新春妄想ショー「私のシラノ(仮)」

突然の思いつきが、あれよあれよと広がったシリーズ・新春特別編。つぶやいてるお前自身、どんだけ無骨なオトメンだよ!と自分でもツッコミたくなる展開ですが、こういうのは恥ずかしがったモノ負け。
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舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

ラノ・ド・ベルジュラックとピグマリオンをマッシュアップして、性格はよいが頭カラッポな美青年・ではなく・育ちの悪い美貌の姫君をこれでもかという少女趣味の代筆で陰から支える、(オトメンであることをひた隠しにしている)外見無骨な騎士の話も悪くないと思う。すでに前例ありそうだけれど。

2014-01-04 21:31:56
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

星のごとく宮廷に現れ、その美貌と典雅な装い・優美な立ち振舞いで、たちまち青年貴族たちの憧れの的となった姫君。可憐な唇から紡がれる華麗な詩句も、愛らしく恥じらうさまも、実は角ばった面に不格好な髭を生やした生真面目だけが取り柄の中年武官が事こまかに指導した演出なのであった(つづく)

2014-01-04 21:37:18
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

官が偽名で借り上げた屋敷の居室に戻ると、窮屈な靴を脱ぎ散らかし「あーつかれた!」と寝台に腰掛けた細い両脚を投げ出す姫。「せめて両膝を閉じろ!貴婦人のする格好じゃない」弱り果てた顔で叱りつける武官に「ここはあなたと二人きりじゃない、今くらい素の私に戻らせて」と言い返す。(つづく)

2014-01-04 21:41:50
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

力貴族が列席する明日の宴席に着ていくドレスを選ぶ武官。「この羽根の襟巻きなど、どうだろう…なんて優しい肌ざわり…」うっとり頬ずりし→ニヤニヤ見てる二回りも年下の美少女の目線に、赤面し狼狽し、しおたれる武官。「仕方ないだろう、私がこんな趣味になったのも、お前の母親が…」(つづく)

2014-01-04 21:45:24
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

の母親は武官の従姉で、幼くして父が戦死した武官は従妹と一緒に育てられ、少女趣味の本やぬいぐるみに囲まれ、感化されてしまったのだ。花飾りやドレスとは縁遠い無骨な男に育ってしまった彼の内心の苦悩を、従姉だけは分かってくれた。その従姉が不倫の子を宿し、追放され寂しく死んだ。(つづく)

2014-01-04 21:49:59
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

×従妹と一緒に育てられ→◯従姉と一緒に育てられ ダメダメである。

2014-01-04 21:51:08
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

姉の夫もまた、武官の父と同様に戦場で死んだ。野心的な王の治世の下、戦の多い時代であった。そもそも戦場に出ている間に妻が不倫の子を身ごもったのだ。夫はそれでも田舎に追放された妻と娘に相応の資産を与えていたが、忠実だけが取り柄の老僕夫妻のもと、姫は言うたら無教養に育った。(つづく)

2014-01-04 21:56:17
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

女の母親が失なった貴婦人の座を、せめて娘に取り戻してやりたい。それに、これほどの美少女がふさわしい教養と装いで実を飾らないことが内心で耐えられない。それは己のエゴだと分かってはいたが、都に来なさい・私が責任を持つという武官の必死の口説を、姫はうなずきで受諾した。(つづく)

2014-01-04 22:04:39
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

「そうじゃない、こうポーズを取るのだ、このドレスのドレープが一番映える」手取り足取り指導する武官に「本当にドレスやお化粧が好きなのね…私が使わないときは着てもいいわよ」真っ赤になるのを笑う姫君。「それにこの詩はとても素敵…自分では書けなくても、それくらいは分かるわ」(つづく)

2014-01-04 22:08:28
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

「見かけは姫君でも中身は田舎の男の子と変わらない私。それより見かけは無骨なあなたのほうが、中身はずっと乙女なのね」そして姫は武官には聞かれぬよう、そっとつぶやく。「田舎の男の子には目も向けてくれない、恋に恋する乙女」(つづく)

2014-01-04 22:11:29
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

「いっそあなたが姫で、私が武官なら好かったのにね。田舎では鶏も平気でさばいたわ、刃物の扱いは得意なの」午後のお茶会の練習中、ケーキ用のナイフでフェンシングのポーズをとる姫君に「やめなさい」たしなめつつ「素人が本気で刺すなら刃は上だ」つい相手してしまう武官。二人で大笑い。(つづく)

2014-01-04 22:16:12
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

日、すました顔で貴婦人然として振る舞う姫君@宮廷での社交界。武官が抑揚まで指導した自信の詩を「しかし娘どもの詩とやらは星だの菫だの、ふわふわして気楽なものですな」「甘ったるくて胃もたれしそうだ」戦績自慢の貴公子たちが陰で笑うのに、顔を赤黒くして二重の屈辱に耐える。(つづく)

