同題ss

BSRの同題ss
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ひかる @hikar_iks

【親就/あと僅か】触れそうで届かない指先が空を切る。風が指に当たる感覚に舌打ちをし、名を呼ぶ。「毛利!」苛立ちが上乗せされ割れた声に、漸く苛立ちの張本人が振り向く。「叫ばずとも聞こえておるわ」早くせねばと呟かれた声は鬼には届かず。瀬戸海に夕日が沈むまであと僅か。 #同題ssBSR

2015-07-19 22:07:27
ひかる @hikar_iks

【落葉/親就】はらりはらりと、頭上からあらゆる色が降り注ぐ。「すっかり秋だなぁ」呑気に呟く鬼に一瞥をくれて、無言で歩き出す。紅葉が見たいと言い出したくせに、どこに行きたいとも言わずただ歩を進めている。「宛てのない散歩もいいなぁ」まんまと策にはまっていたらしい。 #同題ssBSR

2014-10-08 19:41:45
ひかる @hikar_iks

【マリオネット/親就】毛利の為に踊れ。それが、己が使命だと思っていた。しかし、男は言う。「悲しいな。それじゃまるで、操り人形じゃねぇか」侮辱されたと認識するのに時間を要した。面白い。なれば人形なりに存分に踊ってくれると、己を見下す鬼に向かい口元を歪めて見せた。 #同題ssBSR

2014-10-08 19:41:20
ひかる @hikar_iks

【吸収/親就】切り裂かれた腕から鮮血が散る。まるで花弁が舞うようだと眺めていたら、前方あら舌打ちが聞こえてくる。「切り落とし損ねたか」物騒な物言いに顔を上げると、頬に跳んだ紅を舐め好戦的な表情を浮かべる毛利に思う。血から思考が混ざり、一つになれればいいのにと。 #同題ssBSR

2014-10-08 19:41:01
ひかる @hikar_iks

【遣らずの雨/親就】立ち上がった瞬間、襖の外からぱらぱらと音が響いてきた。「あー…こりゃ、一雨来たか。アンタもついてねぇなぁ」ヘラリと笑う鬼を一瞥し、そろりと襖を開ける。庭に咲き誇る草花は、懸命に雫を弾いていた。これでは帰れぬ。溜息一つ、帰路を諦め座り直した。 #同題ssBSR

2014-10-08 19:40:27
ひかる @hikar_iks

【口紅/親就】ぼんやりと顔を眺めていたら、訝しげな表情を向けられる。「何をじろじろ見ておる」「いや、紅が似合いそうだなって」直に告げれば不意に近づく顔。チリリと痛みを感じた時には離れていて。「どうだ、似合うか」紅い唇。噛まれた唇で笑みを作る。「あぁ、似合うな」 #同題ssBSR

2014-09-30 11:06:36
ひかる @hikar_iks

【涙雨/親就】野郎共の仇を討って世にも泰平が訪れた。恐らくこの世の全てが待ち望んだ平和がある。俺自身も、漸く野郎共の墓に顔向けできると、思っていたのだが。重みを含んだ滴を零す空を見上げる。「何でこんなに、晴れねぇもんかね…」降り続く涙雨は、俺の物か、お前の物か。 #同題ssBSR

2014-09-11 11:26:52
ひかる @hikar_iks

【梟/親就】黙して周囲の動向を察知し、動くときは気配を殺す、気づいた時には爪が食い込む。「アンタ、梟みてぇだな」言えば顔を顰める。「あれほど悪食ではないわ…」「気に入らねぇか」「我は至高の品しか食さぬ」そう告げ見据える絵図は大阪。「怖いねぇ」本音が知らず零れた。 #同題ssBSR

2014-09-08 12:38:09
ひかる @hikar_iks

【霖雨/親就】長雨に枯れている男がいる。「大好きなお天道様が見えないからって腑抜けすぎだろ」声を掛ければのろのろ振り返る。「喧しい。日輪はきっと我に失望してしまったのよ」下がる頭を無理に掴んで上げさせる。「上向けっての」久方ぶりに雲の切れ間から光が差した。 #同題ssBSR

2014-09-08 11:50:09
ひかる @hikar_iks

【肉/親就】「アンタのトコの飯は旨いんだが、なんてぇか…」「食いたくないのならば食わずともよいわ」「違ぇって」神妙な面持ちで下らぬことをほざく鬼にため息をつく。「肉など滅多に出ぬわ」「肉ね…」とっさに腕を掴まれる。「じゃあ、主菜はアンタだ」ぎらつく鬼に、今宵も。 #同題ssBSR

2014-09-01 14:42:45
ひかる @hikar_iks

【稲穂/親就】領内の田畑を巡る。目当てがあるわけでもなくただ風景を眺めていると、背後から大きな足音が追ってくる。「あぁ、稲穂の頭が垂れてる。今年は豊作だなぁ」つられて目を向ければ、確かに重く垂れた稲穂が一面に広がっていた。間もなく白露、実りの季節まであと少し。 #同題ssBSR

2014-09-01 12:57:48
ひかる @hikar_iks

【忸怩/親就】目を覚ますと、既に日が高い事に気づく。慌てて身を起こそうとするがびくともしない。視線を下げれば、抱きしめる日に焼けた腕。「起きたのか。アンタ昨日、気やっちまって」背後からの声に、昨夜の痴態が蘇る。忸怩たる思いに、思わず日輪から顔を背けた。 #同題ssBSR

