タイムスクープハンター code:864192 「抜錨せよ!カレーおつかい奮闘記」 1

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伊月遊 @ituki_yu

彼女たちは艦娘の中でも補欠と呼ばれる種類の組である。 第二次世界大戦中の日本は物資が乏しくおいそれと艦娘を動かすことが出来ず、実際に出撃出来るのは実働部隊に選ばれた一部のエリートだけで、大半の艦娘はずっと倉庫の中で眠っていたという。

2013-11-20 23:41:45
伊月遊 @ituki_yu

当時の海軍日誌には一度も戦闘に出ずに終戦を迎えた娘が居たとの記述が残っている。これから分かるように、その競走は熾烈の一言であったという。 菊月「だが、一度で良いから出撃してみたいものだよ」 隼鷹「えー。あたしは遠征が良いー。痛いのやだよー」 那珂「あー、隼鷹、装甲薄いもんねぇ」

2013-11-20 23:44:55
伊月遊 @ituki_yu

  長門「みんな、食事しながらで良いから聞け!」   唐突に食堂に響く、良く通る声。この鎮守府の秘書鑑である長門だ。 皆が一斉にそちらを見ると、長門は大きく咳払いをして、それから言った。   長門「既に聞いている者も居ると思うが、ここで新入りを紹介する!ほら、出てこい」

2013-11-20 23:48:13
伊月遊 @ituki_yu

長門は食事の入り口を見やる。 数秒遅れて食堂の入り口から静かに現れたのは、小さな人影。 小柄なうさ耳カチューシャの、謎の生き物のぬいぐるみをぶら下げた少女であった。 島風「島風よ、よろしく」 ぶっきらぼうに頭を下げる少女。 おおおーー。 食堂が一気にどよめく。

2013-11-20 23:51:40
伊月遊 @ituki_yu

「なにあれ超かわいいクマー!」 「あれはやばいなー、あれはやばい」 「持って帰りたい」 長門「静まれー!お前ら静まれー!」 秘書鑑の長門が必死で止めようとするが、騒ぎが収まることは無い。 艦娘たちはダブりが多く、新しい仲間が増えることは稀であったのだという。

2013-11-20 23:55:04
伊月遊 @ituki_yu

那珂「ぐ、ぐぅっ・・・、ま、負けられない。アイドルは私よ!」 菊月「無駄だ、あれには勝てない」 隼鷹「うんうん」 那珂「ちょっとー!そんな事言わないでよー!」

2013-11-20 23:58:37
伊月遊 @ituki_yu

長門「静まれー!静まれってー! ・・・ああもういいっ、まだ報告があるんで聞いてる奴だけ聞け! 島風の参入に合わせてこの度、新たな艦隊を作ることになった。二週間後の朝、ヒトマルマルマルに選抜試験を行う!」 おおおーー。 再びどよめく艦娘たち。

2013-11-21 00:01:57
伊月遊 @ituki_yu

長門「聞けっ!きたる12月、我々は大規模な海戦を行う予定だ! 今回の艦隊新造もそれに合わせた物であり、提督はこれにかなり注視しておいでである! 各々錬磨に励み、ベストを尽くすように!以上!」

2013-11-21 00:05:35
伊月遊 @ituki_yu

当時の海軍の記録によると、こうした艦娘の選抜試験は各地の鎮守府で度々行われていたという。 これは各地の艦娘たちの士気や練度の向上に役立ち、また、実任務においても選抜で選りすぐられた艦娘たちは大きな戦果を上げていたとの記録が残っている。

2013-11-21 00:09:11
伊月遊 @ituki_yu

隼鷹「おいおい聞いたかよ!マジだよマジ!」 飛鷹「うそ・・・ホント!チャンスじゃない!」 菊月「この機会、逃してはいけない・・・!」 那珂「ほんとだよ!絶対選ばれようね!」 色めき立つ少女たち。 やはり彼女たちにとって艦隊入りは憧れなのである。

2013-11-21 00:13:39
伊月遊 @ituki_yu

と、その時だった。 島風「ちょっと、アンタたちも参加するの?」 いきなり顔を出す艦娘が一人。 先ほど紹介された島風という艦娘である。 隼鷹「あ、ああ。そうだけど?」

2013-11-21 00:17:03
伊月遊 @ituki_yu

島風「ちょっとー止めてよー。アンタたちみたいなノロマな艦と艦隊組むなんて、考えたくもないわよ」 那珂「・・・え、ちょ」 なんと島風はいきなり艦娘たちを煽ってきた! 突然の言葉に声も出ない艦娘たち。その彼女たちに向かって島風は次々と辛辣な言葉を投げかける。

