pw秋組 「秋の待ち伏せ」 しゆう

pw秋組に参加した自作をまとめました。
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春森しゆう @junju_usako

耕して肥やしを入れて土を寝かせる 畝を作って蒔くだけの床 ひとつぶ、ひとつぶ、 たまに、ふたつぶ、 耕された土に、ただ眠ればいい 右手、左手、ふりながら 芽が出る のを、待ち伏せている 小松菜も、からし菜も、私も対だ はみ出した方がよく育つ 「秋の待ち伏せ」 #pw秋組

2013-10-26 02:30:26
春森しゆう @junju_usako

通りすがりに呼び止めて お話しましょう。唐突に。 私を知らせたい。あなたを知りたい。 どこまで踏み込んでいい。 どこまで話せばいい。 誰かが聞き耳を立てている。 誰かが一字一句逃さず見張っている。 そしてあなたのなかに出来上がった私を 私は知らない。 「秋の待ち伏せ」 #pw秋組

2013-10-26 02:50:12
春森しゆう @junju_usako

簡素な電子音が、君の存在を告げる。 視覚的な認知の在り処。 声は聴こえてこないから温度が計れない。 文字の羅列に熱を持たせるのは、私の心だ。 常温の液晶の中に棲む君を、抱きしめる。 「秋の待ち伏せ」 #pw秋組

2013-10-26 07:26:40
春森しゆう @junju_usako

種が、ほしい。 黒い小さな種が。 渇いて零れる直前を、見極めたい。 ずっと待っていたものを、 いつのまにか、土と同化していた。 掘っても、掘っても、掘っても、 もう遅い。 土の中で咲いている。 「秋の待ち伏せ」 #pw秋組

2013-10-26 07:45:38
春森しゆう @junju_usako

こわくて張り巡らせた茨を、ほどいてくれる人を待っていた。 待ちながらも茨を強化していた。 諦めていく人たち、理由に気づく人がいなかった。 茨は自分の脚に刺さる。 今度は傷を舐めてくれる人を待ち 待っているうちに朽ちてしまう。 残ったものに色がない。 (秋の待ち伏せ) #pw秋組

2013-10-26 08:26:04
春森しゆう @junju_usako

ああ、わたし、このときを待っていました。 並ぶ顔ぶれに、高鳴る鼓動。 繋がれる嬉しさ。 触れられる優しさ。 言葉を使えるから 人間で よかった。 母の匂いを思い出す、温かな組。 (秋の待ち伏せ) #pw秋組

2013-10-26 09:29:03
春森しゆう @junju_usako

起きたなら、お腹を見せて喉を鳴らす。 あおむけの親密度の証。白を撫で回す、朝の儀式。 キッチンに立つ間、前脚を揃えて待っているのがかわいい。 なうん、なうん、お散歩にいこうよ。 雨降りは、飛びかかる。 雨の数だけ、抱きつくのなら、雨が好きになるよ。 (秋の待ち伏せ) #pw秋組

2013-10-26 11:01:27
春森しゆう @junju_usako

去年の楓の赤さを覚えていますか。緑からのグラデーションを見せてくれました。 何色と言えないものにも綺麗さがあって、一本の木を揺らします。 銀杏並木はかなしさが積もるから、ひとりでは歩きたくないの。 木枯しが吹き溜まる場所で、待ちぼうけしています。 (秋の待ち伏せ) #pw秋組

2013-10-26 14:16:07
春森しゆう @junju_usako

蹴られた石が硬く凍っていく。 溶かし方を見失ない、熱を伝える手段がない。 それでも同じ山にいたいと、踏みとどまる。 粉々になれれば簡単だろう。 許しを請いたいのにただ見上げている。 枯れ葉のベッドは柔らかいか。 同じ高さで見る日を待ち望んでいる。 (秋の待ち伏せ) #pw秋組

2013-10-26 17:26:07
春森しゆう @junju_usako

小雨の降る中、赤、桃、水色の傘をさし、小菊の苗を買ってきた。 鉢に植え替えてお腹が空いたといえば雨をあげた。 のびのびした小菊が一年後、蕾をつけるのを待ち伏せた。 はじめに黄色。次に白が咲きそうで、桃色はようやく蕾。 いっしょに育っても咲くのは順々。 (秋の待ち伏せ)#pw秋組

2013-10-27 08:04:03
春森しゆう @junju_usako

大声で誰かを呼ぶきみの姿が羨ましくて、 小さな声で嘆いている。 声が枯れてしまうくらいに求めてみたい。 カサカサと葉擦れの音が、胸の中で囁く。 砕けてしまえたら、い、い。 風が冷たい。 陽が射している。 (秋の待ち伏せ) #pw秋組

2013-10-27 09:55:30
春森しゆう @junju_usako

光が浴びたい。 柔らかな、光。 太陽が見えれば、蓄えられるチカラ。 黄色く、発光する指先で、 温めあう土台。 無理をして笑うから、泣き顔を見たくなった。 咲きたくて、降らない光を、待っている。 (秋の待ち伏せ) #pw秋組

2013-10-27 15:58:38
春森しゆう @junju_usako

暖かいと思っていたのに急に秋風が身に沁みた。 上手に受け入れられなくて突き放した、 振り返る景色が柔らかく私を包む。 一年越しの夕焼け空が広がっていく。 分岐点にめじるしをつけておけばよかった。 桃色の雲が手招きしている。 (秋の待ち伏せ)#pw秋組

2013-10-27 18:38:50
春森しゆう @junju_usako

「待ち人来る。ただし連れあり」 年始の御籤は大当り。 連れが連れを、呼び、繋がっていく、待ち人が、 誰も彼も、連れ立って、枯れ葉を、鳴らしている。 先に立つ人と同じ大吉が、一年間有効だ。 切れない縄を、編んでいく。 (秋の待ち伏せ) #pw秋組

2013-10-27 21:35:32
春森しゆう @junju_usako

オケラを抱いた記憶はないのに、あの小さな手が、手の平を押し上げる感触を思い出す。 観察するほど、わからなくなって、そっと地面に還した。 住む世界が違った。体温が違った。 手は、硬かった。 触れたから知れた土中の温度。 待ち伏せても、もう出逢えない。 (秋の待ち伏せ) #pw秋組

2013-10-27 23:45:49