててくるんだよ。確か「ハエノオウ」には運動会の天気とか色々尋ねたっけ、それも当たってた。快晴だった。 #kaidan_965
2013-09-21 22:23:03そんなわけでまあシャーマン!ってわけなんだけどさ、まあ呼び出したもんの名前が呼び出したもんだから、そうなったわけな。 さすがにもう「キタシャヤマ」って呼ばれることもねえけど、あんときゃ結構あれだったぜ? #kaidan_965
2013-09-21 22:23:21ふう、と溜息をついた森山に、お前それでも女子のことばっかかよ、と呆れてしまった笠松だが、同時に押さえ込んでいた(繰り返すがこれは両者了解の上でのことである)黄瀬が妙に静かなのに気がついた。 #kaidan_965
2013-09-21 22:24:13森山もそれに気がついたらしく、 「ん? どうしたよ、黄瀬」 と首を傾げる。 「…あの、森山センパイ。もう一度呼び出したもんの名前…言ってもらっていいっスか…特に最後…」 #kaidan_965
2013-09-21 22:24:24「はあ? まあいいけどよ。「イエノゴキブリ」「ネズミノメス」「ハエノオウ」。 えーっとあ、でもちょっと待てよ、「ソウトウノカラスノオサ」とか「イモムシノオサ」もいたっけか? #kaidan_965
2013-09-21 22:24:44…あ、そうだ!「クズステバノオウ」とか「トイレノテイオウ」とかもいたぜ! なんつか微妙に中二病っぽいのが笑えるよな。結局ショボイ名前ばっかなのになー」 #kaidan_965
2013-09-21 22:25:19あはは、と笑う森山だが、どうやら森山の話の最後の方から、引きつっていたらしい黄瀬の顔が、さらに引きつってゆく。 #kaidan_965
2013-09-21 22:25:42どうしたんだ、と思っていたのだが、どうやら見回すと小堀、笠松、森山、早川はきょとんとしているのだが、残りの中村の様子もおかしい。 「…ん? どうしたんだ、ふたりとも――」 #kaidan_965
2013-09-21 22:26:01「いいいいやいやなんでもないっス!ちょっと興味が出ただけっス、ごめんなさい森山センパイ!あ、でもまた何呼び出したか覚えてたら教えて欲しいっス!」 「あ、ああそうだな!すいません俺もちょっと面白いかなって…ほんとうになんでもないんですよ!」 #kaidan_965
2013-09-21 22:26:27だが、それでも気になるものは気になる。やがて順番が回り、森山が長風呂をしている間にさっさと上がってきた笠松は黄瀬と中村を部屋で問い詰めることにした。 すると、中村は複雑そうな顔をさらに複雑そうにし、黄瀬はため息を付いて言うのである。 #kaidan_965
2013-09-21 22:28:03「えーっと、ですね。俺中学生のとき、黒子っちと仲良かったんスけど、黒子っちって本が好きで」 「仲良かったっつうか付き纏いじゃね」 「ふええ」 #kaidan_965
2013-09-21 22:28:18「…まあ、要するに少なからずそういう本に興味を持つ時期に、本好きと一緒にいたので、そういう知識がついたということでしょう」 「中村センパイさすがっス! で、勉強する気も起きなかったしで、ちょっと神話系とか悪魔系の本とか…つってもラノベだったんすけど、 #kaidan_965
2013-09-21 22:28:45あと漫画とか読んでたんで、結構知識があるんス。 で、まあ。その…俺はまあ頭悪いっスけど…それでも分かるっス。 森山センパイが呼び出したやつ、変な奴が名乗っただけって可能性もありますけど、そのまんまの名前のとおりなら――すごくやばいヤツなんすよ…」 #kaidan_965
2013-09-21 22:29:12それに笠松は首を傾げた。 「やばいやつ?」 「そうッス。ハエノオウ、とか言ってたでしょ。蝿の王ってのは、とりあえずすごい悪魔の、ベルゼブブってやつの名前なんスよ」 #kaidan_965
2013-09-21 22:29:52「…はあ?」 「それだけじゃありません。トイレノテイオウっていうのはショボイですけど…そのまま厠の神と考えてみるとちょっとすごいっていうか…実は重要な役割を担っていることも多いんです。 あと双頭の烏なんかはもう…」 #kaidan_965
2013-09-21 22:30:33「ほんまもんの悪魔ってやつっスよね…」 「クズステバノオウも…やっぱり名前はショボイんですけど、居るんですよね実際に。そういう妖怪…」 「まあとりあえずあれっスよあれ…ハエノオウが一番…何呼び出してんスかあの人は…!」 #kaidan_965
2013-09-21 22:30:52「だよな…これでヨモツ系とか出てきてみたらもう致命的だ…」 「早めの中二病がきた小学生のイタズラで片付けられればいいものを…当たってるとか!未来予測して当たったとか!」 #kaidan_965
2013-09-21 22:31:04あああ、と頭を抱える二人に、笠松達は正直とても困惑した。 「…えっと、まあなんだ、あれか。 …それ、森山には…」 #kaidan_965
2013-09-21 22:31:15「言わないほうがいいっス。変にはしゃがれてベルフェゴールでも呼び出されたら困るっス」 「知識がないからこその無害さってこともありますからね…妙な知恵は付けない方がいい…」 #kaidan_965
2013-09-21 22:31:28後輩二人の神妙な様子に気圧され、その後戻ってきた森山にはそのまま多少ぎくしゃくしたものの、彼らは何も涼しい顔の残念な同輩に教えることはなかった。 #kaidan_965
2013-09-21 22:31:45なお、その後冬になり、ふと森山が持って来た「呼び出されたものをメモしたノート」に記された、「ニガヨモギ」「ニイズヘグ」「バラベラシイ」「トコヨヌシ」という名前を見て、黄瀬と中村が盛大に震えることになったのは、まあちょっとした余談である。 #kaidan_965
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