【覚え書き】短編プロット

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江田・K【小説書き】 @koudakei

夢を見ていた。追いかけられる夢だ。大体において終われる系の夢なんてものはロクなもんじゃない。たとえ相手が女の子だとしても、だ。

2010-10-13 16:08:21
江田・K【小説書き】 @koudakei

見知らぬ廊下を全力で駆け抜け、何段あるかもわかっていない階段を転がるように下りて、俺は校舎を繋ぐ渡り廊下に出た。そこでようやく振り返る。……いない。息を大きく吐き、吸い込んだ。膝に両手をついて呼吸を整える。頬を伝う汗が「あらあら」ハンカチで拭き取られた。「なっ…」

2010-10-13 16:14:53
江田・K【小説書き】 @koudakei

そこにいるのは小柄な女の子だった。右手にはハンカチを、左手には釘バットをぶらさけて、笑顔。

2010-10-13 16:17:10
江田・K【小説書き】 @koudakei

俺を追いかけていたのはコイツだ。息ひとつ切らしていない。というか、どこから出てきやがったんだ。内心の疑問に応えるように、彼女はゆらりと釘バットを掲げて見せた。「私、ハンバーグが好きなの」……は?

2010-10-13 16:21:51
江田・K【小説書き】 @koudakei

「挽き肉美味しいよね」彼女はバットをくるくる回しながら、ハンカチを仕舞った。駄目だ。「食べていい?」思い出せ。このワケのわからん鬼ごっこの開幕に際して、コイツはなんて言った? 「私、貴方が好きなの」だ。ハンバーグと同じ調子で告白してきたのを俺は反芻する。

2010-10-13 16:43:09
江田・K【小説書き】 @koudakei

「えいっ」釘バットが脳天目掛けて降ってきた……

2010-10-13 16:45:44
江田・K【小説書き】 @koudakei

脳天、否、顔面を襲う衝撃に俺の意識は覚醒した。くすくすという笑い声が俺に向けられている。「斬新な目覚め方だな転校生」数学教諭の嫌味を無視して俺は顔を上げた。痛打した顔面をさすりつつ黒板を見ると端から端までびっちりと数式で埋まっていた。無論、ノートは白紙である。寝てたからな。

2010-10-13 17:46:11
江田・K【小説書き】 @koudakei

数学教諭は「転校生、問8だ。やってみろ」と意地悪顔で言った。名前くらい覚えろよ(俺も覚えてないのでお互い様だが)。問8ね…。あ、これは寝てたらわからんレベルの問題だな。本当にやなヤツだ。だが、俺には解ける。

2010-10-13 17:58:39
江田・K【小説書き】 @koudakei

何故か。あの釘バットにブチ割られることのなかった俺のアタマの中には、今や、世界の全ての知識が収まっているからだ。いや、俺はビョーキではない。あのバット女のようにトチ狂っているわけではない。ある意味においては今の俺があるのはアイツのおかげと言えなくもないのではあるが。

2010-10-13 18:03:20
江田・K【小説書き】 @koudakei

ともあれ俺は完璧な解法を黒板に書き上げ、数学教諭を片目でねめつけた。そう、片目で、だ。

2010-10-13 18:05:16
江田・K【小説書き】 @koudakei

俺は席に戻ると夢の続き、というか、あの日のあの続きを思い出した。窓の外、視界いっぱいに生い茂る、巨大な樹を眺めながら。

2010-10-13 18:13:46