神林長平〈かってに〉トリビュート 「ここにいるよ」

ケロイとクックルとマーシの物語 へたっぴな文章でごめんなさい。
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夢乃 @iamdreamers

神林長平(かってに)トリビュート 「ここにいるよ」 #ここにいるよ

2013-12-09 20:38:04

 

夢乃 @iamdreamers

学校から帰ると、すぐに僕は砂漠に出かけていった。宇宙船の掘り出しと、それに、三ヶ月くらい前に見つけた単性族の様子を見るために。掘り出される宇宙船を遠くに見ながら、岩のような単性族に語りかけるのが、僕の日課になっていた。 #ここにいるよ

2013-12-09 20:38:50
夢乃 @iamdreamers

三ヶ月くらい前、いつものように砂漠に出かけた僕は、瞳が灰色になって死んだような思索期・成体の単性族を見つけたんだ。死んだように見えるけれど・・・単性族が死んだ話なんて聞いたことがない。それから毎日、少しずつ、その単性族に水をかけてみた。 #ここにいるよ

2013-12-09 20:39:48
夢乃 @iamdreamers

それから単性族の瞳はだんだんと赤見を帯びてきて、一ヶ月もすると、すっかり普通の単性族の成体と同じくらいまで、輝きを取り戻した。僕は嬉しくなって、それからも毎日、その単性族に会いに行って、いろんなことを喋った。 #ここにいるよ

2013-12-09 20:40:42
夢乃 @iamdreamers

宇宙船のこと。砂漠が広がっていること。おおきくなっている太陽のこと。この星、無性族があと何年かで なくなっちゃうこと。単性族は何も言わずに僕の話を聞いてくれていた。と思う。よくわかんない。それでも僕は話し続けた。 #ここにいるよ

2013-12-09 20:41:29
夢乃 @iamdreamers

その日、いつものように砂漠に行くと、岩のような成体の単性族は消えていた。けれども、単性族がいた辺りに、小竜、幼体の単性族がいたんだ。まるで、成体から産まれたかのように。 #ここにいるよ

2013-12-09 20:42:27
夢乃 @iamdreamers

「きみはだれ?どこからきたの?ここにいた単性族から産まれたの?」 僕は聞いてみた。小竜は 『くるっく~くっくっくる~』 と答えた・・・たぶん、答えたんだと思うけど、何を言っているのか、僕には分からなかった。 「何て言ってるのかわからないや。困ったなぁ」 #ここにいるよ

2013-12-09 20:44:01
夢乃 @iamdreamers

そうだ!マーシなら、単性族の言葉を翻訳できるかも! 「ねぇ、一緒に僕の家に来ない?そうしたら、いろいろお話もできるかもしれないし」 『くっく~くる~』 よくわからないけど、いいよ、ってことかなぁ? 「じゃ、行こう」 僕は家に向かって歩き出した。 #ここにいるよ

2013-12-09 20:45:32
夢乃 @iamdreamers

小竜の姿の単性族も、小さな翼を羽ばたかせて、僕の後ろについてきた。うん、やっぱりさっきは、『うん、行こう』って意味だったんだよ。なんだか楽しくなって、僕は駆けだした。単性族も遅れないようについてくる。 #ここにいるよ

2013-12-09 20:46:23
夢乃 @iamdreamers

「ただいま!友達をつれてきた!」 玄関を開けると、キッチンにいたお母さんにそれだけ声をかけて、僕は二階の子供部屋に上がった。 「めずらしいわねぇ」 とかいう声が聞こえたけど、あまり聞いていなかった。部屋に入ると、まず、待機状態のマーシの電源を入れた。 #ここにいるよ

2013-12-09 20:47:38
夢乃 @iamdreamers

「ねぇ、マーシ、今日は友達を連れてきたよ。でも、なんて言っているかわからないの。マーシなら分かる?」 ちょっと興奮していたかもしれない。 《友達?ああ、その単性族だね。大丈夫、私なら翻訳できるよ》 #ここにいるよ

2013-12-09 20:48:40
夢乃 @iamdreamers

《はじめまして。私は無性族のマーシ。正しくは無性族の一部だけど。あなたは?小竜さん》 マーシは単性族に挨拶した。 『僕は君たちが単性族と呼んでいる種族の一個体だよ。僕たちは名前を付ける習慣はないけど』 #ここにいるよ

