千葉と花奈のクリスマス

ストレンジフルーツのふたりがクリスマスを過ごしたら…小栗さんからのクリスマスプレゼント☆ミ ドキドキとヒリヒリと深々と。ステキなドラマです! 小栗さんが起きて消されたら困るーー!!!!ということでまとめました。 続きを読む
0
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

千葉も花奈も根が幼いので、クリスマスは浮かれていると思います。たぶん花奈が部屋で待っているのでしょう。合鍵で、昼くらいから、千葉の部屋で。千葉は仕事で帰りが遅く、花奈は何かサプライズ的な事を考える。国道沿いのホームセンターで5000円くらいの小さなツリーを買って。

2013-12-24 23:43:48
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

夜。暗い部屋にしょぼいツリーの灯りを点けたまま、駅まで千葉を迎えに行きます。千葉はプレゼントに花奈の好きなレコードを買ってきます。会った瞬間になんの演出もなくプレゼントしてしまう千葉。レコード(CDじゃない)は古いブルーズ。ロバート・ジョンソンです。しかし花奈の反応はいまひとつ。

2013-12-24 23:48:03
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

千葉は自分の欲しいレコードを買っているだけでした。熱っぽくブルーズについて語る千葉。微妙な反応で話を聞く花奈。少し無言になりつつ夜道を歩きます。部屋に着き、鍵を開けるのは花奈。千葉は、「自分の部屋の鍵を開けるのが自分ではない」ことに喜びを感じますが、表情にも出しません。

2013-12-24 23:51:03
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

ワンルームのドアが開き、千葉はついに表情を崩します。しょぼくて、でも可愛らしい、精一杯のイルミネーションが部屋に灯っていたのです。それは幼い頃のクリスマス会を想起させました。少しだけ千葉の鼻に痛みが走ります。そして後悔します。花奈へのプレゼントを。なんか、なんか油断してたかも俺。

2013-12-24 23:56:41
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

そんな千葉の表情を見て、得意げな花奈。少し申し訳なさそうに「…ありがとう。」と言う千葉。それで満足な花奈。部屋の電気を点けようとした花奈の手を止める千葉。「いいよ。」しかし鳥目な花奈は暗いとショートケーキを待機させている冷蔵庫の取っ手の位置がわかりません。

2013-12-25 00:05:26
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

そういうことに気付かず「すげーきれいだよー。」とか言ってる千葉。暗くて静かな部屋。ちょっとした照れ笑いや言葉にもならない感情が呼吸の音となって、部屋の壁に染みこんでいきます。この静寂が幸福である花奈。静寂に耐えられず余計な事ばかり呟く千葉。ツリーどこで買ったとかいくらしたとか。

2013-12-25 00:12:07
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

千葉は静寂に耐え切れなくなってついついレコードプレーヤーに手を伸ばす。花奈に買ってきたレコードをかけようとすると、すでにレコードが入ってる。花奈の顔を見ると、花奈は笑っている。その笑顔がツリーのランプで滑稽な色彩に照らされる。花奈がセットしていたレコードをかける。その曲は、

2013-12-25 00:19:40
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

千葉の好きなロバート・ジョンソン。この部屋に同じレコードが2枚。あまりに滑稽で、ただ笑う二人。「どうする?」と花奈。「負けた。」と千葉。「負けっぱなしだね。」と心ない一言を放つ花奈。少しの間があって、「…そんなことねーよ」と言う千葉。imacの電源を入れる。

2013-12-25 00:23:57
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

作りかけの映像。「間に合わなかったけど」と千葉は言う。花奈の目には以前に二人で旅行した観光地の風景が映っていた。それは千葉が企画した旅行で、場所は日光。終始はしゃいでいる花奈の姿が映っている。花奈のいない所で千葉は、花奈に気に入ってもらえてよかったという旨を話してる。

2013-12-25 00:30:29
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

動じないそぶりで「あっちは雪ふってるかな。」と言う花奈。クリスマスに雪がいいとか、馬鹿じゃねーの。という感じの千葉。花奈は部屋のクリスマスイルミネーションのコンセントを抜く。真っ暗な部屋。窓から、部屋の傍の道路を走る車のヘッドライトが二人の顔を照らす。

2013-12-25 00:36:51
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

真っ暗な部屋だから、余計にその存在を実感できる。呼吸に、匂いに、微かな動作の音に。おぞましいほどに花奈がそこにいる。触れようと伸ばす手は空振り。キスなのか抱擁なのかよくわからない接触があり、改めて訪れる静寂に緊張する千葉。「なんだか、高校生の頃みたいだね。」と花奈。