2013-11-21 00:21:02
伊月遊 @ituki_yu

島風「この島風はねぇ、駆逐艦の最高峰を目指して作られた艦なのよ?スピードだって40ノット近く出るんだから。そんなエリート艦娘の島風の艦隊にアンタ達みたいなノロマが居たら、わたし衝突しちゃうかも。嫌よそんなの」 隼鷹「こっ・・・こいつ!黙って聞いてりゃあ!」

2013-11-21 00:24:50
伊月遊 @ituki_yu

那珂「そーよそーよ!なんなのよあんたいきなり!ちょっとばかり可愛いからって!」 怒りを覚えた艦娘たちが口々に反論する。一触即発の雰囲気である。 互いに睨み合う少女たち。

2013-11-21 00:28:08
伊月遊 @ituki_yu

金剛「Hi!そこまでデース!」 と、その雰囲気を打ち消したのは一人の威勢の良い艦娘だった。 彼女は金剛。一番艦隊の四番艦を勤める、この鎮守府の主力部隊の一員である。 菊月「金剛さん!」 隼鷹「聞いてよ金剛さーん。こいついきなりねー、あたしたちに酷いこと言ってきたんだよー」

2013-11-21 00:31:40
伊月遊 @ituki_yu

一斉に金剛に群がる艦娘たち。 金剛はエリートながらそれを全く鼻にかけず、面倒見が良かったため後輩によく慕われていた。 金剛「話は聞かせて貰いましター。島風サン、どういう事デース?」 島風「ふっ、ふん、事実を言ったまででしょ!私よりグズな艦が一緒だと私も危険なのよ!」

2013-11-21 00:34:52
伊月遊 @ituki_yu

隼鷹「こっ、この野郎!」 金剛「よしなさい、隼鷹サン」 隼鷹「でも!」 金剛「んー・・・確かに、島風サンの言うことには一理あるワネ。私も高速型だけど、他の戦艦とぶつかりそうになった事、何回かあるワ」 隼鷹「金剛さん!」 那珂「こっ、金剛さぁん!こんな女の肩持つのぉ!」

2013-11-21 00:38:29
伊月遊 @ituki_yu

金剛「まぁまぁ、あくまで一理あるとだけデース。ただー・・・島風サン?あなたちょっと勘違いしてマース」 島風「勘違い?」 金剛「別に今度の新艦隊はあなたの為のものじゃありまセーン」 島風「えっ!?」 金剛「あなただって艦隊入り出来ないかもしれないんデース。特別扱いなんてしまセーン」

2013-11-21 00:42:06
伊月遊 @ituki_yu

島風「そ、そんな!」 金剛「それに今回の選抜テストは新艦隊を丸ごと決める物デース。Team workも大事な選抜基準デース」 島風「・・・」 金剛「んー・・・そうだ、良いことを思い付いたワ!あなた達、同じTeamで今度の選抜試験を受けなさい」 飛鷹「はぁ!?」 那珂「えぇ!?」

2013-11-21 00:45:39
伊月遊 @ituki_yu

島風「ちょ、ちょっと待ってよ!何でそんな話になるの!」 金剛「フフーフ、何か問題が?」 島風「ありよあり、大ありよ!」 金剛「問題ありまセーン。あなたはnew face。まだここでの勝手も分からないでしょ?他の子に色々lectureして貰う良いchanceデース」

2013-11-21 00:49:23
伊月遊 @ituki_yu

飛鷹「何ですそれ!私たちの意思はどうなるっていうんですか!」 金剛「あなた達にも良いchanceだと思いますヨ?彼女、こう見えてさっきの自慢は嘘じゃありまセーン。40ノットのspeedは選抜の大きな武器になるはずデース。ね?どっちにとっても良いことじゃないですカー?」

2013-11-21 00:53:14
伊月遊 @ituki_yu

隼鷹&島風「「冗談じゃない、なんでこんな奴と!」」 隼鷹「真似するなよ!」 島風「あんたこそ!」 金剛「フフーフ。早速息ピッタリね。これなら大丈夫そうだワ。はいー決まりデース!」

2013-11-21 00:56:23
伊月遊 @ituki_yu

そうやって半ば強引に話を進める金剛。 こうしてうやむやの内に、ここに新たなチームが誕生したのである。 前編 完

2013-11-21 00:58:05