2014-01-04 22:20:28
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

うせ貴公子たちは、陰では詩の乙女ぶりを笑いながら、それも含めた姫の愛らしさに眩惑され、(武官から見れば)下手っぴいな恋文を寄せてくるに決まっている。せいぜい腕によりをかけ、胃が痛くなるほど甘く残酷な断りの手紙を書いてやる。すでに求婚者は後を絶たなかった。(つづく)

2014-01-04 22:23:00
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

の優雅な立ち振舞いで貴族たちを魅了しつつ、次々と求婚者を退ける謎の姫君。私の自慢の姫はお前らごときにはもったいない。武官をひそかにほくそ笑ませるのは、自らが美しい乙女となれなかった復讐心か、実は芽生えている姫への独占欲か。「何を企んでいるのだ」そっと大臣が耳打ちする。(つづく)

2014-01-04 22:27:26
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

婚者を次々と振り続ける高慢な美少女の役回りを、姫も喜んでいる。「私は誰にも嫁がない。ずっとこのままがいい」宮廷から屋敷に戻る馬車の座席で目を閉じ、そっと武官の肩に頭をあずける姫。(やれやれ、この子もちやほやされる暮らしが気に入ったか)姫の内心も知らず武官は苦笑する。(つづく)

2014-01-04 22:31:27
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

(だが、この娘にふさわしい装いを与え、詩と教養を後ろから吹き込んでやり、理想の姫君に仕立て上げ…これから私はどうすればいいのだ?)武官が考えてもいなかった答えが、宮廷から使者となって遣わされる。老王の愛妾として仕えよと。それは確かに、この国の貴婦人の栄達のゴールだった。(つづく)

2014-01-04 22:34:55
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

とより断り得ない宮廷からの召命である。だが姫はしばしの沈黙の後、自ら首肯をもって応えた。かつて武官が田舎から連れ出した時のように。「老王はお前の美しさだけ求めているのだ。私の指導がなくても生きてはいけるだろう」見送りの扉で悄然とうつむく武官の両頬を細い指が乱暴につかみ(つづく)

2014-01-04 22:44:23
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

チューか!?チューなのか!?(つづく。5分間休憩)

2014-01-04 22:44:58
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

(5分後)んなわけで、チューである。細い姫の指が武官の髭面をつかみ、歯がぶつかるほど荒々しく唇を重ねる。「ごめんなさい、私は、あなたが心から愛してくれた、私のお母さんの娘だから」姫が乗り込んだ馬車は屋敷を走り去り、武官は呆然と立ち尽くす。半月か満月か、月は中天に在る。(つづく)

2014-01-04 22:53:34
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

が残酷に夜を照らす。老王は寝台で待っている。姫は一枚一枚ドレスを脱いで、歩んでいく。これが私の望んだことか、武官は地べたに這いつくばり涙を流す。美しい装いが布切れとなって転々と床に散らされ、寝台の真横に立つ姫の最後の薄衣に老いた指がふれた時…隠し持っていた刃が光る。(つづく)

2014-01-04 22:59:48
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

敷に駆けつけた大臣が鬼のような形相で武官に迫る。お前は何ということをしてくれたのだ、あれの母親は夫が戦場に送られている間に老王が手をつけた、あれは老王の実の娘なのだぞ。丁度そのころ「お母様と、お父様の仇−!」姫のナイフが老王の心臓に突き立てられる。刃は上を向いている。(つづく)

2014-01-04 23:03:40
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

は死んだ。姫の実の父親について、武官の従姉は口をつぐみ続けたが、夫が気づかぬはずはなかった。それで老王は夫を死の戦場に送ったのだ。死刑を待つ牢の中から、姫は武官を手招きする。「どのみちあなたと生きられないなら、こうする以外なかった」鉄格子ごし二度目の接吻が交わされる。(つづく)

2014-01-04 23:12:33
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

を失ない、うつろになった屋敷に、腕白坊主のように両腕両脚を広げ、鈴のような声で笑う少女の幻が浮かんでは消える。冷たい机に向かい、武官は初めて代筆ではない、自身の恋文を綴る。「お前の処刑を見届けて、私も命を断とう」遺書でもある手紙。その白い紙の上に、ふと灰色の影がさす。(つづく)

2014-01-04 23:19:00
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

敷から馬車が出て、牢獄の姫に手紙が届けられる。それはかつて姫が唇に載せたような、甘く優しい星や菫・月や花園の詩ではない。生まれて初めて己自身の愛のために、武官が書き綴った遺書でもない。「一度しか機会はない。脱走の方法を指示する」…冷たい筆致は、怜悧な大臣のそれだった。(つづく)

2014-01-04 23:23:06
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

刑の朝。美しい長髪を後ろ頭で馬の尻尾のようにひとくくりにした姫の前に、ドレスを抱えた中年女が膝まづく。「父母の誇りのためにも、貴婦人として装って死にたい」という最後の要望が受け容れられたのだ。男の衛兵たちは隣室に外す。中年女と二人きりになった姫は、ふいに吹き出した。(つづく)

2014-01-04 23:30:23