#空事学園 空理隊日誌

チーズトースト @_urt

#空事学園（秋に書いた部分を何とか回収できたことにするｗ）

九夜月@無人島 @nekouradou

「空事学園覚書（2014年4月～）【 #空事学園 】」をトゥギャりました。 http://t.co/cPOQqEgpme

ハラ@企画用アカウント @hrsrh_a

ざああ、と風が校庭の木々を揺らすのを、頬杖をついて合歓はぼんやりと見やった。教室のざわめきが頭上をゆるゆると越えていく。小さく一つあくびをして、ぺたりと机に頬をつける。体の隅がなんとなく怠くて、眠い。目を閉じれば、鼻の奥で沈丁花の香りがした。　#花病み　#空事学園

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瞼の裏でこの間の出来事、をつらつらと展開する。花を持つ指、倒れた椅子、肩に乗った手。こうして思い返せばあの日の自分の動揺が滑稽に思えて、合歓は伏せた腕の陰で小さく笑った。けれどあの時は本当に怖かったのだ。誰かが傷つく現実に、合歓は未だに慣れることが出来ない。　#花病み　#空事学園

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雨柳院さんのことが心配で、それで怖かったのは本当だ。だけど、だけど。人を傷つけることが怖いのは、本当は自分が傷つくのが怖いからなのだろう。机の上で小さく体を丸める。滑る思考、思考、自己嫌悪。雨柳院さんが、せめて無事で良かった。　#空事学園　#花病み

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空き時間というのはよくない。早く授業が始まればいいのに。手を握って合歓は目をぎゅっと閉じた。はやく、温室に。温室に行かなくちゃ。　#空事学園　#花病み

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ふと、反復する記憶の中に何か違和感が紛れ込んで、合歓は目を開けた。なんだろう、と思考しながら体を起こす。机上の砂糖漬け。水仙を取る彼の指。奪った手中の花。そう。毒、だと告げた。水仙は、毒の花と。なら。　#花病み　#空事学園　何故それを私は食べているのか、を。彼は、気が付いたのか。

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頭が、がんがんと痛んだ。指先からすうっと全身が冷たくなっていって、ああ、だめだ、だめだ、だめだ。温室に。揺れる視界のままがむしゃらに立ち上がって教室を飛び出す。こわい。どうしよう。こわい。温室に、温室に、行かなくちゃ。　#花病み　#空事学園

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温室はいつものようにあたたかい。へたりこんで、合歓は肩で大きく息をした。吸っても、吸っても、呼吸が苦しい。どうしよう。強張った指先で机を掴む。震える指を、誰か別のもののように見る。雨柳院さんの顔を、思い浮かべる。肩の上の手。彼に、嫌われたら、疎まれ、たら。　#花病み　#空事学園

神谷 真里@空事学園 @kamiya_soragoto

小脇に抱えたスケッチブックを持ち直しながら、真里は目的地へ急ぐ。いくら温室とはいえやはり冬の間は花が少なく、スケッチはあまり進まなかった。そこで真里は春が本格的に来るのを待って温室に行こうと決めていたのだ。当たり前のように扉を開く。 「お邪魔するっス…」 #空事学園 #五彩色染め

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がたん、と背後の扉が音を立てて、合歓はその場で竦み上がった。ばっと振り向けば目を丸くして立つ人影が、一人。「あ…」染物の、彼。喉の奥から細く息を吐く。手が小さく震えた。大丈夫、落ち着け、落ち着かないと。　@kamiya_soragoto #空事学園　#花病み　#五彩色染め

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目に飛び込んできた温室の主に声をかけようとして、真里は立ち止まった。彼女の顔が真っ青だったからだ。元々線の細い人だったが、今日はことさら儚げだ。立ち上がった彼女に慌てて駆け寄る。 「だ、大丈夫っスか？」 @hrsrh_a #空事学園 #花病み #五彩色染め

