５、再び

逃亡のケイネス@企画終了 @nethkikaku

(結局、あの後戻らずに邸の屋根の上で一晩を越した)（は、と気が付き涙の跡が付いた頬を掻いて日差しに目を細める。如何やら膝を抱えたまま寝てしまっていたらしい）………（顔を合わせたくない。また何と言われるか分からない。正直に言ったとして、自害を命じた男が目の前にいるということは…）

逃亡のケイネス@企画終了 @nethkikaku

（其れを許して、或いは一旦置いておいて聖杯戦争への良きパートナーとして自分を扱う人間が何処にいるのだろうか）（最悪己も自害を命じられるかもしれない）…そうなれば、私の願いも…（潰えてしまう。何でも無かったあの頃へ皆を戻せなくなる）其れは駄目だ…。次がいつになるかも分からんのに…。

柩のランサー＠泥人形 @aorikikaku

（屋敷の暖炉で火をくべる、爆ぜる薪を見ろして、また昨夜を降り立つ夢を見る） （知れば知る程に、それらを無にしようとするサーヴァントの願いを思い出す） 馬鹿な人だ（ケイネス・エルメロイ・アーチボルトについて書かれた本を開く） 一度ならず二度までも、想いを裏切る。

柩のランサー＠泥人形 @aorikikaku

（自分はランサーではない、自分は呪われて親元から離れたただの孤独なディルムッド） （誰かを想って尽くしたことなど一度も無い） （この山奥の屋敷で、ただ一人静かに暮らす、日常を消化していくだけの日々） （なのに追体験をするような夢を見る日々に、最近は変わっている）

柩のランサー＠泥人形 @aorikikaku

（裏切りに対して湧く感情に、憎しみだけばかり自覚するも、その中に苦さと虚しさも密かに感じるのを認めてしまえば） （そこから先は転がり落ちるように、次々に別の感情が己の胸の内に落ちる） ……聖杯にかける望みなど、何もない。 （赤々とした炎に、本を投げ入れた）

逃亡のケイネス@企画終了 @nethkikaku

（日も沈み、気温を遮断したこの身体でも寒さを感じるような風が吹き始め）……いつの間にか、指を切っていたのか、（かつての自動治癒が少し残った身体でも消え切らぬ人差し指の切り口を弄り）（パスから流れる魔力で己の此の身体が形作られ、温められているのか）……先程まで流れていた血も…。

逃亡のケイネス@企画終了 @nethkikaku

（指の瘡蓋を引っ掻き、剥がして滲む赤い血を見つめ）…この血も、私の体温も、鼓動も…全て、煽りの、ディルムッドの…（屋根を拳で何度も何度も叩いて）如何して、何故分かってくれないのだ！！私はお前の為に！！（がらんと音を立てレンガが粉になり）（己の心に到来する虚無）ああ、駄目だ（欲を）

逃亡のケイネス@企画終了 @nethkikaku

求めては駄目だ。欲しがっては駄目。 （私に其の資格は無いと何度言い聞かせてきた。私は裏切り者、恋人を利用し自害にまで引導を渡した者）（私が、煽りを救わなければ、）（ディルムッドをこんな辺境で死を待つだけの棺桶から連れださなくては、） 私が、私が悪かったから、 私は望む事は…

逃亡のケイネス@企画終了 @nethkikaku

私が望んだことは…… 己の贖罪の矛先か？

逃亡のケイネス@企画終了 @nethkikaku

（ぷつ、と何処かで意図的に何かを切った音） （マスターとのパスを切った音は凧の糸が切れた様な軽い音だった）

柩のランサー＠泥人形 @aorikikaku

（気づけばすっかり日が暮れた屋敷の中、暖炉の明りだけに照らされているのに気付き、窓の外に視線移し） ……？（ふとした違和感に瞬く）（サーヴァントと俺のを繋ぐパスから、魔力を引き上げられる感覚が、いつの間にか消えている）キャスター、キャスター、いるなら姿を見せてください。

柩のランサー＠泥人形 @aorikikaku

……チッ（呼び声に応える様子のないサーヴァントに舌打ち一つ溢し、なんとかパスを辿ろうとするも、その先に何も感じることができず） ……キャスター、どこにいる（ぐるりと周囲を見渡しながら、魔力の残り香を探し、明り一つない屋敷を歩き出し） （脳裏の蘇るのは、凶弾に倒れる男）

柩のランサー＠泥人形 @aorikikaku

（違う、断じて違う）（ゆったりとした歩調は、徐々に早まっていく） （繰り返しなどではない、ましてや同じなどではない）（屋敷に響き足音は大きくなっていく） （失うものなど何もない、何も持っていない）（それでも求めるのはサーヴァントの姿） キャスター……キャスター……ケイネス！