2014-09-01 12:48:56
ひかる @hikar_iks

【負担/親就】「何でだよ…」新しい道を模索していただけだった。友人達を見ていたら、自分達もそれが出来るのではないかと。決して、負担や苦痛になりたいわけではなかったのに。一体自分たちはどこでボタンを掛け違えてしまったのか。「元就・・・!」絞り出す声、もう届かない。 #同題ssBSR

2014-08-08 21:54:24
ひかる @hikar_iks

【空白/親就】ふっと会話が途切れる。遠くの波の音だけが響いてくる中、それでも気まずさや居心地の悪さは感じず。ほう、と酒精に火照った息を吐き出す。そのまま戯れに寄り掛かれば、明らかに狼狽える大きな身体。何だか愉快になってしまい、空白の時を自ら破り、笑ってみせた。 #同題ssBSR

2014-08-08 21:54:08
ひかる @hikar_iks

【鵙/親就】いらぬ感情と切り捨てられれば、どんなに楽だったか。忍び込んできた無礼者に短刀で応戦するも、素手の相手に敵わぬのはいつものことで。「忌々しい…社殿の屋根に張り付けてくれようか」「はっ、俺をはやにえにでもする気か?」無理だと言外に言われ、目を伏せた。 #同題ssBSR

2014-08-08 21:54:01
ひかる @hikar_iks

【やまどり/親就】永くあの凛とした気配に触れていない。大海原へと飛び出したのは自分であるのに、会いたい、顔を見たい、触れたいと思う。身体が大きい自分には狭いくらいの寝床すら、妙に広く感じてしまって仕方がない。「山鳥の尾の…」かつて読んだ書の唄を、今更共感した。 #同題ssBSR

2014-08-08 21:53:50
ひかる @hikar_iks

【帰らないで/親就】出会いがあるから、別れがあるわけで。唐突にやって来る輩は、知ってか知らずか、時として己を惑わせる。「そろそろ暇にしねぇと」その言葉に、微かに肩が揺れる。我ながら女々しいと思いつつ、外聞を気にして言えない言葉の代わりに、翻る裾をそっと掴んだ。 #同題ssBSR

2014-08-08 21:53:43
ひかる @hikar_iks

【水たまり/親就】足元がチカチカ眩しくて、何かと目を向ければ、広がっていたのは青空を反射した水たまり。「すげぇ雨だったからなぁ」先日まで降り続いた雨は、至る所に痕跡を残していて。「またぶすったれてんだろうなぁ」陽光が無いと機嫌が急降下する隣人に思いを馳せた。 #同題ssBSR

2014-08-08 21:53:31
ひかる @hikar_iks

【叡智/親就】気づいた時には既に海を挟んで睨み合っていた。決して討ち取りたいと思ったわけではなかったはずだが。それでも幾度となく刃を交え、互いに少なくない傷を負っていた。どうしてこうなったのか、最早わからぬ。もっと知恵が、何にも勝る叡智があれば、あるいは…。 #同題ssBSR

2014-08-08 21:53:23
ひかる @hikar_iks

【帰り道/親就】弩九で海上をひた走る。夜明けの海は凪いで、水面は顔を覗かせた日の光に照らされ、キラキラと輝いていた。肌を滑る風が、つい先ほどまで腕に抱いていた細身を思い出させて、知らず知らずのうちに穏やかな気分になる。次に抱けるのはいつか。隠れた逢瀬の帰り道。 #同題ssBSR

2014-08-08 21:53:14
ひかる @hikar_iks

【影絵/親就】書を認めていたら、いつの間にか日輪が西へと傾いていた。と、暫く騒いでいた来訪者が静かになっている事に気づく。ついと気配の方に顔を向けると、障子越しに影が映っていた。「犬」手で口をはくはくさせた犬が形作られた。「貴様は童か」思わず笑みが浮かんだ。 #同題ssBSR

2014-08-05 17:17:29
ひかる @hikar_iks

【蔦/親就】海を挟んで北と南の睨み合い。諸国に目を向けていても、頭の片隅にちらりと留め置かねばならぬ相手。理由もなく戦を吹っかけてきたかと思えば、同じく理由もなくフラリと酒を交わしに来る。どうしてもついて回る因縁。それはまるで蔦のよう、絡み付いて、離れない。 #同題ssBSR

2014-08-05 17:17:17
ひかる @hikar_iks

【確認/親就】真田に討たれたと噂で聞いた男が姿を見せた。騒ぎ立てる野郎共を黙らせ、傍に駆け寄る。「本当に、毛利か…?」「ふ…よもや我の顔を忘れたか」この状況での減らず口に思わず顔が綻ぶ。この悪態、傷だらけで尚整った顔、間違いない。好敵手の帰還、しかと認めた。 #同題ssBSR

2014-08-05 17:17:04
ひかる @hikar_iks

【嫉妬/親就】あちらへフラフラ、こちらへフラフラ。鬼の放浪癖は今に始まった事でもないが、同盟が成ってから全く顔を見せぬ阿呆に苛立ちが募る。「ええいバカ鬼め、全く来ぬではないか」口に出してから、これではまるで恋仲を待つ女の様だと気づいて、頬がカッと熱くなった。 #同題ssBSR

2014-08-05 17:16:55
ひかる @hikar_iks

【月光/親就】月明かりの下、朱色の社は幻想的に見えた。「何を呆けている」言われ、口を開けて見上げていたことに気づく。「いや、まるでこの世じゃねぇみてぇだなぁって」視線を声のほうに向け、息を飲む。淡い光の中、毛利が人ならざる者に見えて。手を離すまいと抱きしめた。 #同題ssBSR

2014-08-05 15:40:17
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