2013-12-09 20:50:05
夢乃 @iamdreamers

「そうなの?でもそれじゃ困らない?」 『困ったことはないかなぁ。不便だったら、適当に名前を付けてくれていいよ』 《全性族と付き合うときは、確かに名前がないと不便だね。全性族は他者と共存する種族だから》 #ここにいるよ

2013-12-09 20:51:32
夢乃 @iamdreamers

「じゃ、僕が名前を付けていい?」 『うん、いいよ』 《私も名前を付けるのは慣れていないから、君が付けるといい、ケロイ》 う~ん、でも、いざ考えると、難しいなぁ。・・・そうだ。 「それじゃ、クックル。君の声が僕にはそう聞こえるし」 『クックルか。いいね』 #ここにいるよ

2013-12-09 20:54:05
夢乃 @iamdreamers

こうしてクックルは、僕とマーシの友達になった。それから、僕たちは毎日遊んだ。僕はマーシの携帯端末を持って。マーシがいないと、クックルの言葉がわからないし。夜になると、クックルは僕の家の庭に生えている木の枝につかまって、星を見ながら眠った。 #ここにいるよ

2013-12-09 20:54:46
夢乃 @iamdreamers

クックルと友達になってから一ヶ月くらい経ったある日、お夕飯のときにお父さんが言った。 #ここにいるよ

2013-12-09 20:55:32
夢乃 @iamdreamers

そこで僕は気づいた。 「クックルも一緒に行っていいんだよね」 お父さんとお母さんは困ったように顔を見合わせた。それだけで、答えは分かったようなもの。 「なんで一緒に行っちゃ、いけないの?」 #ここにいるよ

2013-12-09 20:57:56
夢乃 @iamdreamers

「・・・宇宙船はね、大きいけれど、それでも全部の人を乗せるには狭いの。だから、単性族を乗せる余裕はないのよ」 お母さんができるだけ優しく言った。 「それに、単性族も乗りたいとは言っていないし・・・」 お父さんは答えにくそうにいった。でも・・・でもっ! #ここにいるよ

2013-12-09 20:59:36
夢乃 @iamdreamers

「だめだよ!クックルは友達だよ!友達を置いて行っちゃ、いけないよ!」 それを言うだけで、僕はとっても悲しくなった。泣きたくなった。お夕飯の途中だったけど、僕はリビングを飛び出して自分の部屋に駆け込み、ベッドで思いっきり泣いた。 #ここにいるよ

2013-12-09 21:00:43
夢乃 @iamdreamers

いつの間にか、眠っちゃったみたい。朝、お母さんが起こしにきてくれて目を覚ました。悲しみはそのままだったけれど、かなり落ち着いていた。そういえば、竜のお告げを聞いた気がする。何だったろう?クックルが慰めに来てくれたのかもしれない。 #ここにいるよ

2013-12-09 21:01:42
夢乃 @iamdreamers

その日、学校から帰ると、クックルはいつものように木の枝から下りてきて、僕を迎えてくれた。僕は、クックルと一緒に部屋に入った。 #ここにいるよ

2013-12-09 21:02:45
夢乃 @iamdreamers

部屋に入ると、今日学校で考えていたことをクックルとマーシに打ち明けた。 「クックル、一緒に宇宙船に乗ろう?ぬいぐるみの中に隠れていれば、誰も気づかないよ」 けれど、クックルは首を横に振った。 『ううん、僕は行かないよ』 #ここにいるよ

2013-12-09 21:03:54
夢乃 @iamdreamers

「なんで?太陽が爆発しちゃうんだよ?みんななくなっちゃうんだよ?」 『知っているよ。それでも僕は行かない。でも、心配いらない。また会えるよ』 #ここにいるよ

2013-12-09 21:05:18
夢乃 @iamdreamers

クックルは、僕と一緒に行かない理由を、それでも大丈夫な理由、また会える理由を説明してくれたけれど、マーシが翻訳してくれるクックルの説明には難しい言葉がいっぱいあって、よくわからなかった。でも、クックルは落ち着いていて、本当に心配はないんだ、って思えた。 #ここにいるよ

2013-12-09 21:06:16