2013-12-25 00:43:47
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

互いの指が互いの掌を這っている。花奈は言う。「なんか、ようちゃん。消えちゃいそうなんだよ。フッと消えちゃいそう。」反応が遅い千葉「…え?」花奈は言う。「もしも、消えちゃってもいいから、絶対。絶対に私のこと忘れないでね。」悲観的な花奈の発言にムカつく千葉。

2013-12-25 00:55:39
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

おもむろに花奈の心臓のあたりに指を突き立てる千葉。愛撫されるのかと緊張する花奈。しかし千葉は「お前、ここにいるじゃねえかよ。これ以上俺のこの指、進まねんだよ。お前がここにいるから。お前、いるじゃねえかよ。どうしようもないぐらいここにいるから…。」花奈「…いるから?」

2013-12-25 01:00:53
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

千葉「忘れるとかそういうの、無いよ。」

2013-12-25 01:01:46
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

「今、どのへん?」花奈は小指で千葉の人差し指に絡ませている。何を聞かれているのか分からない千葉。「わたし、君の物語の。どのへんに居るの?」

2013-12-25 01:14:17
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

花奈の問い詰めに、千葉は思う。この物語がいつまで続くのかと。冷静に向き合ってみれば花奈が自分より早くこの世を去ることはあまりにも確実なのだ。自分はその覚悟ができているのか。いや、できていない。いつ、花奈が自分の目の前から突然いなくなってもなんらおかしくないのだ。

2013-12-25 01:21:26
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

消えてしまう君のカラダを想像してみる。火葬から戻ってきた少しだけピンクに火照った君の骨を。想像してみる。

2013-12-25 01:23:38
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

千葉の左手の中に小さな花奈の右手がある。何も答えなかった千葉と、答えなかった千葉の心情を汲んだ花奈。「…ごめんね。」「何が?」「せっかくのクリスマスなのに。」「どうでもいいよ。キリストなんか、しらねーよ。」俺の神様はお前だから、とは口に出さない千葉。

2013-12-25 01:28:37
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

花奈のブラウスのボタンは最初に3つ目から。次に5つ目で、次に一番下。そこで一度、生地の上から触れ、しかしやっぱり直に触れたいと思い、一番上から外すことになる。2番目を外したところで千葉の脳裏に獣がよぎる。その刹那、花奈の目を見るとおびえている。

2013-12-25 01:36:54
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

それは暗闇でもわかった。煌々と月の光が差し込んでくる。初めて会った頃となんら変わらない花奈の皮膚。表情。

2013-12-25 01:42:00
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

「…ケーキ。」と花奈は言った。千葉は部屋の灯りを点け、冷蔵庫を開けた。「ごめん。」と謝る花奈。ショートケーキは崩れていた。浮かれて、振り回してしまったらしいことはすぐにわかった。「一応。」と言って、花奈はセルフタイマーでケーキを囲む二人の写真を撮る。現像されることはなかった写真。

2013-12-25 01:46:28
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

ケーキに合わせて濃いコーヒーを淹れたことで眠れなくなってしまった。やがて自分の作りかけの映像を熱っぽく語りながら、花奈がトイレに立った間に寝てしまった千葉をベッドに運んだ。そして一度コンビニに行き、酒を買い、千葉のimacの映像をひとりで見ながら花奈は酒を呑むのであった。

2013-12-25 01:52:24
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

映像のカメラの目線は千葉の目線であり、花奈は「見られている」ということに安堵した。言葉より体温より、花奈は千葉の目線に安堵した。パソコンディスクのチェアーから、気持ち良さそうに眠っている千葉の顔を眺めた。そして夜明け。

2013-12-25 01:54:14
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

花奈はご飯を炊き、おにぎりを作った。アルミホイルで包み、もう一度部屋にイルミネーションを点けた。千葉の目がおぼろげに開く。その意識を確認した花奈は無理やり千葉を起こし、かの観光地へと連れ立った。

2013-12-25 01:57:00
小栗剛( qui-co. ) @oguri_utd

睡眠不足で朦朧とした千葉と、寝なくても平気な花奈。東照宮の色彩にハイになる花奈。中禅寺湖の遊覧船で眠る千葉。たった一日の、何気ない写真。それはカメラを通さない写真。「忘れられないだろうな。」と思う花奈。 その地が、のちに二人を分かつとは思いも知らず。

2013-12-25 02:00:39