それでも私はお祈りを忘れない

本作品は大冒険!ゆけゆけ☆おさわりアイランドの2次創作です。原作はR-18ですがここでは全年齢なので誰が読んでも構いません。後、百合と微ヤンデレ(多分なっていない)注意です
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天宮ユウキ @amamiya1yuuki

―えろモン、それはおさわり島に住まう女性の生き物。

2013-12-06 23:56:10
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

見た目や能力はほとんど人間のそれとは変わらない。

2013-12-06 23:57:20
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

ただ見た目が同じものの個体差については詳しいことは分かっていない。

2013-12-06 23:58:01

トキオイ市の外れにある教会。その中の奥にある大きなガラススタンドの前でシスターであるフローラは一人静かにお祈りをしていた。

すると突然扉の方から低い音が聞こえ、明かりが出てきた。

誰かと思いフローラが後ろを振り向くと見慣れた顔がそこにいた。小さな顔付きでつぶらな瞳の小柄な少女。天竜みほしが教会にやってきたのであった。フローラとみほしは前から仲の良い友達でありお互いに色んなことを話したりする。
今日も何かお話でもするくらいだろうかとフローラは軽く考えていたがみほしの顔を見ている限りそうではないようだ。

「ねえ、みほし達はなんで移住者に頼らなきゃいけないの?」

みほしの口から出たのはそんな言葉だった。ずっと昔からおさわり島は移住者がやってきたり住み着くことで生活が成り立っていた。いや、他の場所でもそうらしい。
この生活は年々限界がきており、至る場所で崩壊の危機にあっている。
おさわり島もその危機を迎えようとしていることはもちろんフローラの耳にも届いている。だからといってフローラのすることは変わらない。昨日も今日も明日もお祈りを続ける。そして移住者達や他のえろモン達の力となる為、体さえも捧げる。

「頼るじゃないわ。お互いが支えあって生きるのよ。それはどこだって同じです」
さも当然かのように答えるフローラにみほしは「それは神様に見放されても言えるの?」と問い詰めた。
今のみほしには問い詰めたくてしょうがない。それが今みほしが抱えていたことだから。
フローラは少し迷いを見せたもののいつものように答えた。
「・・・確かに神は信じるべきものです。しかしたとえ見放されたとしても私は神を信じ続けます。それが私のようなシスターのなすべき事だと思っています。そして人々に己の信じる道を開かせる」
「つまりフローラはどんなに裏切りられても諦めないと言いたいわけね。でもそれだと最後には死んでしまうかもよ?」
「そうです。それが私たちではないのですか?」
「!?」

この言葉にはみほしは唖然とした。もしかしたら胸の内にあるもやを払ってくれるのではないだろうかと感じた。

「残念ですが、移住者無き場所に私たちは生きられないのです。そういう風に神は創ったのですから。その原理は科学で持ってさえも証明されています。つまり移住者の存在は必然です。だから私たちは移住者たちに自分を売ってでも住ませようとします。それは仕方がないことであり私も理解しています。だけどもどんなに体を売ったところで移住者に飽きられてはおしまいです」

みほしはそこまで聞くと何かを決心したようだった。

「・・・そう。今からみほしの家に来てくれる?見せたいものがあるの」
「ええわかりましたわ」
フローラにはなんのことかはわからなかったが大事なことなのはすぐに理解できた。

みほしの家に着いた二人。久しぶりに見たみほしの家にフローラは不安になっていた。
「ねえそういえば、みほしは前に移住者さんと住んでいたのよね?」
「・・・。ええ、それはこの部屋を見れば分かるよ」
「え・・・」
ある部屋を入ってみるとそこには切り刻まれた痕がいたる所にあった。それ以外にも穴やひび割れが部屋中にあった。
「みほしこれ・・・」
「そうよ、別れちゃったのよ。相手とケンカしっちゃった」
「みほし、何かひどいことされたの?!」

心配になってみほしの身の安全を確認したがみほしの口から出たのはフローラの予想に大きく反するものだった。

「違うわ。みほしが一方的にやったの」
「うそ・・・」
あまりの衝撃でくらくらしまった。
「本当よ。違う子の所に行くに飽き足らずみほしを捨てようとしたの。役に立たないって。役に立たないってみほし達にとってどういうことなのか分かってなかったの。だからみほしが教えてあげるために縛って閉じ込めておいたの。ふふふふふふふ」

「まさかみほし・・・虐待して絶対に残るよう調教しようとした・・・?」
「したわ。あの怯えた顔、今でも覚えている。『助けて、助けて、捨てようとしたこと許してください!』そんな懇願ばっかりだったわ。抵抗しても鞭や刃物で心ゆくまで愛をこめたの。ココロもカラダもを全部ボロボロにしてみほしを見捨てないように教え込んだのよ」
「みほし・・・自分が何をしているかわかっていますか!?」
「ええ、分かっているわ。こんな犯罪紛いなことをすればいつか捕まるってことでしょ?犯罪は犯罪。フローラに見せちゃったから後で―」
「違います!!そんなことではありません!!」

