悪い男に騙される山城【序章最終日】

悪い男に騙されていた山城（完） @fd_yamasiro

…。むうぅ。 瑞雲の入った箱を抱えたまま、私は棒立ちする他なかった。 場所は鎮守府内にある食堂の1つで、 工廠からも港湾からも近い。なので、昼時の今は多くの人でごった返していて、何よりもちらほらと艦娘達の姿も見えた。同じ艦隊に所属する駆逐艦の子達のグループもいる。 あうう…。

悪い男に騙されていた山城（完） @fd_yamasiro

こんな状況で、告白の返事なんか、できるわけがない事に、彼を見付けて喜び勇んで駆け寄ってから気付いたのが今の私です。 鉄火丼を食べる手を止めてぽかんとした顔で私を見上げる彼に、言おうと思っていた言葉の1つも口にできずに、ただふるふると首を振って背を向ける。 無理っ、堪えられない！

悪い男に騙されていた山城（完） @fd_yamasiro

彼に名前を呼ばれて、タービンが焼き切れる勢いで稼働していた心臓が跳ね上がった。変な声が出た気がする。 真っ白になった頭の中で何も考えれず、気付いたら私は駆け出していた。昼食を補給しているみんなの注目を集める結果となり、余計に恥ずかしくなって更にパニックになる。 変な声が漏れた。

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背後で彼が呼び止めるけども、もう止まれるわけが無かった。入ってきたのと同じ出入り口から飛び出すと、単横陣でおしゃべりしながら歩いていた艦娘達の驚いた顔が見えた。 両脚を踏み込む。宙返りで飛び越えて、着地と同時に再び走り出す。 空がやたらと青い。 きっと私の顔は赤い。

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建物に挟まれた路地に差し掛かった所で、名前を呼ばれてようやく私は立ち止まる。おそるおそる振り返ると、息を切らして汗だくになった彼の姿が見えた。 少しは冷静さを取り戻した頭は、鉄火丼は残してきたのかなとか食器を下げるカウンターにすら持っていけてないよねとか、そんな事を考えている。

悪い男に騙されていた山城（完） @fd_yamasiro

大丈夫ですか？ 私は全然平気です。あと100カイリは走れます。　え、いや艦娘なら普通ですよ。むしろ私は体力無い方ですし…。 えっと、追い掛けてきてくれたんですね。　やっ、違いますっ、単にその…恥ずかしくなっただけです…。 昨日の返事をしたくて…。

悪い男に騙されていた山城（完） @fd_yamasiro

私も好きです。お付き合いして下さい。

悪い男に騙されていた山城（完） @fd_yamasiro

ＩＴ企業の立ち上げ、ですか。　凄いですね、私そういうのよくわからないですけど応援しますわ。　はぁ、お金沢山かかるからここでお勤めを…。　夢があるのって素敵ですね。私は夢とか無いので…。 え？　いや、そんな恥ずかしい事言わないで下さい…！　うぅ…でも、それは叶えたいですね。

悪い男に騙されていた山城（完） @fd_yamasiro

そろそろお仕事戻らなくてよろしいのですか？　瑞雲も換装してほしいですし。 んっ…ちょ、ちょっと…！　あっ…ん。　撫で方が昨日と違くないですか？　同じ、ですか。　いえ…嫌じゃないです。　ずっとこうしていたいです。 あうう…目の前で言うのずるいですよ。　はい、私も…好きです。　

悪い男に騙されていた山城（完） @fd_yamasiro

うええ、聞こえなかったわけないじゃないですか！　いやですよ、もう、恥ずかしいんですってば！ ううう…意地悪です。　言わないとダメですか？　でも…ひゃうっ！　わ、わかりました言いますから！　好きです！　大好きです！　ふぁ、ああぅっ！　耳はもう…はぅ…。　

悪い男に騙されていた山城（完） @fd_yamasiro

も、もう行きましょう？　これ以上はダメです、色々とダメです。 はい、ありがとうございます。 ん…。さ、先に行って下さい。　いえその…腰に力が入らなくて…。 後から行きますから。ね？　お仕事大事なのですから。 はい、はい。　わかってます。　また後で。　

悪い男に騙されていた山城（完） @fd_yamasiro

はぁ、まだドキドキしてる。 うん、でも幸せなのよねこの気持ちって…。もう私は不幸じゃないのよね。 返事して良かった。あの３人にはまた今度お礼しないとだわ。うーん、紹介？した方がいいのかしら？ さて、そろそろ行かないとね。　あう、まともに顔を見れる気がしないわ。

悪い男に騙されていた山城（完） @fd_yamasiro

幸せですか、そうですか。 【序章最終日完】 【累積山城pt４/後押しpt３/悲劇pt１】 【現在ルートＢ】 【第二章１日目に続く】