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「あ…」駆け寄る彼の表情が心配そうなそれで、一気に涙腺が決壊した。ぱたた、と落ちる涙を慌てて隠す。混乱した頭では碌な言葉が出てこなくて「大丈夫、です」と答えた声の震えは隠せなかった。どうしよう、それだけを思う。　@kamiya_soragoto #空事学園　#花病み　#五彩色染め

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わっ、わっ、泣かれた！どうしよう？！ いつも近所の子供にやっているように触ろうとして、慌てて真里は手を引っ込めた。さして親しくない女の子にベタベタ触れるのは良くない気がしたからだ。 「ど、どうしたっスか？何かあったっスか？」 @hrsrh_a #空事学園 #花病み #五彩色染め

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触れかけて離れた手を見て、すうっと沸騰しかけた思考が沈殿する。意識して大きく息を吸えば、やっと空気が胸に届いた。「何か、あった訳では、ないんですけど、」語尾が震えて、ガラスに当たって散った。　@kamiya_soragoto #空事学園　#花病み　#五彩色染め

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握った手を胸に引き寄せて、合歓は無意識に体を縮めた。「ずっと、隠してたことがあって、それが、知られて、しまったかもしれなくて」ぼろぼろと、零れる涙を拭う気にもなれなかった。「嫌われたくないって、そればっかり、」　@kamiya_soragoto #空事学園　#花病み　#五彩色染め

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黙って言葉を待つ彼にも、背の高いあの人にも、誰にも。言えない、言いたくない、嫌われたくない。今だって、泣いて、同情を引こうとして。嫌われたくないと強く思う自分が、醜くて。「自分勝手な、醜いこと、ばっかり、」　@kamiya_soragoto #空事学園　#花病み　#五彩色染め

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「…自分勝手じゃない人間なんて、いないっスよ」 その言葉は自然と口から漏れた。自分も。自分も昔、取り返しのつかないことを、した。ずっと心のどこかに引っかかっている過去。 「…みんな、表に見えないだけで、悪いとこ、抱えてるっス」 @hrsrh_a #空事学園 #花病み #五彩色染め

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「…でもそれだけが、その人の全てじゃないっス。…穐山さんの、その嫌われたくない人にだって、きっとそういうとこあるっス。でもそれで穐山さんがその人の事嫌いになったりしないっスよね？」 @hrsrh_a #空事学園 #花病み #五彩色染め

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ああ、ブーメランでもあるな、と真里は思う。彼女に話していながら、自分にも言い聞かせていると、頭の中で少し離れた所にいる自分が見つめている。 「だからきっと、穐山さんは嫌われたりしてないっス。大丈夫っスよ！」 @hrsrh_a #空事学園 #花病み #五彩色染め

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一生懸命に言葉を綴る彼を、合歓は夢から覚めたような気持ちで見返した。笑顔で、その陰に何か感情を滲ませて、自分を励まそうとする、彼を。ほろり、と頬を最後の涙が伝う。握った手の震えはいつの間にか止まっていた。　@kamiya_soragoto #空事学園　#花病み　#五彩色染め

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「…ありがとう、ございます」そうだ、この人は、彼らとは違う。温かいティーラテと、ココアを思い浮かべて合歓は背筋を伸ばした。ここは、あの地獄めいた場所ではない。ここは、空事学園。もう、私は、大丈夫だから。　@kamiya_soragoto #空事学園　#花病み　#五彩色染め

神谷 真里@空事学園 @kamiya_soragoto

ありがとう、と言って少し微笑んだ彼女を見て、真里はほっと息を吐いた。よかった。笑ってくれた。自分のたどたどしい言葉でも彼女に届いたようだ。 それにしても泣くほど嫌われたくない人って、よっぽど大事な人なんだなぁとぼんやり考える。 @hrsrh_a #空事学園 #花病み #五彩色染め

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立ち上がると、足が少し痺れていた。それに小さく笑って合歓は前に立つ少年を見上げた。「…その、ほんとにありがとうございました」いいっすよ！と笑った彼に見送られて温室を出る。空が青くて、なんだか飛べそうな気がした。　@kamiya_soragoto #空事学園　#花病み　#五彩染め