忍殺風 魔法少女まどか☆マギカSS 「スラム・スラムド・バイ・ザ・ウォーマシーン」 #1

文豪の魔法少女・アキネイター作。ネオグンマを舞台としたサイバーパンク・プエラマギ活劇「ウィッチハンター」の私家翻訳物 実際はニンジャスレイヤーを元にした「魔法少女まどか☆マギカ」の二次創作小説。アトモスフィアだけを参照しているので忍殺知識ゼロでも大丈夫ですが、こっそりと叛逆の物語のネタバレがあります。 (感想・罵倒は@gammaray_hmまで。favとかRTもとても喜びます) 続きを読む
4
GammaRay @sizuoka074

円環が崩壊したことで、ネオミタキハラは魔獣と魔女が混在するジゴクめいた世界に。それぞれの思惑で魔女を狩る、四人の魔法少女達の物語が今始める ◆◆◆◆WITCH HUNTER◆◆◆◆ #WCHNTR

2013-11-13 17:04:18
GammaRay @sizuoka074

草部通り午前二時。重酸性雨の含まれる雨が降りしきる暗い街を、明滅するネオンライトが照らす下を、一人の女が歩いていた。雨でよれよれになったブレザーとスカート。あからさまに学生だ。彼女はどこか高貴さを思わせる足取りで、人気のない通りを歩いて行く #WCHNTR

2013-11-13 17:27:44
GammaRay @sizuoka074

それがどれだけ危険なことかは説明するまでもないことだ。急速な経済成長によってきらびやかな発展を遂げた巨大都市・見滝原にそびえ立つ摩天楼が落とす影は大きい。ここ風見野の安宿街には、絶えず獲物を求めてうろついているならず者達の姿がある。弱々しい女子などなにをいわんやだ #WCHNTR

2013-11-13 17:30:41
GammaRay @sizuoka074

ふと『90分休憩二千円』と書かれたいかがわしいホテルの前で、少女は足を止めた。そこで宿を取ろうというのか?いや、違った。彼女はホテルの前にうずたかく積まれた物体。原形を留めないほどに切り刻まれた、赤黒い肉の塊を見つめていた。言うまでもなく、人の死体だ。 #WCHNTR

2013-11-13 17:33:50
GammaRay @sizuoka074

黴と汚物の臭いが混じる路地裏で、人の血肉が放つ臭いはことさらに強烈だった。並の少女なら即座に膝を突き、胃の中の物を全て吐き出しているだろう。だが少女は顔色一つ帰ることなく、死体を見据え、周囲に轟き始めた謎の破裂音に耳を傾けていた。 #WCHNTR

2013-11-13 17:35:42
GammaRay @sizuoka074

生臭い風が、少女の艶を失った髪を撫でた。果たしてなにが起こっているというのだろう?冷たい雨の中に、青白い霧めいたものが浮かび始める。それは何か?亡霊その物だ。青く揺らめく、半透明な男達の影。魔獣と呼ばれる魔なる存在。少女は眼を細め、その影達と対峙した。 #WCHNTR

2013-11-13 17:38:05
GammaRay @sizuoka074

『力士』と書かれたネオンライトの看板が明滅すると、少女の顔に険が宿った。眼前に立ちはだかる亡霊達が、自らに敵意を向けていることは火を見るよりも明らかだ。 #WCHNTR 

2013-11-13 17:40:19
GammaRay @sizuoka074

稲光と雷鳴が轟く。少女の覚悟していた瞬間は訪れなかった。だがなんと見よ。突然亡霊達の体が真横に裂けると、青白い霧へと変わっていくのだ!周囲を疾走する風切り音。なにかが高速でほむらと亡霊の周りを旋回していた! #WCHNTR

2013-11-13 17:42:58
GammaRay @sizuoka074

瞬間、竜巻めいた突風が起こった。少女が形の切れ長の目を閉じ、目を開いたその時にはもう、亡霊と切り裂かれた死体はなかった。代わりに、ぼろきれのような防塵コートを纏った少女が、当然のように立っている。 #WCHNTR

2013-11-13 17:44:55
GammaRay @sizuoka074

「危ないところだったね。でも、もう大丈夫だよ」コートを纏った女は言った。髪は緑。ソバージュだ。顔つきは若々しく、恐らく美人のはずだったが、その頬は薄汚れており、幾分美しさを損なっていたが、体つきは女らしく、肉感的な装いだった。 #WCHNTR

2013-11-13 17:48:04
GammaRay @sizuoka074

コートの女は右手にはめられた銀の指輪を見せつけるように語りかけた。「あれは魔獣っていうんだよ。人をとっつかまえて食っちゃう怪物。君ももう少し遅かったら、あの人達と同じ事になってた」どうということはなさげにボロ女が言うと黒髪の少女は頭を下げた。 #WCHNTR

2013-11-13 17:50:17
GammaRay @sizuoka074

「ありがとう。あたなには命を救われたわね」「気にしなくていいさ。人助けってのは、魔法少女のお仕事だからね」ボロ女は近づき、近くの廃ビルから注ぎ落ちてくる水で手を清めてから握手を求めた。「あたしは『もてぎ』。『栗千葉もてぎ』。あなたは?」 #WCHNTR

2013-11-13 17:53:07
GammaRay @sizuoka074

黒髪の少女は握手を帰した。「ほむら。暁美ほむらよ」「かっこいい名前!……でもここにいるのは良くないよ。見ての通り、そう安全な場所じゃないからね」もてぎの言葉に嘘はなかった。二人が横目で周囲を探れば、そこには少女達を観察するような、ねばつく視線が満ちている。 #WCHNTR

2013-11-13 17:55:13
GammaRay @sizuoka074

「一体こんなところでなにをしてるの?」「……人捜しよ」「人捜し?」もてぎはそこで、始めてほむらと名乗る少女の風体、いや、彼女の装いそのものに気付いた。ぼろぼろにほつれたブレザー。くたびれきった靴。そして深い隈の刻まれた目。もてぎにはわかった。世捨て人の目だ。 #WCHNTR

2013-11-13 17:58:17
GammaRay @sizuoka074

眼前の年端もいかない――自分とさほど年の変わらぬ少女が背負ったなんらかの小さな不幸を、もてぎは敏感に察した。捨て置くわけにはいかないだろう。もてぎは自身の純粋な善良性から、ほむらに手を差し伸べたくなった。 #WCHNTR

2013-11-13 18:00:41
GammaRay @sizuoka074

「あたしの家が近くにあるんだ。物知りな連中もいっぱいいる。君の人捜しを手伝えるかはわからないけど、屋根ぐらいは貸してあげるよ」もてぎは顎で路地の先を指した。「ありがとう。恩に着るわ」「いいっていいって」ほむらは初めての笑みを浮かべた。長い夜の始まりだった #WCHNTR

2013-11-13 18:04:18