フローラの犯罪以外の理由で怒ることはみほしには理解できなかった。むしろみほしはやって当たり前の気持ちである。

「?フローラはなに怒っているの?犯罪じゃないならじゃあなに?」
「じゃあなに?みほしのしたことは私達えろモンと移住者達の正しい生き方なんですかと聞いているんです!!みほしがしたことは正しい生き方なんですかって!」
「そうよ?どんなに身を汚しても生きる。それが『私達えろモンの生き方』じゃない」
「あっ・・・」
フローラは自分の言ったことを少しだけ後悔した。下手に生き方を説いてこんな惨劇を見せられて気分が悪い。
「それよりも・・・」
みほしは急にフローラは優しく包むように抱きしめた。優しく抱きしめられると照れたり興奮したり恥ずかしがったり嬉しくなったりするものだがこの時は恐怖以外何も感じられなかった。もう一つあるとするなら―

―狂気である。

「みほし・・・フローラと一緒ならこのまま朽ち果てて死んでしまってもいいかな・・・ってダメ?」
「みほし、今のあなたの要求には答えられません」
「なんで・・・みほし達友達じゃない?でも友達から恋人になってもいいじゃない。それがどうしてダメなの?」
「私は別に友達から恋人になることを否定しているわけではありません」
「じゃあなんで?なんで?なんで??なんで???みほしの告白を断るだけの理由を言いなさいよ!!」
「それは・・・今のあなたでは恋に落ちないのです」
この発言自体はフローラのでまかせであった。しかし気持ちは本当にみほしの重圧的な
想いは受け入れ難かった。
「なにそれ・・・。誰かの為に体を捧げるフローラが何言ってるの?みほしの涙を拭ってくれるだけじゃなくて苦しかった気持ちを体で伝えた時も全て受け入れてくれた。それもみほしだけじゃなくて他の娘も移住者にも。フローラだって実際に移住者に見捨てられた時はあんなに悲しそうだったじゃない。フローラが泣いてる姿はとてもとても悲しかったのに。今じゃあみほしの愛も受け入れる事もなくなったのね」
「・・・」
フローラはただただ黙っているだけだった。みほしの言葉の刃をひたすら受けても耐えるだけ。
「フローラは体を抱くことが好きだったの?シたいから今までやっていたの?違うでしょ。心の底から愛を理解していたから許したんでしょ?だったらみほしも・・・」
「今のみほしの愛に理解はできませんし許そうとも思いません」
「え・・・?フローラなんて・・・」
みほしはフローラの言葉が信じられず肩を掴みフローラの顔を見つめた。

「なんでそんなこと言うの?ねえ、みほしと付き合ってよ。付き合って。結ばれてよ。いいからみほしと結ばれてよ!」
「やめてください!」

フローラは思わず、みほしに平手打ちをしてしまった。同時にフローラがみほしの頬を叩いた音が部屋中に響き渡った。やってしまったと後悔しながらみほしの表情をうかがうと叩かれた痛さよりも思いをぶつけてくれたことに対する喜びで満面の笑みになっていた。みほしは赤らめて艶っぽく2回呼吸している。
「ねえ、そんなんでいいからみほしを愛してよ。見捨てないでよフローラ。ねえ・・・もう誰かから裏切られる生活や生き方なんて嫌だよ。なんでこんなバカみたいに苦しい思いをしないといけないの?そうだ、フローラ今移住者いないから教会とか生活が苦しいでしょ。みほしね、今ならフローラの為にこの体売ってもいいよ?それでいいよね。みほしそろそろフローラと結ばれたい」
「そんなことしなくてもみほしと私はとっくに結ばれていますよ」

「ひゃう!?」
今度はフローラの方からみほしを抱きしめた。みほしの時よりもずっと強く。
「フ、フローラ?」
「もう何も言わなくていいです。みほしが私に依存したくなるくらい辛い思いをしてきたならもっと早く気づいていれば・・・。私が早くみほしの悩みを聞いていればみほしのことをもっとお祈りしていたのに」
フローラの突然の謝罪にみほしは逆に焦ってしまった。
「フローラ、みほしは別に好きでやるから・・・」
「それでもよくありません。みほしのことだから毎日お祈りをしたいんですよ」
「フローラ・・・う、うう。」
「いいんです。今こうして生きてる限り誰かの幸せを祈れるのですから。私はそれで十分です。そこに愛してくれるえろモンや移住者が出てくればもっと幸せになれるというだけの話です」
「うわあああああああああああああ!!」
みほしはフローラの胸の中で泣きじゃくった。

・・・どのくらいみほしが泣いたのか分からない。一時間かもしれないし二時間かもしれない、もしかしたら半日かもしれない。
みほしが泣くまでフローラはずっと涙ぐみつつぎゅっと抱きしめていた。

「フローラ、お祈りはずっと続けているの?」
みほしは唐突に聞いていた。フローラにとってお祈りは当たり前のことだ。今日も明日も明後日もフローラが死ぬまでやめることはないだろう。
「何言っているんですか?私にとってお祈りは自分の為であり、みほしの為であり、おさわり島のえろモン達の為であり、そして移住者達の為でありますよ」
「そうなんだ。うん、変なこと聞いてごめんね」
「いえ、それよりも気は収まりましたか?みほし」
「うんありがとうね、フローラ」
「ええ、みほし。教会のところでも言いましたが私たちは待つことしかできないかもしれません。ですが、相手を受け入れることはできますし愛し合えることもできます。私がしているのはお互いが愛し合えるためのお祈りなんです。それだけは揺るぎません。では今日はこれで」
「うん、バイバイ」
フローラはみほしの家を去った。彼女はおさわり島がなくなるまでの最後の最後までお祈りを忘れないで続けるだろう。
―完―