- mrmd_atsushi
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2013/11/21 at night.
2013/11/21 08:20
2013/11/21 15:00
手のひらサイズの、小さなホールケーキを作る。甘さを抑えた、さらりとしたホイップの。みどちんのお願いだからしょうがなく。そうじゃなければ、高尾のためのケーキなんて。
2013-11-21 15:00:132013/11/21 17:00
約束の時間ぴったりに、店のドアベルがカロンと鳴った。みどちんがそろりと中へ入ってくる。「いらっしゃーい」厨房から顔を出すと、その表情がほっと緩んだ。たしかにここは男ひとりで入るには、ちょっと敷居が高いかもしれない。
2013-11-21 17:00:06「こちらでよろしいですかー?」カウンターの内側から、出来上がったケーキを見せる。酸味を抑えたくだもののチョイスをしたせいで、メッセージプレートもないデコレーションはずいぶんとシンプルな印象だった。
2013-11-21 17:05:04「しょーしょーお待ちください」ケーキに合わせた大きさの、紙の箱を組み立てる。上手く目を見れないせいで、みどちんが戸惑うことには気付いてた。「……急に無理を言ってすまなかった」「別にー」「怒っているか?」「なんでー?」ケーキを箱に収めて、シールを貼る。
2013-11-21 17:15:04作業を終えて顔をあげると、みどちんが難しい顔をしていて、心臓がぎゅっとなった。「みーどちん」惑うような視線がオレを見た。「ごめん」「え?」「そんな顔させてごめん。怒ってないからへーきだし」
2013-11-21 17:20:05「敦……」「アイツのお祝い終わったら、帰ってきてくれるでしょ?」「あぁ」こくりと確かに頷いてくれるから。「ならいーよ」手を伸ばして、頬をそっと一度だけ撫ぜた。そうすると、喉元を撫でられた猫みたいに安心するのを知っている。
2013-11-21 17:25:05箱の持ち手に、せめてもの彩りとしてリボンを巻いた。オレの譲歩を汲み取って、みどちんの表情がほころんだ。「いってらっしゃい」「いってくる」カロンとまたベルがなって、こげ茶色の扉の向こうに、みどちんは溶けて見えなくなった。
2013-11-21 17:30:052013/11/21 20:40
「ただいまー」暗い部屋に帰ることも珍しくないのに、なぜか今日はやけに堪えた。空気もよけいに冷たい気がする。一人分の食事を作る気にもならなくて、余り物のケーキで済ませてしまった。
2013-11-21 20:40:042013/11/22 01:30
携帯の着信で目が覚めた。いつの間にか眠り込んでいたらしい。ロックを解除して回線を繋ぐと、オレを呼ぶみどちんの声がした。『敦』「みどちん……?」『すまない。今から帰るのだよ』「うん……」
2013-11-22 01:26:48寝ぼけた頭でみどちんの謝る理由を考えた。よくわからないままに頷いて、見やった時計の示す時刻に一瞬で目が覚めた。「今どこにいるの」回線の向こうで、みどちんの気配が張り詰めるのがわかった。
2013-11-22 01:38:23「帰るって、もう電車ないでしょ」『最寄りの駅にはいるのだよ。時間が時間だから連絡を入れただけだ』「商店街から大通りに出てコンビニの角曲がって小学校側の歩道歩いてきて」一息に告げる。
2013-11-22 01:41:35