【小さな世界のたなころがりライフ】

だいけ @daike0000

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イメージ画像 @humi9さん作　http://twitpic.com/2z07e8

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【1】簡単に言えば、狸とさとーさんとのウェディングの絵があった。そしてそれはほどなく現実となることになって、だから今日は皆でお祝いする日なのだ。

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【２】狸側の出席動物は、もちろん…野山のケモノ達だ。キツネ、ヒヨコ、ヤタ、ウサギあたりの良く聞くコンビだ。一癖も二癖も有る、だが良き友人達であった

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【３】そして対するさとーさん側の出席者と言えば、バナナ、リンゴ、ジョリ、トール、ベルマーク、しゅくや、銀色、ジョニー、ソウジョウ、ヒラキセンセー、ジョニーである。

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【４】「あのちょっと待って下さいませんの？　そちらの人が多過ぎる気が…」なんて抗議をするような余裕は、狸には無い。何しろ狸の目の前には、愛しのさとーさんの姿が有る。牧師の姿もそれ以外の知人友人地人の姿など欠片も視界には映らないし、意識に引っかかることもない。

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【５】さとーさんが、狸の口元まで顔を寄せる。そこで初めて、さとーさんは薄いヴェールを上げた。狸の顔が露になる。紅に頬を染めた狸は、恥ずかしさを紛らわすように「いいですのよ？　忠誠を誓っても？」なぁんて茶化すが、しかしさとーさんの瞳は真剣そのものだ。

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【６】片手で狸の細い腕を取って、そして空いた手で狸の頬に手を添えて、唇を寄せて行く。――接触まで、後５センチのところで、――物凄い音がした。

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【７】教会の扉が、文字通り吹っ飛んだ。その先、逆行になるように、一人の黒服スーツが、横蹴りの体勢で立っていた。そして何事も無かったかのようにこちらに向き直り、狸とさとーさんのところへと歩いてくる。

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【８】何だこの状況、警備兵はどうしたんだ、と皆が慌てて教会の外を見れば、屈強な男達は片っ端から気絶していた。どうやらこの男がやったらしい。「だとしたら、俺達の出番はないよな…」と呟くので精一杯だった。

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【９】ややもすると逆行で誰だか分かり辛かったのだが、祭壇の下までその誰かがやって来ることで、狸には誰のことなのか分かった。「…ジェピさん…」そう、ジェピだ。彼はタヌキと視線が合った段階でニヤリ、と笑い、「この結婚、ちょっと待ったあああああ！」と叫ぶや否や、さとーさんを抱きかかえた

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【１０】そしてジェピさんはクルリ、と回って、そのまま教会を駆け抜けて行った。後には、呆然と、その成り行きを見守る人ばかりが残った。なお、走り屋専門のジョリさんは、後にこの時のことを振り返って、こんな言葉を残した。「出口まで僕なら、後５秒は早くゴール出来るな」と

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【１１】ともあれ、誰もが固まり沈黙したこの状況を動かしたのは、牧師の、狸に向けられた一言だった。「コレデモ、アナタは、カレ　を　アイスルことが　デキまーすかー？」

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【１２】そんな神父の問いは、狸には愚問だったようだ。大きく目を見開いて、神父を少しだけ眺め、「当ったり前ですの！」と半ば挑戦状でも叩きつけるようにして、教会を飛び出した。

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【１３】次に動いたのは、キツネとヤタとウサギの野山コンビだ。「どこ行ったかも、もうほとんどわかんねーのに。闇雲に走ったって、精神的に満足するかもしれんが、得られるもんはすくねーだろうな」そしてウサギはその場にペタリ、と座り込んで。「…も少ししたら視えるから。ちょっと待ってろ」

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【１４】その間はほとんど一瞬で、すぐにウサギはその真っ赤な目を見開いて、「視えた。駅の方向。自転車の籠に白い御餅みたいな可愛らしいマスコット？を入れて走ってる人が見えるんだが…幻覚か幽霊かもしれん。まぁとにかく、そっちの方角だ！行くぞ！」そうして、野山コンビ（狸除く）は走り出した

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【１５】続いては、残されたさとーさん側のお客さんチームだ。予想以上に人数が多く、この人数を纏め切れるのか、と誰もが疑問に思い、あるいは思うこともせず適当に探しに走ろうとしたりその場で休憩したり、なんてことをするヤツらの中、一人の男が声を張り上げた。

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【１６】「お前ら、今は俺の指示に従え！さとーを探すぞ！臨時に班編成を組む。基本的に３人１チームで行動だ。逐次連絡はすること。いいな？」黒幕とも、どっかの軍のそこそこの偉い人だとも言われているソウジョウだった。

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【１７】「では班分けだ。１班、ジョニー、しゅくや、トール。２班、銀色、ベルマーク、リンゴ　３班、ジョリ、バナナ　この組み合わせで行く。各班、最初に名前を呼んだヤツが班長だ。では、作戦の打ち合わせに入る」「いやあの、その前に…」そこで割り込んだのはナオリセンセーだ。「…あの私は？」

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【１８】するとソウジョウは、必死にニヤニヤ笑いを堪えようと言う、見る者が見ればキモチワルイ表情をして、「いや、センセーには私の副官として傍に居ていただきたい、と思って。…あ、もちろん私の趣味とか関係なく！」…趣味だ…！とその場の全員が思ったが、皆は大人なので黙っていることにした。

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【１９】そうして、そうじょうの臨時編成小隊は３コ班に分かれてさとーさんを捜索することになった。適宜携帯で電話を取りつつ、情報を共有する、というスタイルで。…この手法は、単純明快にして、相応の効果を挙げることの出来る、軍経験者としてはある意味模範とも言える作戦ではあったが、しかし

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【２０】「ほれ、あそこに居るぞー」とまぁ、真っ赤なウサギの能力によって、さとーさんの位置はとうの昔に割り出されていたのだった。ヒヨコがふところ（らしきところ）から携帯を取り出し、狸にメール。（サトー　キトク　スグ　エキマエ　ニ　コイ）

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【２１】「ちょ、ちょ、ちょっと！危篤ってどういうことですの！？」件の発情狸は、僅か３秒で現場に現れた。「愛の力ってすげー。でもこれ、チートだろ？」とキツネが茶化したが、狸は肩で息をするばかりで、ノーコメントだった。

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【２２】「ま、詳細は自分のその濁った目で確かめろや」とヒヨコが突き放す。貪欲な目でもって狸は、さとーさんを視界に納めた。――２人が、抱き合っていた。

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【２３】少なくとも、狸の目にはそう見えていた。「ちょっと、何ですのあの泥棒猫？犬？とにかく、児ポ法に引っかかる前にとっ捕まえて制裁加えてから警察に突き出さなければなりませんわね！」