柩のランサー＠泥人形 @aorikikaku

（どんなに呼びかけても返ってこない返事に、口を閉ざしてしまえば静まり返る大きな屋敷の中、生まれて初めて孤独に襲われる） 嗚呼、嗚呼（顏を覆う、唇を噛む、目を瞑る） ケイネス、ケイネス……ケイネス殿。 （絞り出すように震えた声で、どこか酷く懐かしい呼び名が、宵闇にひっそりと落ちた）

逃亡のケイネス@企画終了 @nethkikaku

（邸の正面の森を抜け昨夜の様な月夜の下、悩み抜き辿り着いた己の願望に、違う、違うと何度も呟いて）……（しかし、誰に頼まれた訳でも無い。全ては自分の推測、理想…そう好き勝手創造されたあの本と同じ）

逃亡のケイネス@企画終了 @nethkikaku

……いかんな（頭を掻き）冷静ではなかった…、いきなりマスターとのパスを切るなど（其れで生前自分も命を落としかけたというのに）………（はあ、溜息一つ漏らし、足取り重くしかし成るべく速く屋敷に走り出して）

柩のランサー＠泥人形 @aorikikaku

@nethkikaku ……どこに、行っていたのですか（屋敷の外を出たところで、丁度戻ってくるキャスターを出迎え） （軽く肩で息をして、静かに大きな歩調で威圧的に歩み） 何故、パスを切ったのですか。応えていただけますか？（無表情に、視線だけで睨みつけ）

逃亡のケイネス@企画終了 @nethkikaku

@aorikikaku （冷静に、冷静に）…すまない、マスター（歩み寄るマスターに視線を合わせ）…パスを切ったのは…、貴様の魔力で此の身が成形される事に少し、不安になっただけでもう大丈夫だ（心配要らないと首を振って）

柩のランサー＠泥人形 @aorikikaku

@nethkikaku （素直に謝罪を口にするサーヴァントに、無言でパスを繋ぎ直すように術施し） 貴方は訳が分からない（見つけたサーヴァント姿に、安堵する自分に苛立つのを隠すように片手で顏覆い） 俺には、本当は、聖杯に願うことなどないのです（考えるのに疲れたように、溜息を零し）

逃亡のケイネス@企画終了 @nethkikaku

@aorikikaku （切れかけていた魔力身体に漲るのを感じ）……話したところで貴様が理解してくれるとは思えない。…私は言ったであろう、知って貴様に徳は無いと。…思い出したのだろう？（苦しげな男の表情にまた痛む胸を押さえ）……な、なら何故私を呼んだのだ！？（拍子抜けた声で）

柩のランサー＠泥人形 @aorikikaku

@nethkikaku 貴方が口にしなくても夢を見るのです。その度俺に隠した本心を知る、過去を知る。猜疑心ばかり増していく（前髪を搔き上げて瞼伏せ）貴方と出会ってから自分がもうよく分からない。ただ過ぎ行く時間の中で、一度奇跡を見てみたいと、気まぐれを起こしたのが過ちでした。

逃亡のケイネス@企画終了 @nethkikaku

@aorikikaku 奇跡を見てみたいか…フン、其れが貴様をそうも苦しめる様な悪夢を見せる悪魔で残念であったな（目の前にいる男は何処か頼りなく其の様子に、幾ばくばかり心が揺れ。其れは己の甘えだと頭を振り打ち消して）…で、如何する？目の前の幻覚を打ち消してみるかね？

柩のランサー＠泥人形 @aorikikaku

@nethkikaku えぇ、後悔してますよ、それなりに（肩を竦めてみせれば、渇いた笑いを小さくあげて） そうですね、別に聖杯戦争に拘る必要などありません。終わらせようと思えばいつでも終わらせられた（魔力練り込んで、紅の長槍造りだし） 貴方がいなくなって、元の日々に戻るだけです。

逃亡のケイネス@企画終了 @nethkikaku

@aorikikaku （目の前で形作られる、長槍。其れは英霊ディルムッド・オディナの破魔の紅薔薇にとても良く似ていて）……本気か？マスター…私を殺す気かね。……其れが貴様の今の望みか？（胸元の試験管を二本に指を掛け）（………落ち着け、もし来ても槍を奪い取るだけに集中しろ）

柩のランサー＠泥人形 @aorikikaku

@nethkikaku 自分で撒いた種の始末をするだけですよ。貴方を通してみるランサーの記憶に蝕まれるのには耐えられません（両手で紅の長槍構えれば、その切っ先サーヴァントに迷いなく向け） 巡り合わせの悪かった、ご自分を恨んでください（一閃振りぬけば、水銀の入った試験管狙い）