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木漏れ日を浴びてきらきらと輝く金糸。名を呼んでも反応しない彼の顔をのぞき込むと、伏せられた長い睫毛が頬に影を落としていた。ぐっすり眠っているようだ。怒られるだろうと分かっていながら、隠された翡翠に自分を映してほしくてダンタリオンはその白い頬を指先でつついた。【1.焦がれる】
2013-12-05 11:27:19![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
遠くからでもすぐに分かる後ろ姿。見つけた途端、胸が弾むような奇妙な感覚に囚われる。それが決して不快なものではなく、むしろ心地良いものだから、思わず弛んだ口で彼の名前を呼びながら地面を蹴った。【2.追いかける】
2013-12-05 11:29:03![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
遠くからでも構わず自分の名を呼び駆け寄ってくる男に視線を向ける。悪魔のくせに、こちらに駆け寄ってくる姿はまるで犬だ。恥ずかしいからやめろと言っても聞かないから、今日もウイリアムは拒絶の言葉を溜め息に変えるだけに留めた。【3.諦める】
2013-12-05 11:29:55![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
時折、紅い瞳が飴玉のように甘く優しい色をするときがあるのを知っている。その瞳が向けられているのは自分ではないことも知っている。昔に思いを馳せるその顔を、自分はまだ直視できないでいる。【4.懐かしむ】
2013-12-05 11:31:01![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
望むのならばなんでもくれてやる。そう言って差し伸べた手は払われた。「欲しいものは自分で手に入れる」凛と言い放つ彼に、感嘆するしかなかった。【5.望む】
2013-12-05 11:32:32![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ふと今日は静かだなと考えて、あの悪魔が魔界に戻っているからかと結論づける。手元の本に意識を戻したところで、じわじわと顔が熱くなった。(少しでも、寂しいと思ってしまった自分がいるなんて)【7.想う】
2013-12-05 11:34:42![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
そういえば端正な顔立ちをしているなと思う。ラミアはともかく、マイクロフトの婚約者も誑し込んでいたくらいだ。ふむと観察を続けていると、頬に朱を差して困惑する顔が現れて、これは珍しいものが見れたとなぜだか口角が上がった。【8.見つめる】
2013-12-05 11:35:56![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
最近これはおかしいと自覚したことがある。代理王選挙に重要な彼が、大事で大事でならないのだ。理由はいくつも思いつくがそれがすべてなのかと考えると違うと言いたくなる。悶々と考え込んでいると、アイザックが無邪気に笑いながらこう言った。「ウイリアムに惚れちゃったんじゃない?」【9.悩む】
2013-12-05 11:40:00![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「驚かないで聞いてくれるか」「さあ、内容による」「どうやら俺はお前に惚れているらしい」「……は?」「お前が好きだウイリアム」【10.惚れる】
2013-12-05 11:40:24![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
この男が、今、目の前で言った言葉が、何度も何度も頭の中で繰り返される。いや、いや、待て待て待て。落ち着け。誰が?お互いにだ。パンクした脳が信号を誤る。動けと命じられたのは、口ではなく足だった。【11.逃げる】
2013-12-05 16:52:09